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永遠の召喚師  作者: 上野 理宇市
第1章 兄妹 
1/1

プロローグ

オリジナル処女作です。

どうぞよろしくお願いします。

「……お兄ちゃん…どこ行く?」


 星空の下、隣を歩く俺に一人の少女の声がかけられる。

 横を見るとただ前を見ながら無表情でいる少女がいる。


「エリスが行きたい所でいいよ」


 軽く撫でながら言うと少女は目を細めて気持ち良さそうにしていた。

 エリス・アルカディア。それがこの少女、俺の妹の名だ。年は14歳、この年代にしてはかなり小柄な140センチほどしかなく勿論、胸はペッタンコ。白く長く細く柔らかい…まさにシルクのような髪をツインテールにし、くりっとした大きい目に金色の瞳を持つ世界で最も可愛らしいといっても過言じゃない自慢の妹だ。欲を言えば年相応に笑顔を振りまいて欲しいところだな。


「……お墓参り…行く」


 エリスはぼそりとしかし意思のこもった声で言う。

 お墓参り。俺が深い森の中に墓を作り、ついでに簡素な小屋も作ったことは記憶に新しい。そろそろ1年が経つころだろうか?


「バレないように行かないとな」


 俺はそう言ってエリスの髪を隠すようにつばが広いウィッチハットを被せる。顔まで隠すほどあるその帽子は明らかにエリスには大きい。


「……嫌」

「文句垂れるな。見つかったら厄介だろ?」

「……別にいい」


 エリスは帽子を被るのを抵抗する。服装には(こだわ)りがあるらしい。

 顔を隠すのに最適なウィッチハットを選んだのだが、嫌だったらしく翡翠(ひすい)色のリボンでアレンジしたり、ウィッチハットなんだからと黒のローブを持っていくとそのまま放り投げられ、いつの間にか白と黒が基調のレースやフリルが多く付いた可愛らしい服を着ていた。

 男の俺には服のことはよくわからないのだが、エリスの唯一といっていい年相応の行動なので嬉しくもある。それに可愛いし。


「はぁ…国境に近づいたら被れよ」

「……うん」


 少し口調が弾んでいる。そんなに嫌なのか?


「……お墓参り…お墓参り」


 エリスは繰り返し言いながら歩く。墓参りに行くのを楽しみにする少女はそういないと思うんだが…


「……お墓参り…お墓参り……お兄ちゃんのお墓参り」




 †††




 森を()き分けながら奥に進んでいく。エリスはずっと不機嫌だ。

 まぁ、あの服装はこの森の中では動きにくいだろうし、汚れも付くだろうから仕方ないかもしれない。


「……まだ?」

「もうすぐだ」


 エリスの急かす声に答える。

 あの岩があったんだからそろそろのはず…思ったとおり開けた土地が見えてきた。


「着いたぞ」


 月明かりを浴びる小さな小屋と十字架が見えた。目的地に到着だ。


「……お帰り…お兄ちゃん」


 エリスの声にどう反応したら良いか迷う。そもそもお帰りでいいのか?


 墓の前に立つ。墓標に刻まれている文字は"Ares Arcadia"




「……汚い…寝れない」


 小屋のほうからエリスが出てきた。

 汚い、ね。1年も放置してたんだから当たり前だ。


「……水…風…火」


 エリスが杖をかざしそう唱えると3つの魔方陣が展開され、光とともに精霊が現れる。

 召喚魔法。本来ならば長ったらしい詠唱をし、精霊を使役する魔法だ。


「……掃除」

「「「はぁ…」」」


 ため息と共に精霊による大掃除が開始された。エリスは森の中で採ったリンゴをかじり始める。晩御飯らしい。


「……どうしたの?」


 エリスは俺の視線が気になったようだ。


「いや、流石はエリスだなってな。詠唱もなしに最高位精霊の召喚か」

「……ありがとう」


 エリスはどうやら照れているらしい。実際は呆れから来た言葉なんだが…

 現在、鋭意清掃中の御三方。実は水の最高位精霊のウンディーネと風の最高位精霊のシルフ、そして火の最高位精霊のイフリートである。

 どこに最高位精霊を使って掃除する奴がいるのか。まぁ、目の前にいる可愛らしいのがそうなんだが…1年間の成果をこんな形で披露されてもな…


「……もう…寝る……明日…お参り」


 気付くと既に掃除は終わっていたみたいだ。心の中で精霊に礼をする。ついでに誤る。特に意味はないがそうしなきゃいけない気がする。

 

 エリスは手早く服を脱ぎ下着姿になると小さな音を立ててベッドに倒れこんだ。


「……んーんー」


 エリスは体をよじらせながら猫のような声を出しベッドの片端による。見ていて癒される。

 左に寄ったエリスは空いている右側を2回軽く叩いて俺の方を見ていた。隣に来い、と言ってるみたいだ。


「俺は寝なくてもいいんだけどな」

「……ぶー」


 機嫌を損ねるわけには行かないから大人しくベッドの右側に入り込み素直に抱き枕になった。


「おやすみ、エリス」

「……おやすみ」




 しばらくすると小さい寝息が聞こえてくる。俺の腕枕で眠るエリスはあどけない表情だ。流石に寝るときは無表情ではない。

 虫の声、蛙の声、梟の声、エリスの寝息。静寂な闇の世界にいても俺に眠気は訪れない。




 寝る必要がないのだから…




 明日、日が上るのは何時間後か…普段エリスは10時間ほどの睡眠時間を取る。今日は少し夜更かしだったからわからないがまだかなりあるだろう。

 今日は何を考えようか。俺はエリスと寝るときは寝顔を見ているか考え事をしているか、そして見張りをしているかのどれかだ。特に見張りは重要。エリスに何かあったら死んでも死に切れない、なんてな…

 今日は久しぶりに俺のことを思い出してみるか。折角、ここに来たんだし…いつもはエリスのことばっかだしな。

 俺は記憶を辿りながら思考の海に沈んでいった。




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