7話 ケモ耳!!キターーーーーーー
地下ダンジョン1F
ざっと解析スキルと空間把握スキルを併用して、俺はここが地下一階である事を理解した。
死神さんが話してくれた音に気を付けろに関しては、いまだ出会いなどはない。
《当スキルはあの存在は苦手です》
死神さんと会ってから、すごい苦手意識を持っているのか、ナビさんは基本死神さんの前では無口だ……それでも、撫でられているときの怒りのオーラは心臓に……
もとい、霊核に悪い……まあ、それより……
このフロアで探索が終わっってしまうぞ!
そう思った時だった……何かが走る音が聞こえ……
ペタペタペタ……
足音……これは裸足か?
そう考えながら、音に集中した
ペタペタペタペタペタペタ……
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ……
少しずつ近づいてく……
ガチャン!!
金属が地面に落ちる音が足音を一時的に消し去った次の瞬間!!!
ペタペタペタペタペタペタペタ!!!
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ!!
急に加速した足音が俺の方に近づいてきた!!
こわっ!?
裸足で走り回る音がどんどん近くなる!!
このダンジョンはアンデット関係の敵が多いが……こんな和風の恐怖を表す敵はいまだに遭遇していない!!
そう考えたが……この足音よりも遠くから……ガッガッガッ!別の足音が聞こえた
これは普通に靴を履いている足音だ……
つまり……
何かが裸足で移動している者を追いかけている?
そう考えると、先ほどまでの恐怖心は薄らぎ、俺は足跡の方へと移動を開始した。
ペタペタペタ………ベチンッ!!
どうやら、裸足の人物は転んだようだ
そして、追いかけていた人物の足取りが遅くなる……
音からして、壁の向こう側での出来事のようだ
「やっと、追い詰めたぞ!!小娘!!わしにここまで手間をかけさせおって!!!」
野太いおっさんの声が聞こえた!異世界の住人であるのに言葉が解る!などと今更の事を考えながら、俺は音の方へ行く方法を考える。
「グッ……!!」小娘と言われた人物の方は何やら、口に何かをされているのか、上手く喋れないような感じがする……
見てみないとわからないが……この壁が邪魔だ!!
空間把握でマッピングが出来てはいるが、距離がありすぎて、移動し終わるころには……
いや、俺の速さなら十分間に合うか?
《それ以前に、マスターは魂ですから、壁抜けなんてバッシブスキルですよ》
ナビさんお言葉に、もし顔があるなら、おそらく俺は赤くしているだろうと思いながら……壁抜けを実行した!
そして壁抜けをした俺が見たのは……
上半身裸のボウガンを構えた剥げた中年の男と………全身モザイクの物体だったって!!!
(ナビさーーーん!!!これじゃわからないよ!!!!!!)
《しかしマスター、これは有害に該当する姿で……》
(いまさら、フィルタリングとかどうでも良いし!!!どうせなら、剥げた中年にモザイクかけろ!!なけなしの下半身装備も布切れ状態じゃないか!!)
醜い腰の物がチラチラ見えるぞ!!こんちきしょう!!!
《わかりました……ラッキースケベやこういった状況の時のフィルタリングは緩和しましょう》
(ありがとうナビさん!!)
俺はそう言いながら、改めて、被害者の方を見て……
脳内に雷が走った!!
『ケモミミ!!!ケモ耳ですよナビさん!!!!』
「……!?」口枷をされた女の子が背筋を震わせる!!
そう!被害者は薄汚れた赤い髪の獣耳の女の子だった!!
出るとこは全く出ていないが……
服装がぼろ布で……穴あきの部分から見えそうで危なそうな所があったが……そこはしっかりと、モザイクがかかって視界をフィルタリングされていた!
流石ナビさん過保護……
《そうですね……マスターにはこういった種族は全部フィルタリングをかけるべきなんでしょうけど……当スキルの器は狭くないので……ええ、狭くないのでマスターの視界すべてをフィルタリングしたいとは思ってませんよ!》
怖い発言をサラッというナビさんに、俺は心底、恐怖を感じそうになったが……
そんな事よりも……俺の方を見て青い顔をしている女の子に驚いた。
一応、俺はゴーストに分類されるらしいが、正確には人間の魂であり、アンデット系には見えるが、普通の生き物には見えないらしい。
まあ、感の鋭い獣関係のモンスターには感覚的にわかるらしいのだが……
目の前の女の子は確実に俺を見て、青ざめていた。
《ふむ……人にもいろいろあるのでしょうが、おそらくこの娘は見える体質の人間なのでしょう。》
(見えるタイプ?霊感が強いとかそういうのか?)
