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ある子猫の回想  作者: 東風
11/24

1歳(春から夏の巻)

遊び場を作って貰えて嬉しいけれど、外を自由に走り回れたらもっと楽しいのに。

マサさんも大変みたいだし・・・。

 トモさんに僕たち猫の遊び場を作ることを頼まれたマサさんが、居間の窓の外で色々と仕事を始めてから数日がたちました。

 何枚も紙に絵のようなものを描いて考えていましたが、どんな物を作るのか大体決まったようで、今日はトモさんへの説明をしています。


「しっかりした物を作るのはもっと暖かくなってからにするとして、今のところはこんな感じで作ろうと思うんだ。」


「ちょっと小さいくないかな?家から外には出ることが出来るけど、この大きさじゃ、この中で走り回るなんて出来ないから運動にはならないよね?」


「そこのところはしばらく我慢して貰うしかないよ。さすがにまだ外で仕事をするには寒いからね。本格的に作る物はもっと大きくて頑丈になるから作るのにも時間がかかるんだ。出来上がれば、十分遊べるようになると思うんだ。それまでの辛抱さ。」


 いろいろ説明して、なんとかトモさんから了解を得られたようです。

 次のお休みの日、マサさんは朝から車で出かけて色々買い込んできました。

 そして、沢山の物を運ぶと、居間の外でトンテンカンと作り始めました。

 まず、地面に管のような物を大きな金槌みたいなもので打ち込んでいきます。

 管の2/3位を地面に打ち込むと、その中に細い柱を立てて行きます。

 管を6本打ち込むみ、柱も6本立立てると、その柱の真ん中あたりの間に棒を渡して紐のような物で縛っていき、マサさんが入れるくらいの四角い枠を作りました。

 それが出来上がると、その枠の中に大きな緑色の網を広げて、その網をまた紐のような物を使って端から四角い枠に留めていきます。

 そうしてほぼ一日掛かりで出来上がったのは居間の幅一杯くらいの大きさで網で囲まれた四角い部屋のようなものでした。


 最後にその枠の窓側と居間の窓の外側をつないで、間に網を張って隙間をなくします。

 網の裾は、その部分だけ地面を掘って、その中に入れるとしっかり土をかけて埋めてしまいます。

 さらに、その上にブロックを隙間亡く敷き詰めて、僕たちが掘り起こすことができないようにしてあります。

 網の目はとても細いので、これで居間の窓から外に出られるけれど、網の部屋からは出られないようになりました。

 ここまで終わった頃にはもう夕方で、辺りは薄暗くなっていました。


「疲れた!やっと終わったよ。こんな感じでどうかな?」


「ご苦労様。でもやっぱり狭いわね。それでも外の空気が吸えるだけマシなのかな?」


「まあ、これでどれ位持つか判らないけどね。夏まで持ってくれれば良いから、チビ達も我慢してくれよ。」


「下のほうはこのまま?雨が降ったら泥濘になるんじゃない?」


「今度の休みに、芝生を敷こうと思っているんだ。そうすれば芝生の上に寝転がることもできていいだろ?」


「いいわね。緑がきれいで裸足で歩けるし、でも結構費用がかさむんじゃない?」


「まだ、それほど掛かっていないけど、夏に作る方はかなり掛かると思うよ。イッちゃん達にも少し手伝って貰わないといけないかな?」


「後でみんなにも相談しましょう。猫のためだから、嫌とは言わないと思うわよ。」


 こうして出来上がった遊び場はとても小さい物でしたが、僕たちはみんなでかわりばんこで中に入っては、外の景色を見たり空気を吸いながら遊んだり日向ぼっこをしたりしました。


 次にマサさんは、居間の中に猫の遊び場を作ってくれました。

 居間の端のほうに、床から天井まで届くキャットタワーという物を組み立ててくれたんです。

 何段もあって、各段には穴があったり、隠れられるところがあったりで、これは伯父さんたちにも大人気になりました。

 それぞれの段に誰が寝るかとか、一番上の段から書棚の上に上がれるので、そこには誰が登っても良いかとか決めるために、みんなでしばらくは大騒ぎになりました。

 僕は、途中に張り出している輪っかの一つの中に入って寝るのが一番お気に入りになり、伯父さんたちにお願いして、この場所を貰う事が出来ました。


 ある夜、イッちゃんとノンちゃんとマサさんとの話し合いで、毎月イッちゃん達も僕たちのために応援してくれる事になりました。

 秋からの事になるそうですが、これで少し楽になるとマサさんとトモさんが言っていました。

 病院も行かなければならないし、家族5人分と猫10匹分の食費に学校やその他色々で、お金も大変なようです。


 そんなある日、マサさんがトモさんと話していました。


「この前受けた健診で、高血圧と診断されたよ。上が170を超えているから、早めに病院で診察を受けるようにって言われたんだ。」


「170?高すぎでしょう?心臓にも負担がかかるし、頭の血管が切れても大変だよ。危ないから早く病院に行った方が良いよ。」


「ああ、そうするよ。今週中に行けると思うから、大丈夫さ。」


 一体何の話なのか判りませんが、マサさんもどこか悪いのでしょうか?

 それから少しして、マサさんがお仕事を休んで病院に行きました。

 ところが、出かけたと思ったマサさんからすぐに電話が来て、トモさんも病院にタクシーで行きました。

 お昼もだいぶ過ぎてから二人で帰ってきましたが、大分疲れたようです。


「やれやれ、これからは毎日薬を飲んで、食べるものも制限付きか。それにしても、糖尿の疑いまであるなんて、まいったよ。」


「大変だけど、頑張ろうね。食事の方は色々考えてみるけど、塩分とかカロリーとか考えるのって大変なのよね。出来るかな?」


「みんなの分と分けて作るのは僕の分だけ作るのは大変だから、一度に作って、途中で僕の分を分けて味付けとかを変えるようにした方が簡単かもしれないね。宜しく頼むよ。何しろ20キロ以上体重を落とさなければならないからね。成人男性の半分のカロリーなんて、いつも空きっ腹を抱えて仕事しなければならないんだ。たまらないな。」


 好きな食べ物が食べられないなんて、僕にはとても耐えられそうにありません。

 マサさんは、それほど沢山食べる方ではないのですが、食べる事は大好きなのです。それでも好き嫌いはある方ですから、好きなものを食べられないのは、とても可哀想だと思います。


 それからのマサさんは、毎日朝晩薬を飲んで、食べるものは味の薄いものばかりで、量もすごく少なくなりました。

 おかげで、ご飯の時に僕が貰えるおかずが、ほんの少しだけになってしまいましたし、味も僕にとってあまり美味しくなくなりました。

 これから暑くなってくると、仕事で汗をかくから塩分が取れないのは大変だといっていましたが、こんな事が続いて大丈夫なのでしょうか?

次回、梅雨ってや~ね!

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