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ある子猫の回想  作者: 東風
1/24

0歳(春の巻)

3/25:「アヤお婆ちゃん」→「アヤお母さん」に訂正しました。

1/8:サブタイトルを変更しました。

2017年6月6日:一部修正しました。

 僕の名前は「チビ」。犬のような名前ですが、灰色系で虎縞模様の雄猫です。決して犬ではありません。

 何で猫なのに犬みたいな名前なのかは、後でゆっくりとお話しします。


 長く厳しい冬の終わったある春の日に、北国の小さなアパートの部屋に置かれたタンスの中で僕は生まれました。

 僕には雄の兄弟が二匹(灰色一匹と黒一匹)に雌の姉妹が二匹(灰色二匹)居て、僕を入れて五匹の兄弟でした。

 タンスの中は飼い主さんの子供の服がたくさん入っていて、タンスのドアが閉まっていると、暗くて静かで暖かいふかふかの寝床でした。


 僕が産まれた時、このアパートには飼い主さんの一家(お父さんの「マサさん」、お母さんの「トモさん」に「いっちゃん、のんちゃん」という女の子二人と「ゆきくん」という男の子)五人が住んでいました。

 寝床にしているタンスは男の子のゆきくんの物でした。

 僕たちのお母さんは、マサさん達に無断でタンスの中を寝床にして僕たちを産んでしまったので、ゆきくんの服をとても汚してしまい、マサさん達を困らせてしまいました。

 そこでいっちゃんとのんちゃんが近くのマーケットから空き箱を貰ってきて、それを二個上下に合わせて新しい寝床を作ってくれました。

 箱には、入り口が一つだけ開いていて、出来るだけ静かで暗くなるように、カーテンが付けられていました。

 この箱は、ゆきくんの机の下に置かれて、僕たちはタンスの中から、この箱の中に移されました。


 まだ紹介していませんでしたが、僕たちのお母さんは「ミミ」という名前の全身灰色で毛の長い猫です。とても美猫ですが、ひどい悪声で、まるでカラスの声のようだとトモさんが言っていました。

 お母さんのお母さん(「アヤネ」という名前で、こちらも全身灰色です。いつもアヤお母さんと呼んでいます。)が産んだ雌猫です。

 この頃、アヤお母さんの他に雌猫で生きていたのはミミお母さんと、ミミお母さんの妹の「ゲンキ」叔母さんの二匹だけだったようです。


 ここで、ついでにこのアパートに住んでいる、アヤお母さんの子供達を紹介しておきます。

 僕が産まれた時、このアパートには、ミミお母さんの他に七匹の猫が住んでいました。

 みんなアヤお母さんの子供です。

 そのうち中でも一番大きな雄猫が僕たちのお父さんです。

 「マックス」という名前の灰色の雉虎縞の雄猫で、名前はゆきくんが大好きな新幹線から採ったそうです。

 次が、マックスお父さんと同じ歳のトマト伯父さん。全身灰色で胸に白いマークがあります。マックスお父さんと同じくらい大きな猫で、マックスお父さんとはとても仲良しです。

 マックスお父さんはゆきくんの猫で、トマト伯父さんはトモさんの猫です。

 次に虎縞のハチ伯父さんと全身真っ黒のクロ伯父さんです。

 体はマックスお父さん達より、二回りくらい小さいのですが、とてもすばしっこい伯父さん達です。

 ハチ伯父さんはいっちゃんの猫で、クロ伯父さんはのんちゃんの猫です。

 それから、トマト叔父さんにそっくりなネズミ叔父さん。ミミお母さんの弟で、ゆきくんの猫です。

 見た目はトマト伯父さんとそっくりなので、よくマサさん達に間違われています。

 ゲンキ叔母さんはミミお母さんの妹で、のんちゃんの猫です。

 ゲンキ叔母さんは名前の通りとても元気で、マサさん達に雄猫と間違われていたそうです。

 ちなみに、アヤお母さんとミミお母さんはトモさんの猫で、ここにミミお母さんから産まれた僕たち5匹と、同じ頃にアヤお母さんから産まれた二匹の猫(本当は四匹産まれたけれど、産まれてすぐに二匹死んでしまったらしい。)が入って合計十四匹ですが、この時はまだ僕たち産まれたばかりの子猫には、名前も飼い主も決まっていませんでした。


