8話 「圧倒的な実力」
※誤字が多かったため添削させて頂きました
少し表現の違うところがあるかもしれないです
既に何体のスクリムシリを殺しただろうか…
合間合間で指示を出しながら騎士団員に1体ずつ確実にスクリムシリを殺させる。
今のところはなんの問題もなく、迫ってくるスクリムシリ達を殺せてはいる。
だが、なにか違和感がある…。拭いきれぬ何か。
ディシの周りにはスクリムシリ 解 の死体が2体転がっており、それらの血が足元に流れる。
ディシが守る東では犠牲者は出ておらず、ほぼ完璧に近い防衛を見せていた。
ナルバンは北経由で西に向かっており、既に東北東を過ぎている頃だろう…
未だ犠牲者が出ていないこの状況、油断してしまう状況でもあるがディシはより警戒を高める。
(スクリムシリがいつもより…弱い?いや、そんなことは無い。完璧な守りを見せているとはいえ騎士団員も余裕という訳では無い)
「ディシ様!スクリムシリ 解 ほどの巨大四足歩行の獣型が3体現れました!」
違和感を拭いきれずに スクリムシリの群れの方を見る。
30メートルほどだろうか。3体がこちらに向かってきているのを目視で確認できる。
距離としては1キロほどだろうか…そのスクリムシリ3体に続くように 予 以下のスクリムシリの群れがこちらに向かってきている。
相変わらずこいつらはどこから湧いて出てきているのだろうか。
俺は辺りを見回す。
怪我人はいるけども死者は出ていない。
今現在でスクリムシリと戦っている騎士団員は問題なさそうだ。
俺が今すべきなのは 解 を始末すること と 違和感の正体を掴むこと。
両手に持っている剣の片方をクルッと逆手持ちに持ち替える。
既に 解 のスクリムシリの一体は500メートルほどに迫っており、騎士団員に念の為100メートルの避難指示を出す。
1体のスクリムシリがシンプルに突進してくる。
図体がでかい割にまぁまぁ早い速度だ。この突進の勢いを利用して細切りにしても良いが後ろに避難した団員達に肉片が飛んでいくかもしれない。
短剣で被害が出ないほど細かく斬ることは流石に出来ない。
普通の剣は使えない訳では無いがどうも扱いづらいと感じてしまう。
どう止めようかと考える暇もなくスクリムシリはこちらに突進してきている。
俺は天恵を足に集中させ、思いっきり踏み込む。
踏み込んだ地面が砕けるほどの勢いでスクリムシリに走る。
スクリムシリとの距離が30メートルほどになった時に
スクリムシリの顔の高さまで飛び、左手に持っていた短剣を額に突きつける。
先程までの勢いがピタリと無くなりその場で停止するスクリムシリ。
俺は額から短剣を抜き、地面に降りる。
そして、残り2体の位置を確認する。
俺が短剣に付着した血を振り払ったと同時にスクリムシリの顔が真正面から潰れるように首の付け根まで血を吹き出しながら原型を留めないほどに跡形もなくなる。辺りには肉片やら血の雨が降り注ぐ。
(単純な話…向こうが猛スピードで突進してくるならそれ以上のスピードと威力をぶつければ相殺、もしくは押し返すことが出来る。肉片も団員たちの方へ飛ぶこともない。)
「確かに…普通に天恵を収束させた攻撃よりかは対処が難しいかもしれないが。俺でなければの話だ」
残り2体のスクリムシリは約300メートル先で止まっている。
2体が同時に天恵を収束させ、攻撃を放つ。
それは俺に向けられたものではなく団員達に向けられたものだった。
(あれを対処できるとしたら高階級騎士団員のみっ…当たれば即死。最善を選ぶ!)
俺は左右に放たれた攻撃に向けて両手に持っていた短剣をそれぞれに向けて投げる。
短剣は攻撃の中心を貫きその場で爆散する。
爆発の衝撃で地面がえぐれて砂埃がたつ。
腰に着けていた長剣を抜き、2体の巨大なスクリムシリに向かって走る。
(まずは右…)
顔の下の部分で直角に曲がるようにジャンプをし、首に剣を通す。
首と一緒に落下をする前にスクリムシリの顔を踏み台としてもう1体の方へと飛び、同様に首を容易く切り落とす。
「いくら図体がでかかろうと左右の動きに疎ければ簡単に殺せる」
2体の首のないスクリムシリの正面に着地をする。
切断された首からは血が吹き出し、頭が地面に落ちると先程と同様に砂埃が舞う。
「流石です!ディシ様!」
「スクリムシリ 解 3体ををあっさりと…凄すぎる」
「油断するな!予 以下のスクリムシリが接近している!連携して殺せ!」
「了解!」
3体殺したからといって終わりでは無い。油断は命取りでしか無いのだ。
先程の違和感はなんなのかが分かった。
以前、スタシアと遭遇した人型のスクリムシリがこのメルバル総戦で現れるのでは ということを考えていた。
それが今では根拠の無い確信になっている。
いや、既にもうどこかの方角で現れているのではないか…?
