(冷泉院 桜子)
(冷泉院 桜子)
「全く、揃いも揃ってストーリーをめちゃくちゃにしおって」
保健室に光が走り、髪の長い小さな女の子が現れた。
「神様……」
「え、こいつが運命の神様ってやつなのか!? まじで居たのか、運命の神様! つかすげーちっせえけど!」
浮いてる神様を指さして大和君が驚く。
「小さいは余計なお世話じゃ」
「わ、なに」
突然空君の頭にハートの風船が落ちてきた。
「風船?」
「うお、いっぱい落ちてきた!」
宙に浮かないラバー式のハートだけじゃなく、中途半端に浮かんでる風船まである。僕らの上にどんどん降り注いでくる。
「なにこれ、楽しい!」
僕が涙をぬぐって空君に一つ投げるとダース単位で反撃が来た。でも風船だから当然痛くはないけど。
シン先輩や体を起こしたキリヲくん、大和君にも投げる。
「手触りが気持ちいいな―。桜子ちゃんに反撃」
「わー」
「楽しい、どこから?」
「ほんとね。いきなり出現したわよ。あの飴の雨の時みたいに」
え、ってことは、もしや――――
「まさか、この風船、作者さんが」
「まぁ、桜子に対する贖罪のようなもんかの。この世界の作者がベックスにまたイラストを投稿したんじゃ。桜子も含めた全員が笑顔で風船で遊ぶ姿をな」
神様は瞼を閉じた。
ホログラムに小夜子の姿が映る。
『桜子さん、この世界の平定、おめでとうございます。わたくしもとても嬉しいですわ。思わずタンスを真っ二つにしたぐらい。みなさま。お久しぶりでございますね』
「小夜子さん」
キリヲ君が熱でだるそうにしたまま言う。
「桜子ちゃんに、暴力を振るっていたお父さんは帰ってくるんですか?」
答えるのは神様だ。
「いや、隔離病棟に入れておるからな。冷泉院一族の恥部だ。アルコールが抜けた後もどこかの病院で監禁されるじゃろ」
「……でも、万一父親が戻ってきたとき……女性二人じゃ……危ないかも知れませんよね……。使ってない持ち家があるんだ……。人が住まないと痛むから定期的に清掃を頼んでて……。そこに住んでくれないかな。学校にもスーパーにも近くなるよ……」
「でたよアイドルの財力」
「学校に近くなるならいい。さよとも遊べる」
空君が風船を飛ばしたり捕まえたりして僕に飛ばしてくる。もちろん反撃してるけど。
「小夜子の言う通り、この世界は平定された。桜子も見たじゃろ、一面の夜景を」
「あ――うん」
「この結末を作者が喜んでいるのだろう。六人で幸せになった世界線をな」
「そっか……」
色々大変だったけど、終わりよければすべてよしじゃないけど、僕は見も知らない作者さんに心でお礼をいった。