《マスターの世界ならそうですね……こういった力を持つ人間は浄化の術を扱う教会に多く在籍していますね……マスターの天敵になりうる存在でしょう》
天敵ね……意外と俺には天敵が多いようだ。
とりあえず、本当に見えているのか……声でもかけてみるか……
《我の眠りを妨げるとは………呪ってやるぞ……小娘!!!》
ナビさんの念波に……白目をむいて気絶されました!!!ってナビさーーーん!!!
「なんだ!?この声は!!誰か居やがるのか!!!」
しかも、獣人の子だけじゃなく、おっさんにも念波を出してた!!
「どっどこに居る!!!出てくるのじゃ!!」
思ったよりも小心者で、ボウガンを周囲に向け……気を失った女の子の前で……引き金に力が入り……矢が放たれた!!
――――――――――――――――――――――――――
急に不気味な声が聞こえ……わしは周囲を見回した。
呪うだと!!この奴隷商人であるわしを?
今まで数えきれないほど奴隷を売ってきたわしを?
これだから、このダンジョンには入りたくなかった!!
わしのお気に入りの剣奴を使いこのダンジョンの宝を奪おうと考えたが……まったく帰ってこず……捜索しようと野営していた拠点は夜盗に襲われ、ほかの奴隷を失うはめになった……
それでもなんとか、奴隷を一人連れて逃げることが出来たのに!!
わしが水浴びをしている最中に逃げ出すなんて!!
こんな事なら、お金をケチらずにさっさと奴隷紋を付けるべきだった!!
そう思いながら、わしは、急に意識を失った小娘の方を見る……
ひゅ……風の音に思わず、指に力がこもる!!
「しまった!!」
わしの最後の財産が!!あの小娘を調教して再び大奴隷商人へとなる道が!!!
ガシッ!!!
「ガシッ?」
矢が刺さる音にしては不思議な音がして、思わず声を出してしまったが……
わしの目に移った光景はそんな疑問を打ち消した……
気を失った倒れていたはずの小娘が……わしの放ったボウガンを受け止めておったのじゃ!!
「なんという事じゃ……」
小娘にこんな才能があったなんて……これは性奴隷よりも剣闘士に仕立てて売り込んだ方が……などと考えていると………
小娘は立ち上がり、自分の口についている口枷に手をかける
無駄なことを!それは魔獣の皮を加工させた一品じゃ!生半可な剣では斬ることも、傷つけることもできない魔法の……
ビリィィ!!!
まるで紙でも破るように引きちぎりました!?
「ひぃ!?」
わしは思わず腰を抜かしてしまった!!
「何が起きてるんじゃ!!!!!!!」
そして、ゆっくりとわしに近づき手を伸ばす小娘……化け物に……わしは意識を手放した!
―――――――――――――――――――――
『ヤバい!!』
どうすればいい!!このままじゃ女の子に矢が当たる!!でも防ぐための力の調整なんて間に合わない!!
そこで……思い至ったのが……憑依だった
俺の能力じゃ意識のない者をの憑依は可能だった!
まあ、あとはぬいぐるみよりも強い力を扱えて、矢も掴んで、邪魔な口枷も引きちぎったのだが……おっさん、俺が近づいただけで泡を吹いて倒れやがった……
事情だけでも聴こうと思ったが……まあ、危険だが……放置していこう
それよりも気にすべきことは……肉体を持っている感覚だ!!
ダンジョンのジメジメ感……空気の匂い……懐かしい感じがする!!
ちょっくら、外にでも走りに……そう思った瞬間……足から力が抜け、地面に倒れた!?
「あれ?体が……」意識も遠のく感覚が……
(HPが1割を切りました……)
あれ……ナビさんじゃない天の声が……HP?
《マスター!!!憑依を解除してください!!!》
ナビさんが急に声を荒げた!?その声に押されるように、俺は憑依を解除すると……先ほどまでの倦怠感が無くなり……今まで以上に軽くなった気が……
《マスター大丈夫ですか?》ナビさんが心配そうにそういう
(ああ……でもあれは?)
《マスターの精力吸収が憑依体に作用して、生命力を奪っていたんです》
あれ?それじゃあ、回復はしてもあの感覚には……
《マスターは共感性が強いので、失われた感覚を自分のものと誤認してしまったんです》
そういわれて納得したが……
『じゃあ……』
俺は倒れている女の子のステータスを確認した……
HP 10/250
MP 5/30
『瀕死だ!!!!!!』
俺は宝物庫からポーションを取り出すと……治療を開始するのであった!!!
『ケモ耳を失いそうになるなんて!!!!!!!!俺ってやつは!!!!!』
戸惑い焦る俺をナビさんの冷たい視線が貫いたが……俺は治療に専念した
初めての生命体としてのキャラクターでしょうか!!さて、これからこのケモ耳娘はどうなるのか!!次回をご期待ください!!!
いつになるかわかりませんが!!