あいつを相手にできるのは守恵者かナルバンやアビスくらいだ。
しかもあいつは意思疎通もできるほどの知力もあった。そんな奴がわざわざ自分以上の実力を持つ者の場所にわざわざ行くだろうか?
(狙うとしたら…東西南北それぞれの中心の方角…)
〜〜北西〜〜
「このままこの陣形を崩さないように!」
北西には聖者でも4人の実力者の1人である
イナ・ドンレルが指揮を取っていた。
ドンレルは聖者の中では2番目の実力者であり、一時期はゼレヌスと同等の実力者であった。
「やはりナ…ここに守恵者はいなイ…ならば殺すのミ」
「!?いつの間に!」
(気配が全く無かった…10メートル程の距離にいながら天恵を感知出来なかった!?いや、それよりもこいつは…結命の意思者様と信愛の意思者様が遭遇した…人型のスクリムシリか?聞いていた容姿は一致している。言葉も話している。)
ドンレルは感じ取っていた。目の前の圧倒的な力に。
自分はこいつを倒せるのか?と何度も頭を過ぎる。
恐らくだが、高階級騎士団員数名でも敵わない…。
この場の指揮は自分であり、この場にいる者の中で自分が唯一対等にやり合えるだろう…。と
(ならば…)
「全力で叩きのめすのみ!」
ドンレルの周辺に天恵で構築した100を超える鋭い三角錐型の物体が浮かぶ。
合図するかのように右腕を目の前にいる人型のスクリムシリに向けて振った瞬間、
自身が構築し放った攻撃はおろか、前に振った右腕が無くなっていた。
時間差で右肩にとてつもない痛みとともに血が吹き出す。
痛みと焦りで汗が止まらない。
(これほど…これほどの実力差が…)
「ドンレル様!みんな陣形を立て直せ!人型のスクリムシリを迎え撃つぞ!」
(だ、ダメだ…お前達じゃ…敵わない。)
「に、逃げ…ろ!」
ドンレルは左手で右肩を抑えながら今出せる最大限の指示を出そうとするが上手く声が出せない。
気がつくと人型はすぐ目の前に立っていた。
片手でドンレルの首を掴み持ち上げる。
「は、なせっ!」
「お前が1番この中では強いのカ。やはり、守恵者とそれ未満の騎士団員では差があるみたいだナ。
あのお方が言っていた通りダ」
ドンレルは最後の抵抗で天恵を収束させてゼロ距離で攻撃をする…が、当然のように無傷でさらに首を絞める力が強くなる。
「お前はもういらなイ。死ネ」
人型はドンレルを地面に思いっきり叩きつける。
何度も何度も、地面はその衝撃でも割れない。
人型が無慈悲にも地面を天恵によって丈夫にしているからだ。
叩きつけるのを辞める頃にはドンレルは既に意識などなく投げ捨てられてもピクリとも動かなくなっていた。
「う、嘘だ…ドンレル様が…」
「お前達も今からこいつと同じ所に送ってやル」
人型は指揮官がやられて絶望している騎士団に向けて攻撃を放とうとする…。
「!!…なんダ今の力ハ」
人型は攻撃を放つのを辞めると騎士団たちがいる方向とは別方向を見る。
「今のは守恵者では無イ…。だが、強大な力…。あの方の命令は守恵者以外の脅威になりうる者の排除…。」
人型は北方面を向き、棒立ちをする。
だが、瞬きする間にいつの間にかその場から姿を消していた。
〜〜北北西〜〜
アビスとの修行の成果がとても感じられる。
初のスクリムシリの討伐。
以前のトラウマから体が動かなくなるのでは無いかと懸念したが全くそんなことはなく、なんならアビスとの修行以上によく動けている気がする。
村を襲ってきたスクリムシリ 予 を殺せるほどには実力が備わっている。
普通なら 予 は騎士団が数名で倒せるくらいなので私は騎士団内でもそこそこの実力を持つということになる。
