表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3.初恋終わる。だけど

さよなら会は、何人かの生徒達の演奏の後、ラストに僕とお姉さんは、連弾を無事終えた。


「ノーミスじゃん!」


「美和ちゃん上手だったよー!」


「颯君カッコイイ!」


皆、といっても今回集まったのは、夏休みもあって全員で6人くらいだ。でも皆はたくさん拍手をしてくれた。いつもなら曜日も時間もバラバラで、しかも子供達だけでなんてめったにないから参加できてよかった。


先生がお姉さんの背中をパシパシ叩く。

その顔はとても嬉しそうだ。


「よかったわよ!どうなるかと思っていたけど。特に美和ちゃんが」


「ですよね! 頑張りましたもん私! というか先生! ちょっとひどいっ!」


「褒めているのよ。颯くんも忙しいのに、よかったわ。途中美和ちゃんがテンポがずれそうになった時、上手くひっぱって立て直してあげたのは凄いわ」


「う~。確かに颯くんのお陰でミスしなかった! ありがとう! はい!」


「えっ」


お姉さんが椅子から降り楽譜を持つ僕に手を出してきた。


パチン


最初で最後のハイタッチは軽い音が鳴った。



「じゃあ、皆で向こうでお菓子食べましょうか。今日は特別に豪華なのよ」


「わー嬉しい!」


「え~ケーキかなぁ」


「俺、ポテトチップス!」


「お菓子なんだろうね。颯くんもいこ!」


「…はい」


結局、僕は凄く悩んで考えたプレゼントをお姉さんに渡すのが精一杯だった。


こうして、あまりにも急に僕の初恋は終わった。



その日の夜ダイニングのテーブルの上に問題用紙を広げ勉強していた僕にお母さんが話しかけてきた。


「進まないんなら、もう今日はやめたら?」


「解いてるよ」


「でも、ずっと同じとこで止まっているみたいだけど」


「うるさいなぁ」


話しかけられるのが嫌でつい声が大きくなった。僕は、もう話したくなくてノートを閉じ紙をクリアファイルにいれ片付けて立ち上がった。その時にお母さんに一言いわれた。


「縁があれば、必ず会えるわよ」


コーヒーを飲みながらチョコレートを食べるお母さんは、いつもの、ふざけた顔じゃなかった。


大人の、なにもかもわかっているようなムカつくけど子供の僕には敵わない。そんな顔をしていた。


何故かまた、わからない悔しさを感じた。




あれから10年以上が過ぎた頃、大人と話す時だけ「僕」といっていたのが、いつからか「俺」「私」にかわり日々を忙しく生きている俺は、ある日、運命としかいいようのない出来事に遭遇した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