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ある子猫の回想  作者: 東風
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0歳(秋から冬の巻)

 引っ越しも済んでようやく落ち着いてきたこの頃、家の外はだんだんと寒くなって、近くの家の周りに色とりどりの明かりがつくようになりました。

 チカチカと瞬いてとても綺麗なのですが、一体何のためにあんな事をしているのでしょうか?

 不思議に思ってアヤお母さんに聞いてみました。


「アヤお母さん。この頃、近くのおうちの周りに、いろいろな色の明かりがチカチカしているけど、あれって一体なんなの?」


「ああ、あの明かりかい?あれは人間のお祭りみたいなもので、クリスマスっていうものの飾りだよ。いつも今ころになると、あんなふうに飾っているのさ。」


「クリスマス?一体何のお祭りなの?」


「さてね。マサさんとトモさん達の話だと、ずっと昔に生まれたキリストっていう人の誕生日のお祝いだっていうけど、どんな人間だったのかは知らないからね。あんなふうにきれいに飾ってみたり、ケーキって言う甘いお菓子を食べたり、私達にとっては、いつもよりちょっと美味しいものが食べられて、少し賑やかな日っていうだけのことさ。」


「ふうん。それじゃあ、美味しいものが食べられるんだね!どんなものが食べられるんだろ?沢山食べられるのかな?早くクリスマスが来ないかな?」


「お前は本当に食べることにしか興味がないんだね。そんなんじゃ、体が大きくなるよりもお腹ばっかり大きくなって、動けなくなるからね。大体、クリスマスなんてもっと先の話なんだから、今から興奮しても仕方がないんだよ。」


 そんなことを言われても、美味しいものを沢山食べられるのって、とても嬉しいことだと思うのですが、アヤお母さんは違うのかな?

 それにいつもより、もっと美味しいものが食べられるんだったら、楽しみに思うのは当たり前だと思うんだけど。

 でも、もっと先の話って、どれくらい寝たらその日が来るのかな?


 初雪と云うものも降って、毎日の寒さもだんだん厳しくなってきました。

 真ん中の部屋に久しぶりに出された炬燵の中や周りで丸くなって眠る事が多くなった、この北の家でも、年末に向けて忙しい日々が続いていました。

 この年の春に起こった大きな地震の影響も、まだあちこちに残ったままのようですが、それでも一年の終わりを迎えるために色々な準備をしなければならないのだそうです。

 マサさん達のお仕事もとても忙しくなって、大変なようです。


 この頃になると、マサさんは朝、真っ暗な内からお仕事に出発します。

 僕の朝ご飯を出して、自分もご飯を食べるとすぐ、いつも仕事に行くときに着る服の上にもこもこの服を着込んで車に乗って出掛けていきます。

 その次に家を出るのはユキくんです。ご飯を食べてからしばらく何かをやって、黒い服を着て、その上からやっぱりもこもこの服を着て学校というところに行きます。

 イッちゃんはそれよりもだいぶ遅れて家を出ますし、ノンちゃんは家を出る時間が決まっていません。

 ノンちゃんの仕事は朝からだったり、昼からだったり、ときには夕方になってから出かけることもあります。

 そして、みんなが家を出るころにトモさんが起きてきます。


 トモさんは相変わらず体の調子が悪いようで、朝はなかなか起きてきません。そして、起きてもしばらくは炬燵に入って動きません。

 少しすると、煙草を口にくわえて火を付け、いやな匂いのする煙を吐き出しながら、冷蔵庫の中から何か出してきてコップに注ぎ一口飲んで、ようやく動き出します。

 僕は、トモさんが冷蔵庫の所に行くとき、必ずついて行って、何かくれないかなと足下で待っています。

 2~3回に一回くらい、冷蔵庫の中にあるカマボコやハムなんかを分けてくれるのですが、僕が貰うとトマト伯父さんたちもやってくるので、トモさんはあまりくれたくないようです。


 その後、トモさんは洗濯をしたり掃除をしたりしますが、すぐに疲れてしまい、炬燵に入ってテレビを見たり、ときにはそのまま寝てしまったりします。

 トモさんは自分一人のときは余り物を食べません。

 冷蔵庫に入っているものを飲んだり、時々ラーメンやうどんといったものを食べるときもありますが、それも半分くらいは残してしまいます。

 それに時々すごく具合が悪くなってトイレや玄関で動けなくなるときがありますが、そんなときはトマト伯父さんが心配して側にずっと付いています。


 トモさんの調子は、僕が産まれた頃よりだいぶ悪くなっているようです。

 だんだん顔色が悪くなって、唇も白っぽくなってきているので、マサさんはとても心配しています。

 トモさんにお医者さんに行くように言っていますが、トモさんはお医者さんが嫌いだから行かないと言ってマサさんを困らせています。


 そんな時、ハチ伯父さんが突然具合が悪くなり、ご飯を食べなくなってしまいました。

 イッちゃんはとても心配してマサさんにお医者さんに連れて行った欲しいとお願いしました。

 マサさんはトモさんのこともあって色々大変そうですが、それでもイッちゃんと一緒にハチ伯父さんをキャリーボックスに入れて車でお医者さんに連れて行ってくれました。

 しばらくしてマサさん達だけ帰ってきて、ハチ伯父さんはお医者さんのところに少しの間入院することになったとトモさんに話していました。


「どうやら、ハチはストレスから来る拒食症のようになってみたいだね。」


「ストレス?何かあったのかしら?」


「最近、クロがハチを苛めているみたいだから、それが原因じゃないかな?」


 そうです。この頃、クロ伯父さんがハチ伯父さんに何かというと意地悪をするようになったのです。

 何があったのかさっぱり解らないのですが、突然2匹で喧嘩を始めて、それを止めようとしたマックスお父さんにまで引っ掻いたり噛み付いたりしたのです。

 マックスお父さんも怒ってしまい、クロ伯父さんとハチ伯父さんを押さえつけて殴っていましたが、それでも収まらなくて、もう大変でした。

 昼も夜も、少しでもハチ伯父さんが油断すると、クロ伯父さんが襲いかかるので、ハチ伯父さんもゆっくり休むことが出来ず大分疲れたようです。

 それで、ハチ伯父さんは具合が悪くなってしまったのでしょう。

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