「ヨーセル…すごいな。俺なんて 数人で協力してやっと倒せるのに」
ホルトーが話しかけてくる
「ありがとう。ホルトー来るよっ!」
「あっぶな!」
ホルトーにスクリムシリ 予 が噛み付いてくるがそれを間一髪で躱し、両前足をカウンターで切り落とす。
「ヨーセル!頼んだ!」
身動きが取れなくなったスクリムシリの首を上から叩き斬る。
「良くやった!ヨーセル」
「ホルトーもね。まだまだ、来るね。キリがない」
「いつまで続くんだ。」
「ルシニエ!ホルトー!一旦引け!陣形を立て直す!」
北北西の指揮官であるカルナが指示を出す。
「ルシニエとホルトーは北西側から接近してくるスクリムシリを相手にしてくれ!」
「「了解」」
私とホルトーの連携が買われたのか2人で北北西の中でも北西よりの方でスクリムシリを迎え撃つ。
指示通り、ホルトーが身動きを止めて私がとどめを刺すという流れを繰り返していると約300メートルほど先からでも分かるほどの巨大なスクリムシリが現れる。
「ヨーセル…あいつは多分 解 だ。今からカルナさんに応援をお願いしに行ったら配置が間に合わずに無駄な犠牲を出すかもしれない。」
「うん…2人でやろう」
私は正直1人なら絶対勝てないと思ったがホルトーとは息が謎に合うためもしかしたらと考える。
「俺が、あいつのぶっとい足をできる限り切り刻んで動きを鈍らせる。とどめを刺すのは頼んだ。俺ではあの太さの首は切れない。」
「分かった。気をつけて」
ホルトーは天恵によって身体強化をして素早く
スクリムシリ 解 の右足のすぐそばまで近づくと同時に乱撃の如く剣で右足に攻撃を浴びせる。
スクリムシリは右足を持ち上げると思いっきり地面を踏みつける。
その衝撃は辺りを揺らすほどだった。
ホルトーの立っている場所は地割れを起こしてバランスをとるのがやっとだった。
その隙をつかれ、スクリムシリは天恵を収束させてホルトーの真上から放つ。
放たれた天恵は地割れにそって爆発をし、ホルトーがいた場所は大きく削れている。
しかしその場にはホルトーの姿は無くなっていた
「はぁ、はぁ…危なかった…」
「い、生きてる…ヨーセルっ、助かった!」
「怪我は?」
「だ、大丈夫だ…」
「警戒を緩めないで!あの爆発に巻き込まれる位置にいたはずなのにあいつは無傷だから」
「そうだな。脚を集中的に狙ったのにかすり傷程度の傷しか出来なかった。皮膚自体は硬く無かったが皮膚の下がでかい岩のように硬い。」
ホルトーの戦闘を見ていたが決して殺傷能力が低い訳では無い。なんなら技の鋭さだけで言ったらそれなりに磨かれていた。
それを持ってしてもなお、かすり傷程度しか付けられないとなるとこいつを倒すのはかなり骨が折れる。
「ホルトー、お願いがあるの。」
「なんだ?」
「私がやつの動きを必ず止めるから、あいつの目を潰して欲しい」
スクリムシリにも当然目がありそれが人間と同じ組織構成であれば、目は胴体ほど固くはなく視覚を奪えるというのは大きなアドバンテージになるはずだ。
(あとはホルトー次第…失敗すれば死ぬ可能性だってある。)
私はホルトーの方に目を向ける。
ホルトーの目は真っ直ぐスクリムシリに向けられており決心が着いた顔をしている。
「分かった。視覚を奪う、そのことに専念するよ」
「ありがとう」
爆発による砂埃が晴れて、正面には無傷のスクリムシリ 解 が立っている。
スクリムシリが大きく口を開けて雄叫びのようなものをあげると同時にヨーセルとホルトーは動き出す。
(私が脚の動きを止めたとしても顔はまだ動かせる…、その時にホルトーの不意打ちに反応されてしまったら元も子もない。
なら私が最大限注意を引き付ける!)
