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好感度グラフ

 小夜子さんが出て行った後、部屋に光が走った。そして、

「のじゃ」


 突然部屋に幼女バージョンの神様が寝そべった状態で現れた。

「神様! お願いです手を貸してください! 僕一人じゃやっぱり駄目だったよ! 頼りにしてた小夜子さんも敵だったし!」


「の、ようじゃの。好感度も」

 空中に折れ線グラフが現れた。桃香さん黒色。僕、桃色で、ハーレム君たちは青色だ。

 なぜか百万回ほど聞いてみたいけど僕への好感度がずば抜けて高かった。『レベル恋人にしたい』

 シン先輩以外が全員そのレベルだった。ちなみにシン先輩は「子猫みたい」である。

 桃香さんへ向ける逆ハーレム君たちの好感度は「怪獣」「ゴジラ」「ゴリラ女」「手のかかる幼馴染」。


 そして、桃香さんが皆に向けてる好感度はなんというか『レベルちょっと使える粗大ごみ』である。

 ひ、ひどい。

 桃香さんに言いたい。皆、いい人だからね!

 というかどうしてこうなっちゃったんだ? 逆ハーレム漫画だからせめて男性陣達の好感度は桃香さんに対してマックスでなきゃおかしいのに。


 桃香さんに向かって怪獣とかゴジラとか、好感度がめちゃくちゃじゃないか!

「このグラフ壊れてるんじゃないの?」


 ぺしぺし叩こうとするが、ホログラムだったらしく僕の手が素通りしてしまう。

「なんでこうなっちゃったんだ……。最初の頃は普通だったはずなのに」

「そりゃまあ、お前の人となりを知ったからじゃろ。お前はほっといたら馬鹿な事故で死にそうな面しとるしの」

「それは前世の僕にいってください。今世はおじいちゃんになるまでのんびり生きたい」


「なんじゃお前。元の生活に戻るのを諦めたのか?」

「諦めてないよ! でもでも、逆ハーレム君たちがゴジラって言ってるし、桃香さんに至っては粗大ごみだよ! 好感度を上げることなんてできなさそうだもん!」


「だからエッチをすれば解決するんじゃよ。ほらさっさと行ってこい。レベル恋人なら誘えば一発じゃろ」


「できるわけないだろ!」


「あら、騒がしいと思ったらお久しぶりですね。神様」

「ああ。こいつがいつまでたってもクリアできないから難儀しておる所じゃ」

 小夜子さんがごついからだで宙に浮いていた神様を横抱きにして頭を撫でる。


「クリア条件はなんですの?」

「こいつが逆ハーレムたちとエッチすることじゃ」


「まぁ……」

 小夜子さんが戸惑っている。

「無理ですよね、絶対無理ですよね! しかも僕、男だったし無理にもほどがありすぎるよ!」

 どうでもいいことですが、桃香さんの僕への評価は『神様が私に与えてくれたオバカ可愛い天使』だった。あれって本音だったんだ……。


「そこをクリアしてこそ元の世界に戻るという奇跡が起こるんじゃよ」

「壁が高すぎる!」

「そうですわねぇ……まだ未成年ですし、成人するまで待ってからエッチしてもいいんじゃないかしら。私、以前お話したでしょう? マッチョ大行列の世界を30年かけて平定したと。桜子さんもそれぐらいかけて、のんびりと心身ともに女の子になるのを待ちましょう」


「うっうっうっそんなに時間を掛けたら逆ハーレム君たちに忘れられる自信があるよ……」

「桃香も結婚してるかもしれんしな」


「それもそうですわねえ……。これはもう、意を決して早めに済ませた方が」

「でぎまぜん……!」


「だが、桃香のお前に対する好感度がほぼマックスじゃな。大和も、空も。キリヲも。シンだけが別枠扱いだが」

「嬉しくないです……」


 その言葉を最後に、僕は座布団を枕にしてコテンと横たわったのであった


――――


 翌朝。

 僕がどれだけ悩んでいようが朝は来るんだなー。

 当たり前か。のろのろと制服に着替えて、鞄を抱えのろのろと階段を下る。

「おはようございます、小夜子さん」

「おはようございます、ご飯はどれぐらい食べられますか?」

「いつも通りでお願いします」


「ふふ」と笑われてしまった。

「ご飯をちゃんと食べることはいい事です。でも、旅行のドタキャンは許しませんよ」

「むーむー。話さなければよかった……」


「いっそのことお泊りは夏になってからがいいかも知れませんよ。海で目いっぱい遊んでらしたら?」


 海!


