地球最後の男と女の話
火星へ移住しよう!
ブームが起きた。
いろんな人に招待状が来て、夢のような世界が約束された。
俺はそれを指をくわえて見ていた。
俺は火星には行かなかった。
車を自由に選んで誰もいない街を走った。
地球最後の男、って、なんかいいなと勝手に思っていた。
ガシャーン!
車がショーウィンドウにぶつかって、粉々のガラスが派手に舞い落ちる。
ちょっと待てよ?
俺が地球最後の男だとすると、ひょっとしたら地球最後の女もいるかもしれない?
だが、待てよ?
何かのSFでデブで不細工な女が残っていて、追いかけ回される話が、ありゃあしなかったか?
地球最後の女。口に皿を埋め込んでいる部族とか、首長族とか?
おーこわ。
やっぱ一人がいいかな……?
「ねー、お母さん。ジャニーズばっかり見てるけど、例えば地球最後の女になったときに地球最後の男がどうしようもない変な人だったらどうする?」
「はああ?そんなこと絶対ないから!ショウくーん(はあと)」
「あーあ。この話題じゃ笑い話にもならんわ」
彼女はため息をついた。
パラレルワールドでこの二人が出逢う確率は無限大。そしてすれ違う確率も無限大。