規格外
魔族ーー魔族とは魔物の事ではない。人族を光の眷属とするなら魔族は闇の眷属である。不浄を糧とし、世界に不必要な災厄を振り撒く事から明確に人類と敵対をしている。魔族には高位から低位までと階級のようなものが存在しており、高位魔族は肉体を持ち見える存在となるが低位になっていくと黒い靄のようであり、不可視の存在である。また、魔物にしろ人族にしろ、精神を縛り隷属させる事が出来る。
と、いう事は今回の件は低位魔族の仕業であろうか。迷宮主が討伐される度にコロコロと変わる事から低位魔族が討伐される度に別の個体に取り憑き回り後から湧き出た魔物を隷属させていると考えるのは早計だろうか。
まぁ、どちらにせよ、迷宮内に入ればおいおい分かる事だろう。
ライとロイスは装備を整える事も気負いする事もなく迷宮へと歩を進めた。
「まぁ、冒険者への旨みは残しておかないといけないし、基本的には迷宮の魔物は外には出ないから、一般人には無害と言っても過言ではないですからね。…ただ、ライさん。貴方、冒険者でしょ?一応。」
「肩書きは冒険者ですけどね。…街中でしか働かないですよ。…手伝いとか…溝掃除とかで数をこなせば1日食うに困らないですからね。…第一、俺は無駄に殺生するのが嫌いな性質ですし、大体、そういった迷宮に潜ったり魔物を狩る冒険者が多すぎでしょ?…俺の入る隙間なんてないですし…。それに冒険者がやらなくても街の兵士や近衛もいますからね。…迷宮外の魔物は秘境とか以外の森や街道近くのヤツなら何とかなりますからね。…強い魔物が近くにいる街や城には…そういった魔物に対応出来るだけの実力者が集まりますからね。」
2人は雑談を交えながらようやく意識を迷宮内へと向けた。
今回は魔族が関わっているのかどうか…関わっているのだとしたらどの程度の魔族なのか…。事態の解決と今後の予測を立てる為に割りとハードルが高い。普通なら10数人規模で事に当たるべき事案だろう。
しかし、この場にいるのは2人。…だが、この2人だけで充分だ。
何故なら…
2人は規格外だからだ。
次回から漸く戦います。