表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使とサイナス  作者: 七数
4章 【解】
89/90

83話 「旧友の証」

「お待たせ!ヨーセル!行こっか!」


「う、うん」


ヨーセルはスタシアの明るい態度に動揺を隠しきれないまま後を着いていく。

ホールディングスでの会議があると聞いていたため、終わるまでホールディングスの西側の入口で待っていた。


恐らくだがその会議の内容はアビス師匠が亡くなったことによっての今後のユーランシーの動き方などを話し合うと言った内容だろう。

人の死が絡んでいる以上、暗く重い空気になってしまうのは避けられないことだ。

そのため、スタシアにどのような言葉をかけようかを悩んでいたがスタシアはそんな私の予想と反していつものような明るい話し方だった。


スタシアの後に着いていくと前に私が他の騎士団員の人と食事をした酒場に来た。

今まではあまり守恵者以外の騎士団員と関わっていなかったが、最近になって話しかけられることが増えたのだ。

そのほとんどが食事の誘いだったり、ちょっとした手合わせだったりした。

どうしていきなり誘いをくれるようになったのかは分からないが、個人的には他の兵と仲良くできるのは嬉しいことのため出来るだけその誘いに乗るようにしていた。


「えー!それ多分ヨーセルのこと狙ってるんだよ!」


店に入ってからそのことをスタシアに話すとそんな突拍子もないことを言われた。


「狙ってる…?手合わせってこと?」


「違うよ!恋愛的な意味で!」


何言ってるんだこの人…


「そんな訳ないよ…だってほとんど私と関わったことない人達だよ?

きっと他の騎士団員とコミュニケーションを取って任務で連携を取りやすくするためとかだよ」


「んーん!違うね!ヨーセルは可愛いし胸デカイし頭良いし!」


「な、いきなり何言い出すのさ…」


「きっと騎士団には女性が少ないからそういう欲求だったり、結婚のこととかを考える機会が少ないんだと思うよ。

だからヨーセルは狙われてる」


「え、えぇ。そんなこと言ったらミリィノさんやスタシアだって、」


「私はほら、まぁ、こんな容姿だし?

ミリィノちゃん…まぁ、ミリィノちゃんにアピールなんて愚かなことする人は騎士団内にはいないと思うよ。

怖い後ろ盾がいるし…」


「あぁ、アレルさんね。

確かにあの方がミリィノさんと仲がいいのは皆知っている事だもんね。」


「そうそう。ミリィノちゃんをお酒の場に誘うだけでも多分相当な根性ないと無理だと思うよ。

そもそもミリィノちゃん自体がガード激硬だからねぇ」


「そうなんだ。

そう考えると私って調度良いところに現れた都合の良い女みたいになってる…」


「多分…というか確実にヨーセルは私とミリィノちゃんが守るね…」


「ほんと?」


「もちろん!」


「ならいっか」


「そんなことより!昨日聞いたけどな〜んか最近夜にミリィノちゃんの屋敷抜け出してどこか行ってるらしいじゃん!

もしかして…男?」


「ち、違うよ!最近行き始めて、行きつけになりつつあるバーがあるんだ。

そこの人達…凄く面白いの。

他国からの冒険者が結構多いんだけどそんな中でも

アンバーって人が…あ、ごめんね。

話しすぎだよね」


「んーん!ヨーセルがそんなに心許せる人がいるなんて少し興味湧いちゃうかも!

私も行ってみようかな?」


「うん!一緒に行こ!」


(そういえば…スタシアとこんな風に話すのなんて久しぶりだ。

やっぱり楽しいなぁ)


「少し御手洗に行ってくるね!飲んでて!」


「分かった」


スタシアは立ち上がり、御手洗い場へと入る。


「アンバー…なんか引っかかる。

他国の者…冒険者…目立たないバー。」


スタシアは下ろしていた髪を後ろの高めの位置で結ぶ。

サラサラとした純白の髪が綺麗に靡く。

その綺麗な髪とは対照的にスタシアの目は険しくなっており、深く息を吸ってから吐く。


「調べる必要があるね。」


そんなことを呟きながら御手洗場から出る。


「え!可愛い!」


その声のする方向にいつものように笑顔を作りながらスタシアは向かっていく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コツ…コツ…そんな音を立てながら真っ暗の空間を女が一人で歩き続ける。

歩くその先には微かな光があり、そこはとても遠いようで近いような、そんな感覚になる。

その女…ギャラリスが光の場所まで着くと自然と扉が鈍い不愉快な音を立てながらゆっくりと開く。

開いた目に入る光景はいつものような見慣れた光景であり、つまらないの と思いながらもギャラリスは巨大な円卓の周りに置かれているに椅子の一つに座る。


いつもと違うことがあるとするならば、セルシャが先に席に着いているということくらいだろう。


「珍しいわね…今までに一度でもあったかしら?

あなたが指定された時間よりも先に座っていることなんて」


「そんなことはどうでも良い。」


「イラついてるわね…まぁそれは私もなのだけどね」


「だろうな。

ジャレンが死んだのは私からしたら想定の範囲内。

だが、お前からしたら自分で見つけた優秀な者が死んだ。

それに対して怒りが溜まっているのだろう」


「そうよ。逆に聞くけどあなたは何にイラついているのかしら?

ユーランシーで現状いちばん厄介であったアビス・コーエンはジャレンが殺し、私達とユーランシーでは相当な戦力の差ができた。

不満はあるかしら?」


「なら聞くが…私がいつ。どこで。アビス・コーエンを殺せと命じた?

