いち
動画が再生される。
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※この映像は本物です
心霊動画を見ているあなたを心霊は視ています
見る方は自己責任で見てください
お願いします
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動画が始まると言葉が表示された。
言葉が消えると映像が流れ始めた。
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「今日は、裏野ドリームランドに、やってきました~」
そこに映っていたのは、人で賑わっている遊園地にやって来た親子だった。
この遊園地は今では廃墟になっているが、この映像はまだ営業していた時のだろう。
「アレ乗りた~い」
親子はアトラクションに乗ったり、ご飯を食べたり、グッズを買ったり遊園地を楽しんでいる。
「××ちゃん。もうそろそろ帰る時間だよ」
観覧車から降りると親は告げた。
「え~~、もっと遊びた~い」
子供が駄々をこねる。
「ダーメ」
しかし子供は、遊園地の出口の方へと連れられていく。
≫ ≫ ≫
動画はそこで終わっている。
(これ、幽霊とか映ってなくね?)
動画を見た歩野九武(通称ヤキューブ)はそう思った。
「ケミカル。これ、どこが心霊動画なの?」
「それは知らない。でも、本物らしいよ」
「へぇー」
「あれ? ヤキューブの反応が薄い」
ヤキューブの疑問に桂診夏瑠(通称ケミカル)は答えたが、ヤキューブは霊が出ない動画に興味がなかった。
「そーいえば裏野ドリームランドって、結構前に廃園になったところですよね」
ヤキューブは本部長菅(通称ブチョウ)に聞いた。
「裏野ドリームランドは×年前に廃園になって廃墟化して、それからちょっとした噂が出回ってる。営業してた時も色々と噂があったらしい」
「……ブチョウ! そこ行きましょう!」
「また心霊動画撮りに行くの?」
「幽霊は死後の世界の証明! 心霊動画はロマン! お化け万歳! それに裏野ドリームランド遠いし、自腹だとちょっと……会費で行けるなら会費で行きたい」
「それなら私だって会費でツチノコとかヒバゴンとかスカイフィッシュとかカッパとか探しに行きたい!」
ヤキューブとケミカルはそれぞれ主張しだした。
「ブチョウ! 今年はUMA探しに行きましょう!」
「ブチョウ! 今年は心霊動画撮りに行きましょう!」
「……ノリはどうする?」
ブチョウは園夢野裏(通称ノリ)に意見を聞いた。
「私はどちらでも」
「じゃあ、じゃんけんで勝った方に行く」
「「!? じゃん! けん!」」
じゃんけんはヤキューブが勝った。
こうして『にわかオカルトふぁんの会』は裏野ドリームランドへ行くことが決まった。
◇◇◇◇◇
「はぁ。UMAのいない遊園地なんて無価値」
裏野ドリームランドへ向かう新幹線の中でケミカルは呟いた。
「遊園地やってたときはアクアツアーに謎生物出たらしいし、いつまでも落ち込んでんなよ」
ヤキューブは声をかけるが。
「どーせ動画撮るからアクアツアー行かないくせに」
ケミカルはふてくされている。
「それなら撮り終わったらアクアツアー見に行くか?」
そこでブチョウが提案する。
「行っていいんですか!?」
「別に問題はないからいいぞ。ヤキューブもいいよな」
「心霊動画さえ撮れればどーでもいいですよ」
「ノリもいいよな」
「うん」
「それじゃあアクアツアーも見ていくか」
アクアツアーに行くことが決定した。
◇◇◇◇◇
そしてついにヤキューブたちは裏野ドリームランドへと足を踏み入れた。