8話 気絶しすぎだろう!!
5月12日に内容の変更をしています
(体が重い……)
手足が鉛のように重かった……
(ボク……どうしたんだろう?)
確か……ボクを騙して……誘拐したあのジジイから……逃げ出して……
そう……ダンジョンに逃げたんだ
中は複雑で逃げられると思ったけど……この口枷のせいで、上手く呼吸が出来ずに、思ったよりも速度が出なかった……それよりも予想外な出来事は……
あのジジイが服も着ずに追いかけてきたことだった……
なんでこんな事になったんだろう?
産まれて今年で10歳……少し遠めのお使いで、近くの街まで行って調味料を買ってくるだけだったのに……
途中であった行商人にその調味料があると言われて、見せてもらおうとしたら、誤って落としてしまい、調味料の入った瓶を割ってしまった……
弁償しようとしたが……お金が足りないと言われて、簡単な荷物運びのお手伝いをするだけで良いと言われたのに……
少し重かったけど、飲み物をくれて……
いつの間にか眠らされて、目が覚めたら、ボロイ布切れに着替えさせられていた。
口枷も付けられ、身動きが取れないように鎖までつけられていた。
それが1週間前だけど……もう故郷が何処かもわからないくらいに遠くに来てしまった……
お父さんたちもボクを見つけられないように、キツイ臭いの水に漬けられた。
そして、そのまま人間の支配する街へと連れてこられたが……
その街の近くに古い遺跡があって、すごい宝が眠っているという話を聞いた。
その結果……強欲ジジイは自分の奴隷なら行けるはずだとほかの商人に豪語した結果、
ジジイのお気に入りの剣奴がダンジョンに先行したまま戻らなかった。
ジジイはお気に入りの剣奴の救出にダンジョンの近くに野営を組んだ。
ボクたちを犠牲にして救出する予定だったのだろう
だけど……野営を準備しだしてから、周囲にキナ臭さを感じた。
商人はその日の食事に、最後の晩餐のつもりだろうか?
他の商人から貰った料理をボクらに与えた……
この商人のことをまだ少ししか知らないが、この商人は、はっきり言って傲慢だ。
そんな男が食べ物を貰う?ありえない!人間は変わった感性も持つと言われても、信じない!それに、このジジイもそう言うのを自覚して、ボクらに出したのだろう。
ボク以外の奴隷は無心に食べている。もう慣れたと言わんばかりの行動だった。
そんな異常のある食事に加え、周囲の異様な気配……ボク以外の獣人は居なかったから、気づいていないようだった。
これはチャンスかもしれない!その日、ボクは食事を取らなかった。
そして……その晩……盗賊が襲ってきた
とっさの事で、ボク以外は何の抵抗もできずに捕まっていた
この盗賊は他の商人の差し金であると、理解できた。
そして、何よりも、盗賊たちはボクを探していた。
獣人の子供は居たか?そんな声が聞こえたのだ。
鎖で動けないボクにとっては……誰かが不用意にこの鎖を外してくれれば……
全力で逃げれる!
子供と侮って、居たら、なおの事逃げられる確率が上がる
獣人は人間と比べて、身体能力は段違いなのだ……奴隷紋を使われて逃げれない者もいるが……獣人用の奴隷紋は割高で大きな街に行った方が細かい制約を作れるという事で、ボクにはまだ奴隷紋はなかった。
だけど、この口枷のせいで、ボクの能力は弱体化していた。この口枷をどうにかして、外させれば……
そう考えていたが、盗賊がボクを見つけるよりも先にジジイがボクを連れ出してしまった。
あとは最初に思い出したような出来事なのだが……
そう思い出していると
『大丈夫か?すぐに回復させる!!』
そんな声がして……何かボクの口に触れる……
『ゆっくり飲んでくれ……』そして、液体が……
「がっふ……ごっ……ごくっ……」苦くて少しむせてしまったが、飲み込むことが出来た。
『ゆっくり飲め……すぐ良くなる!』
ボクは体が少し軽くなった……
『体力は回復したようだが……すまない……』
声の主は声質に変な感じがしたが……ボクの事をすごく心配しているのが解った……
早く、目を開けて……安心させないといけない……・
ゆっくりとボクは目を開けようとして……
(でも、ボクは何で意識を失って……)
『大丈夫か!!気分は悪くないか!?』
ボクの目の前に発光しながら宙を舞う球体が……
(ああ……これって……ゆっ……幽霊……)
「幽霊!!!!!!!?うっ……」
ボクは思い出しながら再び意識を失った
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『だぁ!!!!!!また気絶状態に戻った!!!!』
俺はステータスを見ながら叫んだ!!
簡易ステータス
レベル 10
種族 犬系獣人族
名前 ニケ 火の長の7番目の娘
HP 100/250
MP 25/30
状態 気絶
称号
攫われた子供
奴隷
『奴隷か……』
外国でなら聞いたことがあるけど……実際に見たのは初めてだ……
それより……
『幽霊か……』
アンデットやゴーストがいるから魂も普通と思ったが……この子の様子を見るなり、普通じゃないようだ。
(まあ、別に気にしないが……)
《そう言いつつ、ぬいぐるみを取り出して憑依するマスターが可愛いです》
(べっ別にいいだろう!!何度も気絶されると面倒だし!!!)
俺はそう言い訳をしながら、人形の体で少女の名前を呼びながら、体を揺さぶったが……
ガチャ……ガチャ……
骨がぶつかり合う音が聞こえ……俺は肩を軽く落とした……
『安全な場所に移動するか……』
俺はニケの体を背負うと居住区への移動を開始した。
ん?奴隷商人?連れていく訳がないだろう?
これ以上あんな体を視界に収めたくない俺は、さっさと移動を開始した