真正面からスクリムシリに攻撃を仕掛ける。
先程のように巨大な脚を上にあげて、勢いよく地面を踏みつける。地割れが起きるが私はその地割れさえも素早く動き注意を引きつけることに利用する。
そして、すぐ目の前には右脚。
私は天恵を腕に極限まで集中させて強化し、剣を右足に向かって振る。
スクリムシリの太い足の半分以上までは切れたが全ては切れていない…
(このままだとすぐに治癒される!追撃を…)
追撃を加えようとすると立ちくらみが起きる。
腕も足も鉛のように重く、剣を握る握力すら無くなりそうだ。
天恵を急に集中させすぎたことにより、体が負荷に耐えられなくなってしまった。
それに加えて天恵を集中させることに気を取られすぎてしまい、天恵を多く消費してしまった。
(これ以上天恵を使ったらリスクが大きい、動けない可能性があるっ…でも!)
私は鉛のように重くなった体が倒れそうになるのを無理やり片足を前に出して踏ん張り、残り少ない天恵を使って、剣をもう一度振る。
今度は右前脚とスクリムシリの胴体は切断され、バランスを崩す、スクリムシリはこちら側に倒れる。
ギリギリ私は回避をするがすぐ目の前にはスクリムシリの顔があり、こちらに大きく口を開けて顔を近づけてくる。
が、ホルトーがすぐ近くの木の上から飛び降り、その勢いのまま剣を突き立てながらスクリムシリの目を刺す。
すぐ抜き、反対側の目も刺し、抜く時に剣を左右に動かしながら傷を増やして抜く。
スクリムシリは両目から血を吹き出して視覚を失なったことによって錯乱状態になり暴れ出す。
私は巻き込まれる寸前でホルトーに抱えられて、50メートルほど離れたところで下ろされる。
「大丈夫か?」
「うん…でも、しばらく動けないかも」
「そうか。あいつはまだ死んでは無いな」
「治癒される前に…殺さないと…」
「俺がトドメをさしてくる。ここで安静にしておくんだ」
「だめ!ホルトーお願い!危険だからやめて!」
私は必死に止めようとするが体が重い。
ホルトーは私の声を聞かずに、錯乱して暴れるスクリムシリに向かっていく。
ホルトーの実力では倒せない…死なないで…お願い!
ホルトーは木々を利用して暴れるスクリムシリの背中に飛び乗ると首筋のところに立つ。
剣を構えた状態で少し静止する…。
(まさか!?)
「ホルトー!だめ!お願いやめて!」
私はホルトーの意図を理解した。生命力である天恵を全て使い、あいつの首を切ろうとしているのだ。
当然、天恵が無くなれば 死ぬ ということだ。
ホルトーは剣を振り上げた状態から一気に振り下ろす。
先程とは比べ物にならないほどの威力でスクリムシリの太い首と胴体が離れる。
踏ん張りが効かなくなったホルトーはスクリムシリの暴れてた勢いによってこちらまで飛ばされてくる。
私は這いつくばりながら動かずに倒れてるホルトーまで近づく。
(心臓は…え、動いてる…)
「よ、ヨーセル…言っただろ?弟たちのためにまだ…死ねないって。」
ホルトーは少し口角を上げながら言う。
「よ、良かったっ!良かったよ…、」
「や、やつは?」
私はスクリムシリの方をちらっと見てすぐにホルトーに視線を戻す。
「大丈夫…死んでる。もう動いてないよ」
私は達成感と共にまだまだ自分が弱いという悲壮感にやられる。
予 を倒して満足していた先程の自分に呆れてしまう。
解 はホルトーがいなければ確実に倒せなかった。
それほどまでに強かった。スクリムシリの強さの段階はあくまで目印かと思っていたが強さが段違いだった。
私は安心してもう一度スクリムシリの死体に目をやると、人が死体に手を添えていた。
いや、人?服は着ていないし、肌色が人ではなかった。
後ろを向いていて顔は見えないがそれは間違いなく、
人型の”何か”ではあった。
「やはり、先程の力は 解 を殺せるほどの力だナ…
守恵者でもない人間2人が倒すとは脅威になりうるナ」
何やらブツブツと言っている。
いや、そんなことよりも全く気配を感じなかった。
天恵を感じ取るのに天恵は使用しない。そのため天恵があろうが無かろうが近づけば気づける。
つまり、気づけないとなると…守恵者の人達と同レベルという事になる。