 こんな状況で僕たちはタンスの中から箱の中に引っ越ししたわけです。

 この頃、僕は産まれたばかりで解らなかったのですが、何故か、ミミお母さんは、僕たちがいくら呼んでもそばに来てくれませんでした。

 まだ二歳になったばかりのミミお母さんには、僕たちは初めて産んだ子供で、子育てなんかどうしたらいいのか解らなかったのかもしれません。

 ミミお母さんは泣いている僕たちをほったらかしにして箱から出てどこかに行ってしまい、全然おっぱいをくれませんでしたから、いつも僕たち兄弟はお腹をすかせていました。

 マサさん達は、ミミお母さんが箱から出て行くたびに連れ戻して、箱の中に入れてくれたし、時にはミミお母さんを押さえつけて、僕たちにおっぱいを吸わせようとしたりしたけれど、手を離せば、ミミお母さんはすぐに出て行ってしまうので、結局僕たちはいつもお腹をすかせて泣いていることになりました。

 そのうちに、いつの間にか僕の横で泣いていた兄弟二匹の声が聞こえなくなってしまいました。

 みんなで寄り添って寝ていたけど、兄弟の体が、だんだん冷たくなっていった事を覚えています。

 マサさんは動かなくなった兄弟を箱から出して、どこかに連れて行ったけど、それでもミミお母さんは全然気にしないで、今度は残った二匹の姉妹を咥えてはどこかに連れて行くようになりました。

 少し大きくなってから伯父さんたちに聞いたけれど、ちょうど僕たちが生まれた頃にアヤお母さんも子供を産んでいて、その中にミミお母さんにそっくりな雌猫が居たので、ミミお母さんはその子と自分の二匹の子供を取り替えてほしくて、一生懸命アヤお母さんのところに運んでいたらしいのです。

 アヤお母さんは言うことを聞いてくれなかったそうですが、どちらにしても、僕一匹はミミお母さんからは完全に見捨てられていました。

 僕は、箱の中でいつも一匹でお腹をすかせて、声も出せずに震えていました。


 連れて行かれた姉妹は、少しするとマサさん達に戻されるけど、すぐにまたミミお母さんが咥えて連れて行っての繰り返しでした。

 何度も、そんなことを繰り返して、そのうち、その姉妹の声も聞こえなくなって、箱の中に帰ってこなくなり、僕の傍には誰も居なくなってしまいました。

 結局、僕の兄弟達は、誰も名前をつけてもらえないままで、どこか遠いところに逝ってしまったのです。


 暖かいはずの箱の中が、暗くて寒くて、お腹がすいて、声も出なくなってきて、僕ももうだめかと思った頃、マサさんが僕を箱の中から出してくれて、トモさんがタオルにくるんで暖かいミルクを飲ませてくれました。

 マサさんは、もう誰も残っていないだろうと思い、箱を片付けるつもりだったようです。

 そのために、箱から寝床の毛布などを出していたら、まだ中にいた僕を見つけたのだそうです。


「トモさん。まだ子猫が残っていたよ。まだ生きているよ!!」

「まだ居たの?ちっとも知らなかったわ。可哀想に。」

「だいぶ弱っているようだね。ミミがちっともおっぱいをあげないから。」

「前に使った、子猫用のほ乳瓶があったはずだから、飲ませてみましょうか?」


 マサさんがほ乳瓶を探してくれて、温かいミルクを作ってくれました。

 ミルクはとっても美味しかったけど、ほ乳瓶の乳首からうまく飲めなくて、少しずつ少しずつ時間をかけて飲ませてもらいました。

それから何日かすると、トモさんはほ乳瓶を持っているのが大変だと言って、小さな台にほ乳瓶を横向きに乗せて、僕が吸い付ける高さに乳首をあわせ、後は僕が一匹で飲めるようにしてくれました。

 トモさんは体が弱かったので、朝も布団からなかなか起きてくることが出来ず、日中も、横になっていることが多かったのです。

 だから、トモさんががんばってミルクを作ってくれると、僕は一匹で、ほ乳瓶の乳首に吸い付いて、一生懸命ミルクを飲むようにしました。


 ミルクの他にも、時々、マサさん達は僕をアヤお母さんのところに連れて行って、アヤお母さんのところの子猫たちと一緒におっぱいを飲めるようしてくれました。


「アヤネ、この子にもおっぱいを飲ませてあげてくれよ。おまえの孫なんだから。」


 と言って、アヤお母さんの子猫たちがおっぱいを貰っているところに僕を入れました。

 アヤお母さんは、子供が大好きなお母さんで、他の子猫たちと一緒におっぱいを飲ませてくれたので、トモさんに貰うミルクと合わせて、お腹いっぱいになることが出来ました。

 もうお腹がすいて悲しくなることも、寒くて震えることもなくなったのでした。

何とか続きを書いています。もう少ししたらアップできると思います。

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