表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/71

体育の授業です(更衣室編)【挿絵有り】

イラストをこいし様に描いて頂きました!!ありがとうございますありがとうございます!!

 …………。

 ………………。


 僕は体操服の入ったバッグ片手に、落ち込みながらふらふらと廊下を歩いていた。


 桃香さんとキリヲ君、そして空君だけを生徒会補佐部会に入会させようと思ってたのに、言葉足らずだったせいで僕が補佐部の部長に任命されるというとんでもない事態に陥ってしまった。


 女の子一人、男一杯の部活で桃香さんと逆ハーレム君たちの急接近を狙ったっていうのに、これじゃ僕がお邪魔虫だよ……。


 いや、待て僕。

 これは新たなるチャンスかもしれないぞ。


 僕の仕事をことごとく桃香さんに押し付けて、「この程度の書類もさばけないの? このコムスメが!」みたいな感じで罵倒すればきっと皆、僕を蛇蝎のごとく嫌いになって桃香さんを助けようとするはずだ。

 これは……!

 我ながら良い考えだ! 凄いぞ僕! 実に根性悪だ!


 次の時間は体育。

 僕は更衣室へと向かっていた。

 体育はもともと大好きな授業だし、落ち込んでいた気持ちを切り替え前を歩く制服に続いていると、突然首根っこ引っ張られた。


「桜子どこまでいくの? 女子更衣室はこっちだよ」

「え」


 無意識の内に男子の後に続いていた。

 ち、ちょっと待ってどうしよう。

 じ、女子の更衣室に入るなんてそんな!

 いやしかし僕は冷泉院桜子なんだ。見た目は完璧完全な女子なんだ。男の更衣室で着替えるなんてできない。当然、着替える場所は女子更衣室だよね。


 ひぎゃあああ、ざ、ざいあくかんが……!!


 なんか女装して覗きに入ろうとしてる犯罪者の気分になってしまう。

 桃香さんも他の女子も僕を女の子と信じ切ってるから余計タチが悪い。


 しかしこの学校はトイレで着替えるのも教室で着替えるのも校則で禁止されてるし……。

 いや、でも、


「早くしないと間に合わないよ」


 ドアの前でブツブツ考え込んで居ると、桃香さんに腕を引かれてしまった。


 そして、身構える暇さえなく女子更衣室の中に入ってしまったのだった!!

 うぁわあ僕の痴漢! お巡りさん、覗き魔がここに!


 思わず自分で通報したくなってしまったけど、高校一年生で逮捕されたくもないので着替えの光景を見ないように下向いて中に入っていく。


 二つ開いたロッカーを見つけ、僕と桃香さんは並んで着替えを始めた。


「桜子どうしたの? 耳真っ赤だよ?」

 ほっといてください。

 顔を上げることもできなくて、俯いたままバッグから体操服を取り出す。


「ひょっとして恥ずかしいの? 見られたく無い物でも隠してるとかぁ?」

「ひぎゃ!」

 どん、と後ろからぶつかられて、思わず体を小さくして悲鳴を上げてしまう。

 鼻にかかるようなこの声は。


「九文さん、桜子をいじめちゃ駄目って言ったでしょ」

 桃香さんがぶつかってきた体を引き剥がしてくれる。

 僕にぶつかってきたのは大和君から眼鏡を取った女子、九文さんだった。

「いじめて無いよ。こんなコソコソされてたら逆に気になるんだもん」


 そ、そ、うか。確かにこれじゃ僕が痴漢だって白状しているような物だ。


 慌てて体を起こすと、中途半端にボタンを外した桃香さんの胸が! 胸の谷間が目に! 入ってしまった。

 た、谷間! 凄いぞ桃香さん! やっぱりスタイルいい! 凄い迫力だ!


