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4・班でお散歩(これって残酷な描写?)

 キアテウと同じ班になりたくて、既に何度も異動を願い出ているが、却下され続けている。


 それはきっと考えたくもないが、同じ班で行動していて、キアテウに何かあった場合。

 その何かが起こるような戦闘状況だというのに、私まで発狂してしまう事で、ますます混乱を極めるだろう事態を恐れているからに違いない。


「だから狂犬は嫌なんだよ。こうやってさー、突然さー…って」

「猫科だな、犬じゃない」


「いや、犬でもない、猫でもない。魔物だ」

「……いやでもほら。見た目が、ね?」


 猫科に似た個体で見た目が可愛いからというよりは、わざとだろう1人がボケ始める。


「にゃあたんを殺さないでくれっ」


 そのボケを受けて、にやりと数人が笑った。

 そしてまるで駄々っ子に言い聞かせるような、とても嘘臭い優しい口調で2人が言う。


「うん、大丈夫だよ。とっても楽しい所へ連れて行くだけだ」

「うむ。そこなら、飢える事もない。連れて行く方が、にゃあたんは幸せに違いない」


「そんな場所があったとは……良かったな、にゃあたんっ」

「(そういうのは)いい」


 はい、サクッとな。

 一丁上がり。

 

「あ~~~~~っ! よくも、にゃあたんをぉぉぉぉ!」


 わざとらしく訴えられているが、無視する。

 先程の会話も特に行動で割り込んだりする事無く、流す時もあるのだが、今日の散歩の目的はボス探しである。


 そして、そのボスを見つけられなければ、食糧が尽きたり、他の班がボスを見つけたとの連絡が入るまで、団には戻れない。

 つまりキアテウには会えないのだ。


「なぁおい、気分はどうだ? 気分は?」

 嘘臭い優しい口調のままで、1人が問い掛けているが、当然、猫科もどき個体からの返事はない。


「ふむ。こいつはユエマエルのせいで死んだんじゃない。持病で逝ったんだ」

「んなわけあるか~~~~~~っ!」


 かる~く乱闘騒ぎになる。

 結局は散歩が詰まらないから、こうして、じゃれ合いたかっただけに違いない。



「そこまでにしとけ~」

 班長の鶴の一声で一旦は静かになったが、それも少しの間だけだった。


「そもそも、分かり難いんだよな~ユエマエルのイイはさ~」

「準備出来たか? のイイ? かと思ったら、ここ任せて大丈夫か? のイイで、どっかにすっ飛んで行かれた事あるぞ」


 そう言われて考えてみれば、良いや好いで使った事はあまりなかったと思う。


「キアテウの前だと、そこそこ喋るのになぁ」

「恋する男って事か? さすがリア充、いいのぅ」


「いや、リア充って、両想いの時に言うんじゃね?」

「あ~、そっか。ユエマエル片想いだもんな」


 好きで片想いなわけではないので、もちろんイラッとする。

 乱闘騒ぎその2を起こしたいのだろうが、早く帰りたいので、挑発に乗らない。


 その腹いせに、沸いて出た個体を文字通り黙殺した。

 ボス探索に出るだけあって、喧嘩っ早くなっている魔物が多い。


「まぁ、片想いでも充分じゃん。恋が出来る心があるって、素敵な事だわさぁ」

「違いない」


「……はっ、しまった! 俺とした事が、しみじみムードを作ってしもうた~~~」

「うむ。そのまま君は何か語るがよい」


「えっ? え~~~っと、アレが探してたボスかな~?」

 誤魔化したのかと思えば、完全にそうともいえないものがある。



 あの魔物は通常の攻撃自体ならば、それほど強くない。

 ただただ固く、討伐にかなりの時間が必要になるだけだ。

 あぁ、萎える。


 普通の武器では刃が通らないので、補助魔法を掛ける。

 武器を物理的に強化するだけでも違いがあるし、属性も載せられたなら尚良し。


 厄介なのは、喰らえば大ダメージになる魔法を飛ばして来る事である。


 ……が、これも魔法盾をはじめとした防具があれば、何とかなる。

 しかも予め、対象からの魔法攻撃を反射する魔法を張っておけば、上手くすると自滅してくれる。


 なので、あの個体はボスという言葉から、想像する魔物よりは攻略しやすい。

 とはいえ一般市民には手が出せない、ここいら一帯の主といったところの個体だ。



「あ~。アレはゴミ。あんなんボスじゃねぇ」

「よって、逃げる選択で。めんどーだし」


「……って事が実際出来たらいいなぁ、お前らよぉ」

 何故かその場に班長が現れた。


 戦わなくてはならないらしい。

 その上、班長が手に持ったそれは……。


「げ。もしや、その鈴……?」

「闘気の魔術具じゃね……?」


「嫌だ~。綺麗どころに応援されたら、強制じゃなくても上がるのに~~~」

「強面のおっさんが可愛い鈴を振ってって、ギャップ萌えでも狙って……ぎゃあぁぁぁぁ」


「無理矢理、殺る気が上がった! しゃきーんっ」

「仕方なく、ますます殺る気が上がった! じゃきーん!」

「殺る気が、しゃしゃしゃしゃっきーーーん!」


 魔物多発地帯にも関わらず、団に厭世的な雰囲気が垂れ込めないのは、この者達の様な人種がいるからなのだろう。


「1番手は俺だぁあああああああッ」

「いや、オレだ~~~!」

「いやいや、自分だ~~~っ!」


 いつかの日には、よく知りもしない個体(もしくは場所)に、突っ込んで行きたくないから、永遠の2番手以上でいいと言っていた者達が……。

 今や、すっかり気合いに満ち溢れている。


 しかも知識も順調に増えている様で、しっかり攻略手順を踏んでいた。

 その気になりさえすれば、とても有能な証拠である。


 そして早く帰りたいと思う一心で、既に主との距離を縮めていた私を、あっという間に追い抜いて行く。


 もしキアテウが居てくれたなら、きっと今以上に張り切るに決まっているのに。

 今度はそれを前面に出して、異動願いを出してみようと思った。





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