私は限界の体を無理やり動かし、剣を持つ。
まだ体は重く、剣の先は地面に着いたままになってしまう。
「何者だ!」
「んー、あれ、1人女ダ。見たことないナ、新入団員なのかナ。1人死にかけだシ」
「ちくしょうっ、次から次へと!」
ホルトーが剣を杖代わりに立ち上がる。
「ホルトー!ほぼ天恵が残ってないでしょ?それなのに動いたら本当に死んじゃうよ!」
「大丈夫…、それより、あいつはなんなんだ」
「分からない…けど、得体の知れない何か」
人型の”何か”はやっとこちら側に振り向く。
訂正。こいつは人型のスクリムシリだ。
すぐに分かった。こいつはディシが言っていた人型で私たちの言葉を話すスクリムシリ。
ディシの話通りならば… 破 という事になる。
解 のひとつ上…。予 と 解 の強さはまるで違った。
解 で私とホルトーはボロボロになってしまったのにそれ以上に強いスクリムシリ相手に勝てる気がしなかった。
ホルトーは今目の前にいる人型のスクリムシリが 破 であることに気づいていないようだった。
教えようと思った瞬間、ホルトーは目の前のスクリムシリに剣を振るう。
「まっ…!!」
私は止めようとしたが、既に遅かった。
ホルトーは剣を振ることなく、心臓を手で貫かれていた。
持っていた剣はその場に落ち、腕も力が無くなったように重力にしたがって下にだらんと下がる。
スクリムシリが心臓から手を抜くと、ホルトーはその場で倒れる。
「嘘…嘘だっ!嘘だよ…ホルトー!!」
「あー、うるさイ。君も殺すから安心してヨ」
スクリムシリは私に向かって歩いてくる。
私が剣を持ち上げて今ある力で振る。
「すごいネ。天恵がほぼ残ってない状態でその力。
脅威でしかないネ。」
スクリムシリは剣をサッと容易く避け、脇腹を思いっきり蹴飛ばされる。
近くの木まで吹き飛び、木にぶつかった衝撃で右腕と肋が数本折れた。もう、体が動かない。
「本当にすごいネ、君。今の蹴りは確実に胴体を分ける蹴りだったと思うけド。ん、あー、剣で防いだのカ、よく反応したネ。」
折れた剣を握る力さえない。
喋りながら私に近づいてくる。
スクリムシリは私の首を締め付けながら持ち上げる。
「正直、君がこのまま生き残っていたら相当な実力者になっていたかもネ。でも残念、君はここで死ぬヨ」
感情が籠っていないが流暢な喋り。
だんだん、私の首を絞める力が強くなってくる。
折れていない方の手でスクリムシリの手首を掴むがビクともしない。
(ごめんなさい…皆、、)
諦めようとした時、首を絞める力が弱まる、というか手が首から離れる。
正確には、私の首を絞めていたスクリムシリの腕が切断された。
意識が朦朧とする私に誰かが話しかけいる。
聞き覚えがある声…
「ヨーセルさん!意識をしっかり!」
「ミ、リィノさん…」
「遅れてしまい申し訳ございません。もう大丈夫です。」
私はその言葉を聞き、状況が理解できないながら涙が溢れてくる。
助けが来た安心感とホルトーを守れなかった辛さが込み上げてきた。
「ミリィノさん…あいつは…」
「分かっています。あとは任せてください」
ミリィノに木の方まで運んでもらい、そこで安静にしとくように言われる。
「困ったナ…守恵者が来ちゃったカ。まぁ、脅威なのは変わらないシ。少しくらいなら戦っても良いよネ」
「許せない…。自分よりも弱い者を狙う…クソ野郎め」
ミリィノが今までに聞いた事のないような口調になる。
私は特別試験でミリィノと戦った時から勘違いしていた。
これが、これが守恵者なんだと、今理解した。
私に向けられている訳でもないのに皮膚にヒリヒリと刺すような殺意。
ミリィノは両手を前に出して、拳を握ると光が現れる
腕を広げると、光は横に伸びていきやがて剣の形となり実物として顕現する。
以前、私と戦った時と同様かそれ以上の良質な剣。
「ここからは私が相手だ」
ヨーセルの本格的な戦闘シーンは初ですね!
解 の強さを再認識しましたね…
読んで頂きありがとうございます!
戦闘シーンのキャラの動きを分かりやすく書くようにしているのですが分かりづらいところが出てきたらその文面からご自身で判断した動きの認識をしてもらって大丈夫です!




