STORY:08
────ああ、私は今もの凄く隠れたい。むしろ穴を掘りたい。そんな気分だ。
何がってもう、人の視線だ。主に女性から。なんですかいコレ。
いや、理由は分かる、凄く理解しているのだ。今私はクレイ・ミヅキ・レイン・ルイの四人と映画館までの道のりを歩いているのだが、ここで感じるのがもの凄い視線。
いや、そりゃそうだろうと私も思う。なにしろ四人とも美形だ。一人でも視線があるだろうに、四人もそろっちゃ視線のオンパレードだ。バーゲンセールだ。(某サイヤ人より)
「ねぇ、あの人カッコよくない!?」「ていうかあのちっちゃい黒髪のこ可愛いー!」「外人さんなのかな?」「いや俳優かなんかで染めてんじゃない?」「じゃあ目は?」「カラコンっしょ。それにしても綺麗〜」
以上が今さっき聞こえてきた会話だ。そして四人に熱〜い視線を送ったのち、ついでに私にも何故か熱〜い視線。
私だってこういう事態を予測して、男物のカジュアルな服を選んだ。
ちなみに説明させてもらうと黒のタンクトップに黒と白のチェックの半袖の上着に下はジーパン、靴はコン○ース、ちなみにキャップを被っている。
私はもともと乙女な顔つきではない、というかむしろ少年顔っぽい感じなので男に見えるはず。まあキャップ被ってるから顔も言うほど見えないしね。
「でもあの帽子被ってる子も可愛くない?」「うんうん、陰のある感じが!」「ていうかあたしあの子が一番好み!」「え、でもあの子幼くない?」「ってことはアンタショタコン!?」
それ私のことっすか。まあ女が男の服を着てたら可愛らしくも見えるだろう。可愛い子だったらな!生憎私は自分の事を可愛いなんて思わない。っていうか思うわけがない。新手の嫌がらせですか、とかなんとか思っているとルイが言った。
「ねえ、あの女たち殺してもいいかな?」
「ややややめてくださいィィィィ!」
なに言ってんのこいつ!!必死で叫ぶとルイは不服そうにしながらも「はーあ」と盛大にため息をついた。ちょっと待てやこら。ため息つきたいのはコッチだっちゅーの!
「それにしても・・・さすがにここまで見られると困りますね?私たち、なにか変でしょうか?」
「ばっか、ミヅキさん気付いてないの!?それはあんた達が「ミヅキが振り返ざるを得ない顔だからだよ」
「──?」
ばっかお前!チゲェェェ!ルイはどんだけミヅキが嫌いなんだもう!反対だろ?あ、いやある意味ではあってるけど確実ルイが言ってる意味とはちげーよ!
しかもミヅキさんは意味分かってないし!ものっそい不思議そうな顔してるし!!
やっばい私もツッコミノイローゼになりそうだ。
「───クレイ、そのときは私と道連れだよ」
「俺は突っ込まない!俺は突っ込まないぞ!!」
「あーオレ腹減ったしぃー」
「早くつかないの?」
「ルイ、もう見えていますよ、あそこで「黙ってよ」
これもう傍から見たら変な集団じゃないか。なのに周りは仲良く話しているように見えるのかキャーキャー言っている、うるさい事この上ない。
「はあ」
私が何回目かも分からないため息をついたときは、もう映画館についていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どれにする?」
「鏡弥が見たいのでいいよ
鏡弥が見たいのは魔法学校のやつでしょ?額に稲妻の傷をもつ少年の物語でしょ?そうだよね?」
「ううううん、私すっごいそれ見たかったんだあ!」
「あはっ、鏡弥ってば噛み過ぎだしー」
「レイン、やめたれ」
いや確かに私は魔法学校のやつ見たかったけど!某魔法学校映画見たかったけど!あれってもう脅しじゃん、真っ黒な笑顔してさあ!ビックリだよもうお姉さんは!
「あー・・・じゃあそれで」
四人+私(一応女子がキャーキャー叫んでたしな)に恍惚したような表情のレジの店員(女)に言うと、店員は「はっはい!」とこれまた顔を赤くして言った。券を渡してくる時に無理やりな感じに手を触ってきてちょっとビクっとしたのは仕方ない。店員が言うには「ご、ご、五番スクリーンになりますっ!あちらの階段を上って(以下略)」らしい。
ああもう普段されれば良い気分なんだろうけどなんかムカつくよコレ。わー不思議だねこれ。あーもう疲れた。ここまで疲れるお出かけは初めてですよ!
とりあえず、無事に「お出かけ」が終わることを祈ろう。もうそれしか出来まい。
「ほら、早く行くよ!」
「鏡弥、いつからそんな口聞けるようになったの?」
「お前こそ居候だろうがあああ!!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・ごめんなさい」
なんとなく敗北感を味わいながら私+四人は五番スクリーンへと足を進めた。