「いいですね! その時には小夜子さんも誘います!」

「あら、私がいてはお邪魔虫になってしまいません?」

「そんなはずないよ。いつもご飯を作ってくれてるお礼しなきゃだし」

「桜子さんは律儀な方ねえ」


「あ、そういえば水着持って無かった。買いにいかなきゃ」

「まだ気が早いですよ。7月になってから行きましょう」

「うん! 今日のご飯も美味しいなー! 小夜子さんと暮らせてよかった」


「まぁ。そういう発言をするから好感度が上がりまくってしまうんですよ?」

「え、そうなの!? 普通の感想だと思ったのに」


 小夜子さんが苦笑してしまった。うん、ほうれん草のお浸しじゃこそえも美味し!

「はい、お弁当をどうぞ」

「ありがとうございます!」

「今日はサンドイッチにしてますからね」

「え、今から楽しみ!」

「つまみ食いは駄目ですからね。それじゃいってらっしゃい」

「はーい!」


 僕が立ち上がると同時に、ピンポーンとチャイムが鳴った。

「あら、こんな時間に誰かしら?」

 エプロンで手を拭きながら小夜子さんが玄関に出る。

「おはようございます、小夜子さん」

「あらあらキリヲ君。どうしたのこんな時間に」


「桜子さんが電車で痴漢にあったって聞いて、オレの車で送ろうと思いまして」

「桜子さん、痴漢にあったの? そういう時は背骨をボキっとやらなくちゃ」


 物騒! でも……。

「痴漢も慣れたから平気だよ。気にしないでキリヲ君」

「な、なれたって何回痴漢されたんだよ!」


「登校するたびにかなー。僕のスカート短いし、いいカモになってるみたい」

 痴漢されるたびにあちこち逃げてるけど(こういう時は小さい体が便利)

「駄目だよ! そういう時は周りの人に助けを求めないと! 迎えに来てよかった……」

 キリヲ君がほっとしたため息を吐く。


 キリヲ君に二の腕を掴まれて車に乗せられてしまった。ちょっと痛かった。


――


 各駅停車の電車と違い、車はあっという間に学校についてしまった。

 ホームルーム開始まで、後30分は時間がある。

「屋上に行こうよ。これ、持ってきたから」


 鞄からCDを出す。後姿のパッケージが僕に似てる曲だ。

 実は気に入って寝る前とか勉強中にもつけてたんだよな。

 それを話すと、「聞いててくれたんだ、嬉しいな」と満面の笑顔をくれた。

 僕が持ってきたCDプレイヤーに入れて、曲を流す。

 でも、カラオケバージョンだった。

 歌うのはもちろんキリヲ君だ。


 僕はむずむずしちゃって、屋上に誰もいないことを確認して下手くそなダンスを踊る。飛んで跳ねて、大好きの時は空君が教えてくれたむねきゅんポーズを取って。好き、って、いいな。素直にそう思える曲に、でたらめなダンスを踊る。

 曲が終わると、キリヲ君がぱちぱちと拍手をくれた。

 ペントハウスから街を見てたと思っていたのに、僕のダンスを見られていたみたい。これは恥ずかしい。プロのダンサーの前でテンションが上がったからって何やってんだ僕は。


「すごい可愛いダンスだったよ! 桜子ちゃんにはダンスの才能があるのかも」

「お、お世辞はいいよ。ノリがいい曲だからつい踊ってしまいました」

「お世辞じゃないよ」

 ペントハウスの上からジャンプで降りてくる。

「久しぶりに歌うのが楽しかったな……」

 久しぶりなの? 歌手なのに? 僕らには分からない悩みがあるんだろうな。

「そろそろ生徒会室に行こうか。皆集まってるんじゃないかな?

「ほんとだ、もうこんな時間!」

 僕たちはあわてて階段を下りて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新されててびっくり もう更新されないと思っていたから嬉しい
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