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「おい、東。お前夏休み一緒にバイトしようぜ」
同級生の声に一人の青年がため息を付き本を閉じた。
「ごめん、夏は田舎に帰るんだ」
「お前、16にもなって・・・」
「別に良いだろ」
閉じた本を鞄にしまいそう言い放つ。
「じゃ、また夏休み明けに」
「おー、またなー」
その声を背に教室を出る。
「あいつ田舎なんかに帰って何が面白いれえのかなー」
「東君は・・・、毎年そうだよ、きっと」
「うわあ!なんだよ、急に話しかけんなよ・・小沢」
「ごめん・・わたし中学2年間クラス一緒だったんだけどその時も誘い断ってたし・・」
「ふーん、きっと何か帰る理由があるんだな」
一方、家路を歩く青年、東飛鳥はいつもより少し早く歩いていた。
「ただいま」
「あら、おかえりさない。早かったわね。」
「明日から、じいちゃんち行くから」
「・・・また今年も行くの?そろそろお友達との付き合いも」
「友達とは学校だけで十分楽しくやってるから。今日の夜出るから」
「そう、なら良いけど」
飛鳥は部屋に上がり、大きなバックに荷物をつめる。
今は、13:00。
あと30分後の電車に乗りたい。
制服を脱ぎ、私服に着替える。
階段を下り、ペットボルのお茶と菓子パンを手に取った。
「飛鳥、これ持って行きなさい。」
「ありがとう」
母が渡してくれた弁当も鞄にしまい家を出る。
真夏に向けて太陽が飛鳥を照りつけていた。