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360度の夜景

「あいたたたた」

「どうした、腹が痛むのか? だから拾い食いはやめろとあれほど」

「拾い食いじゃないよ! 蹴られたの!」


 お腹の部分をあげ、そこにくっきりとついた靴痕を見せた。

 神様の眉間に皺が寄る。

「なかなか酷い怪我じゃな。お前は今、神の眷属だ。その男は倍以上の怪我を負うだろう」

「桃香さんが右腕を粉砕骨折させてたよ」

「なるほど」


「今日はなるべく内臓に負担を掛けない食事を用意しました。まったく、女の子のお腹を蹴るなんて。私が傍に居たら頭をパーンってしましたのに」

 やめて! ここはマッチョ大行列の世界じゃないんですよ!

「あ、チキンドリア! 凄いいい匂いです、美味しそう!」

 つけあわせのサーモンとアボカドのサラダも豪華だー!


 お腹に良くても美味しいご飯をたっぷり食べたころ、玄関のチャイムが鳴った。

「こんばんは、伊織大和です」

「大和君? どうしたの? 空君に何かあったとか!?」

「いや、その、桜子さんに用があって」

「僕に? なんだろう。上がっていいよ」

「お邪魔します。こんばんは、小夜子さん」

「はいこんばんは」

 神様の姿は見えないらしくスルーだ。


「メールが回ってきたんです。桜子さんと空の怪我の状況。二人とも軽症でよかったですね」

「ん。シン先輩と桃香さんが助けてくれたから」

「今度から見回りは三人体制になりました。絶対おれかシン先輩か桃香さんが加わって」

 書記や雑務をやっている男子もいるんだけど戦力外通知されてるな。当然か。空君より強いとは思えないし。


「んで……桜子さん凹んでんじゃねーかなって思って……」

「え?」

「前言ってたじゃありませんか。自分の前世は男だったって。だから、良かったら気分転換に行きませんか? バイクで。いい場所があるから」

「え! バイクに乗せてくれるの!? うん、行く行く!」

「小夜子さん、ちょっと遊びに行ってきます!」

「余り遅くなったら、メッしますからね」

 メッが滅に聞こえる。

 パーカーに短パン、それにスニーカーで大和君の後ろに乗る。こないだ乗ったバイクとは違って、ちょっと細身のバイクだ。


 バイクが動き出すとちょっと風が冷たいけど、気持ちいいな。


「どのくらいかかるの?」

「すぐです」

 バイクが山道に入り、頂上まで上り詰めた。


「わぁ……!」

 三百六十度見える夜景! すごい、この町ってこんなに広かったんだ。綺麗だ!

「すごいすごい! こんな場所があったなんて!」


 石のベンチに立って三百六十度の夜景に感動してしまう。


「誰にも教えないでくださいよ。ここ、車通れないしバイクもこのオフロードバイクじゃねーとあぶねっすから。しかも徒歩だと急こう配だしさ」

「じゃあ秘密の場所に連れてきてくれたんだね、ありがとう! 喧嘩で何もできなかったから凹んでたんだけど、ちょっと元気出てきた!」


「ならよかったです」

「街の明かりがあんなに明るいのに、星は良く見えるんだね! 星座全然分かんないけど!」

「好きに付けたらどうですか?」


「んじゃー。あそこに三角に並んでる星はオニギリ星! んで、あっちに並んでるのは焼肉星!」

「食い物ばっかじゃないですか」

「今日は蹴られて怪我したから消化にいい食べ物だったんだもん。もうお腹減ってきちゃった」

「メールでは軽傷とありましたけど、どこ怪我したんですか?」


「ん、おなか」

 パーカーをめくって足形を見せる。


「ひでぇ……くそ、あんとき空じゃなくておれだったら……!」

「でもこれだけだよ。一週間もたてば治るって」


 大和君が暗雲を背負ってベンチに座る。

 僕も何となく隣に座る。

「!?」


 座った途端、顎を掴まれたと思ったらそのままキスされた!!!

「んな、な!」

 思わず突き飛ばして逃げだしてしまう。


 でも大和君はベンチでしょげたまま動かなかった。


 落ち込んでいる大和君とは反対で、僕は顔から火が出るんじゃないかってぐらい真っ赤になってしまった。

「おれは絶対アンタを守りますからね。何かあったら言ってください」

 じゃ、そろそろ小夜子さんが心配しそうだから帰りましょう。と、バイクにエンジンをかけ、僕の頭にフルフェイスをかぶせた。


☆――――――☆


「じゃあまた明日な」

「う、、、ん」


 家に帰っても僕は真っ赤のままフラフラしていた。

「おかえり。なんじゃ、真っ赤になって。もしや大和とついにやったのか!」

「やっちゃいました……」

「でかしたぞ! これであと三人だ!」


「やったって、なにをやったんですか?」

 小夜子さんの質問にも真っ赤になって超小声で答えてしまう。

「キ、キス――です――」


 ぴこ、と神様に頭を叩かれた。


「どうしてくれようかこの役立たずが……」

「もー僕絶対エッチなこととかできないよ! キスだけで頭がパーンってなったもん!」


「花も恥じらう乙女かお前は! せっかく女になったんだから男を誘惑して楽しむぐらい成長せんか!」

「でででできるわけないだろ!」

 改めて、エッチなことなど絶対できないと確信した夜でした。というかファーストキスが大和ちゃん……他の三人より、まだ恥ずかしくないな、うん。だって中身は女の子だもん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新されてる!? また最初から見直しました! ありがとう!
[良い点] やったー! 初チッスだ! [気になる点] 全員とするのか!?
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