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平和です 11

魔王城の図書室は凄い数の蔵書がある。

中には古文書的なのとか謎の本もあるけど、新しい本も時々入ってくるので二百年経っても飽きることがない。

けど、一つ疑問に思ってることがある。

「誰だよこんな本を図書室に置いたの」

R指定のいかがわしい本と言う訳じゃない。いや、ある意味いかがわしいけど。

題名は『これで貴方も魅惑のボディ』。本当に誰がチョイスして図書室に導入したの。

思わず自身の胸元を見下ろす。

二百年、成長のない細やかな胸。

成長は止まったけど髪も爪も伸びるんだから可能性は皆無じゃないはず。

図書室に貸し出しカードはなくて、自由に借りてって良いシステム。


他の本に紛れさせて借りてしまった……


現在、風呂上がりの自室ベッドの上。正座してます。

目の前には『バストアップ体操』のページが開かれた本。

ほら、物は試しって言うし?










「シーナ、どっか悪い?休んでた方が良くない?」

出会い頭にアー君の心配そうな顔されてしまった。

体調不良なんてない。心身ともに健康ですとも。

ただし、超筋肉痛ですが‼︎‼︎‼︎

毎日それなりに体を動かして働いてるはずなのに、腕やら腹筋がめちゃくちゃ痛い。朝起きて金縛かと思ったくらい痛い。

動きが鈍くてガンツさんや後輩たちにも心配されたけど、まさか『バストアップ体操』で筋肉痛になったとか言えない。言いたくない。

笑って誤魔化したら休まされそうになった。

筋肉痛で休むとか恥ずかしいので元気ですアピールしまくって、筋肉痛を我慢していつも通り働いて、お昼に中庭に行ったらアー君に一発で看破された。

そうでした。この子も過保護だった……!

「どこも悪くないよ……ちょっと筋肉痛なだけで」

「筋肉痛?そんなに忙しいの?」

「いや……うん、厨房はいつも通りだよ……」

ちょっと私が寝る前に暴れただけで。

「待って!そんなプルプルしてる状態でナイフ持たないで‼︎怪我するから‼︎」

相変わらず季節無視なおやつ、柿をナイフで剥こうとしたら取り上げられた。

いやいやいや。

「アー君こそ危ないよ?指切っちゃう」

「子ども扱いし過ぎ。俺だってナイフくらい使えるよ」

ちっちゃい頃から魔王城で育ったアー君がナイフとか使えるはずないでしょ!と思ってたら、あら不思議。

するするすると剥かれていく柿の皮。

一口大にカットされた柿が器に盛られていく。

「なんでアー君事務なの……?料理番においでよ……」

「ナイフ使えるくらいじゃ料理番は無理だよ。シーナと働けるのは楽しそうだけどね」

すみません。

私、野菜切って水出すくらいしか出来ないのに料理番なんですけど?


アー君が綺麗に切ってくれた柿は甘くて美味しかったです。




魔王城が広いとはいえ、自分が引き篭もりだと気付いた。

だって魔王城の周りは“終焉の森”だから外に出られない。

つまり運動不足‼︎

筋肉痛の原因は運動不足‼︎

というわけで、休みの日に再び図書室へ。

室内でできる体操とか、中庭で一人でできそうな運動の本がないかを探しにきました!

あと、例の『これで貴方も魅惑のボディ』を返却しに……運動不足を解消してからまた借りよう。

本を棚に戻そうとして、横から本を取り上げられた。

「え、ちょ、アー君⁉︎いつから居たの⁉︎」

「シーナ……これやるの?」

がっつり本の題名やら内容見られました。止めて。羞恥心で死ぬ。

「これ、総料理長の愛読書の筋力トレーニングの本だよ……?シーナはそんなに鍛えなくて良いんじゃないかな……」

「え」

「もしかしてこの前の筋肉痛って、これやった?」

筋力トレーニング。

しかも総料理長……ガンツさんの愛読書?

ムッキムキのマッチョ系おじいさんなガンツさんの愛読書。

「魅惑のボディって筋肉ムキムキってこと……?」

「魔族は強さを求める種族が多いからね」

騙された‼︎

挿絵のない本でその文言はミスリードが過ぎませんかね⁉︎

そりゃ筋肉痛になるわ!だって筋トレだったんだから!


とにかくこの本の作者に一言物申させて頂きたい‼︎‼︎‼︎

バストアップじゃなくて胸筋アップって書け‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎






あれからアー君がお昼ご飯の後に、中庭の森を一緒に散歩してくれるようになりました。

あの……運動じゃなくてね…………胸がね……とか。

アー君には言えませんでした!





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