 谷間を見たのなんて初めてで、思わず釘付けになってしまう。


 それからふと僕の体を見下ろして、自分の胸の辺りを両手で撫でる。


挿絵(By みてみん)



 スカスカスカスカスカスカ。


 ふむ。

 鎖骨→お腹→鎖骨と勢い良く往復しているのに何の障害物にも当たらない。


 こんな体じゃ大和ちゃんに胸小さいって言われたのも当然だな――なんて納得してたら、ブフ、と笑いを堪えて噴出した音がした。

 九文さんと桃香さんだった。

 桃香さんは後ろを向いて肩を振るわせながらも笑いを堪えてくれたけど、九文さんは爆笑して僕の肩を叩いた。


「桜子ちゃんドンマイ! 大丈夫だって、きっとすぐ大きくなるって!」

「う、うん」


 さっさと着替えてしまおう。

 僕はカーディガンとブラウスを脱いでハンガーに引っ掛けた。さすがにまだちょっと寒い。どうして更衣室って暖房ないんだろ。創作の世界なんだからエアコン完備しててくれてもいいのに――。


「うひゃ」


 キャミソールだけで剥き出しになった僕の肩に冷たい掌が触れた。またも九文さんだった。


「桜子ちゃん、ブラしてないの? 貧乳でもちゃんとつけなくちゃ駄目くない?」

「貧乳なのに必要なの?」

 箪笥の中にブラは無かったから小さい人はつける必要無いって思ってたんだけど。


「貧乳でも必要に決まってるでしょ!」

「貧乳だからってブラ無しなんて駄目だよ!」

「痴漢にあったらどうすんの!? 貧乳でも生乳触られるって超嫌だよ! せめて金払えってなるよムカツクよ!」


 僕がエクステ云々で絡んで行った、東原さん、北原さん、南原さんから口々に言われて貧乳がゲシュタルト崩壊してきた。

 どれだけ貧しいんだ僕の胸は。


「桜子ちゃんって結構大胆なんだね。さっきまで真っ赤になってたから、恥ずかしがりなのかなって思ってたのにブラウス脱いじゃうし」

 え?


 北原さんに言われて初めて気が付いたんだけど、周りで下着姿になってる女子はいなかった。

 キャミソール姿でいるのは僕だけだ。


 他の女子達は皆、中途半端までブラウス脱ぐと、頭から被った体操服に器用に腕を通して下着姿を晒さないまま着替えていた。

 しまった! 男時代は上半身裸になって着替えてたからついそのままの感覚で着替えてしまった。

 女の子は自分の体を見られるのを恥ずかしがるって忘れてたよ。

 他の女子の裸見ないようにするのに意識が全部行ってしまってた。


 まだ入学して数日で周りは知らない子ばっかりだから、裸を見られるのが恥ずかしいって意識もあるだろうけど、寒いんだから、すぐ服着たいって思うのも当然だ。

 慌てて僕も体操服を纏う。


「私、安くて可愛い下着屋さん知ってるよ。一緒に行こうか。スポブラもキャミブラも可愛いのいっぱいあって見てるだけでも楽しいし。私好みの下着つけてくれるんならプレゼントしちゃう」


 桃香さんがふざけたみたいにゲヘゲヘって笑う。


 僕、貧乏だから下着買うお金なんて無い。

 桃香さんは僕に下着をプレゼントするため、僕が遠慮しないようにセクハラオヤジっぽいい言い方してる。それが判って悲しくなった。


 僕は桃香さんをいじめなければならないってのに――――。



 やっぱり、駄目だ!


 これ以上桃香さんと親しくなっちゃ駄目だ!

 僕はこの世界でちゃんと悪役して、もとの世界に戻らないといけないんだから。


 事故で死んだ僕の本当のお父さんとお母さんは身寄りの無い孤児だった。僕が戻らないと両親のお墓を管理してくれる人がいない。

 そりゃ二人は保険金残してくれて、何かあったとき弁護士さんが全て処理してくれるように手続きもしてくれていて、僕が一人暮らしするのになんの支障もなかった。もし僕に何かあったら、全財産をお寺に寄付してお墓の管理をお願いするように僕から弁護士さんにお願いもしてた。

 だけどやっぱり、戻りたい!


 ゴキさんに生まれ変わるのも絶対嫌だし!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