0歳(春から夏の巻)
1/8:サブタイトルを変更しました。
僕が産まれてからしばらくの間、時々家が大きな揺れました。
小さな揺れは毎日のようにありましたが、僕たち猫はみんなのんびりとしていました。
アヤお母さんやトマト叔父さん達から聞きましたが、僕が産まれる少し前に、とてもとても大きな揺れがあったそうです。
暖かい部屋の中で、みんなでお昼寝をしているときに、ものすごい揺れが起きて、逃げることも出来なかったと言っていました。
幸い、家にいた猫たちは、誰も怪我一つしなかったようですが、飼い主さん達はみんな外にいて大変だったそうです。
マサさんはお仕事で少し遠くにいて、なかなか帰ってこられなかったそうです。
トモさんはお買い物で近くを自転車で走っていたら、電信柱が倒れそうな揺れで、止まっていた車が動いて近づいて来たのでとても怖かったと言っていました。
いっちゃんものんちゃんも仕事中だし、ゆきくんは学校というものに行っていたそうです。
何とか夜にはみんな無事に家に帰ってくることが出来たそうです。
他の所よりこのあたりはまだ良かったようで、夜になっても灯りがつかなくても水とガスが使えたので、真っ暗の中でもロウソクの明かりでご飯を食べることが出来たそうです。
ただ、しばらくの間、アヤお母さん達のキャットフードが手に入らなくて、ご飯におかかとかが続いたそうです。
「アヤお母さん。夜になっても真っ暗だったの?」
「そうよ。家の外に出ても真っ暗で、お星様の灯りしか見えないの。家の中も寒くて、みんなで集まって、くっついて寝たものよ。」
「家の外も真っ暗だったの?」
「家の中も外も同じだったわ。どこに行っても全然灯りがついていなかったの。車だってほとんど走っていなかったわ。」
「そうなんだ。僕も見てみたかったな。」
「でも、ご飯が少なくて大変だったのよ。あなたがあの時に産まれていたら、きっと生き残れなかったでしょうね。」
「それはやだな。僕、ご飯食べたいし。」
「そうでしょ。」
それから、だんだん揺れることが少なくなって、僕が産まれてから3ヶ月位たちました。
何だか、だんだん暑くなってきます。
もうすぐ夏というものになると叔父さんたちが話しています。
僕にとっては初めての夏です。
この頃には、僕はトモさん達にミルクを貰ったり、アヤお母さんからおっぱいを貰ったりして元気に動き回れるようになっていました。
相変わらず、ミミお母さんはちっともかまってくれなかったけど、叔父さんたちが優しくしてくれたので寂しいと思うことはありませんでした。
ただ、産まれた頃にお腹いっぱいおっぱいが飲めなかった事と、僕だけがドライタイプのキャットフードを食べることが全然出来なかったので、体がちっとも大きくなりませんでした。
ミミお母さん達は、いつもお皿に出されているキャットフードを美味しそうに食べているのですが、僕にはちっとも美味しそうに見えなかったし、堅くて食べたくありませんでした。
その代わり、缶詰のキャットフードは食べられたのですが、トモさん達は缶詰のキャットフードは1日に1回だけと決めていたので、僕には全然量が足らなかったし、他にはミルクだけでした。
「それにしても、ちっとも大きくならないな。」
とマサさんが言うと、トモさんが
「やっぱりおっぱいを貰えなかったからかしら?可哀想だけど、これで生き残れるのかしら?」
「難しいかもしれないね。チビだし、痩せこけてぼろぼろだし、頑張ってほしいけどね。」
「そういえば、この子の名前はどうするの?」
「どうみても「チビ」だろ?」
「・・・・犬じゃないわよ?「うさぎ」なんか良いんじゃない?」
「いや、「うさぎ」もあれでしょ?やっぱり「チビ」で良いよ。」
結局、ちっとも大きくならない僕を見て、マサさんから「チビ」と名付けられました。
このアパートの一番大きな部屋には、床から天井まで届くような大きな窓がありました。
マサさんがこの窓合わせて、猫専用の出入り口を作ってくれたので、叔父さんたちはこの出入り口から自由に外に遊びに行くようになりました。
でも、僕はまだ外に出たことはありません。別に出たいとも思わなかったし、だんだん暑くなってきて、外は家の中より暑いような気がしましたから。
それに、そんなに遠くまで歩けるほどの体力も無かったし、窓の外に大きな段差があるので、僕の体では登ることができなくて戻ってこれなくなるのでした。
いきなり、空から水が落ちてくるのにもビックリしました。
アヤお母さんに聞いたら雨というものだそうでした。
僕と同じ頃に産まれたアヤお母さんの2匹の子供達は、いつの間にかみんな居なくなってしまいました。
普段、僕はマサさんとトモさんの部屋で寝起きしているので、別の部屋にいるアヤお母さんのところには時々おっぱいを貰ったり、2匹の子供達と遊ぶために行きましたが、昨日までいっしょに遊んでいた子達が、気がつくと動かなくなってしまいます。
僕の兄弟達と同じように冷たくなって、とうとう居なくなってしまいました。
僕は遊び仲間がいなくなって、寂しくなってゲンキ叔母さんやハチ伯父さんに遊んで貰うようになりました。