私が命じたのは アシュリエル・メアリーを殺せ というものだ。

たかだかしょうもない人間を一人殺した程度で図に乗るな。

相打ちなどという弱者同士の結果になんて興味はない」


「いくらあなただからと言っても許せる発言と許せない発言があるわね。

ジャレンは弱者などではないわ。訂正しなさい。

さもないと殺すわよ?」


「お前程度が私を殺せると思うなよ。」


二人が目を合わせ今にも衝突し合いそうになる。


「はぁ〜…二人ともそんなことしてる場合じゃないだろう。

しょうもない。

仲間内で殺し合いなんてどうでもいいことしないでくれよ。

それにギャラリスは君の側近の子も死んで少し焦りという気持ちがあったんだろ?

まずは落ち着きな」


ランスロットが二人の間に入り、険悪な雰囲気が和らぐ。


「チッ…。

そういえばあんた…私とジャレンが戦っている時にユーランシー内にいたわよね?」


「へぇ、そんなことに気がつく余裕があったんだ」


「当然でしょ。

最近、姿を見せないと思ったらユーランシーに行ってるとはね」


「まぁ、少し気になる人物がいるからさ」


「ルシニエ・ヨーセルか」


「セルシャも目を付けてたんだ」


「目を付けている程のことでは無いがマリオロでの件で名前を知っただけだ」


「あーあいつね。剣韻と一緒に私と戦ってたグズね。

ある程度の戦闘技術はあるようだけど大したことは無いわ」


「まぁ、そうだろうね。

彼女は今はさほどの強さは持ち合わせていないね」


「今は?どういうことかしら?」


「逆に感じないのかい?

あの子を前にすると何故か圧迫感がある。

無意識のうちに僕の中でも彼女を恐怖している。

そんな気がするね。」


「ならなんであの女に逢いに行くのよ」


「好奇心さ。ただのね」


「ふーん。

そういえばハインケルはどうしたのよ。」


「あいつは今、カルメラにいる。」


「それはまたどうしてかしら?」


「あぁ、あの件か。

ギャラリスはその時居なかったもんな。

最近カルメラでは冒険者の間で噂になっている特殊な力を宿した剣がある という件だな。」


「特殊な力?」


「その剣を対象の物に向けて振りつけるとその物の重力、運動エネルギーといった全ての物理法則を操ることが出来る」


「!?…それって、、」


「そうさ。セルシャが過去に殺した支操の意思者と同じ能力を持つ剣。

支操の意思の剣だ。」


「それを取りに…。

ユーランシーの連中は知らないのかしら?」


「どうだろうね。まぁ、でも…知らなかったとしても時間の問題だろうね」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ホールディングスの会議室…

室内には二人の男女がいた。

一人は類稀な剣の実力を持つカウセル・ミリィノ。

そしてもう一人は誰よりも長くユーランシーに仕える男。

アンジ・ディシィ…、そのディシの顔は驚愕と絶望…そして微かな希望を含んでいる。


「その…話は、、本当なの、か?」


「確かです。

天帝がユーランシーを襲撃した件から他国の内部情勢をあらかた調べ尽くした結果です。

カルメラに向かわせた騎士団兵と聖者の方達からの手紙にそう記されていました。」


「な、なら!す、すぐに!すぐに行かないと!」


「待ってください!今はただでさえ慎重に動くべき状況なんです!

守恵者、聖者、メアリー女王、各方角の貴族の方々を集めた上での話し合いをするべきです!」


「そんな暇なんである訳ないだろ!!

ジェミーの…ジェミーの!支操の意思は…ジェミーの証なんだよ!!

この事が天帝の耳にも入っているとすれば必ずあいつらは剣を取りに行く。

絶対にそんなことはさせない。」


「…分かりました。

ただ、、せめてメアリー女王と守恵者内だけの会議はしましょう。

それは譲れません」


「…分かった。ただし明日以内にしなければ俺が一人でカルメラに向かう。」


「…分かりました。

アレルとスタシアさんは早朝からの任務なので夕方頃の会議にしましょう。

このことは既にメアリー女王には伝えてあります。

招集方はこちらで済ませておくので今日は休んでください」


「…分かった。」


ディシは会議室を出る。

残されたミリィノは誰もいなくなった会議室を軽く見渡す。


(なんで…こんな時に、、)


間違いなくディシならば自分がカルメラに行くと言うだろう。

だが、天帝が動く予想がされている以上は一人で行かせることは絶対に出来ない。

だからと言って、ユーランシーから守恵者を二人にすることも出来ない。

つまりカルメラに行かなければいけないのは必然的にスタシアになるということだ。

だが、ディシがそれを受け入れてくれるかどうかはまた別の問題。

明日の会議は何としてもディシを説得しなければならない。


「アビス師匠…あなたならこんな時どうしたのですか、、」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「だぁからね!スタシアはぁ!もう少し自分をたいせつにしゅべきなのぉ!」


「うんうん!そうだね〜お水飲もうね!」


酒場では珍しいことにヨーセルがスタシアよりも先に酔いつぶれていた。

普段はあまり飲まないヨーセルだが、最近は特に辛いことが多く、ストレスを抱えていたのだろう とスタシアは予測していた。


「あいがと…。

スタシアはさ、、やりたいこととか…無いの?」


「どうしたの?いきなり」


「ヴェルファドって北と南の境目なんでしょお?

変わった物を見たとか…それ以前にスクリムシリが居なくなった後にやりたいこととかあるのかなぁって」


「やりたいことかぁ…」


スタシアは片手で酒の入ったジョッキを揺らしながら切ない目をする。


「…ごめんね、こんなこと聞くもんじゃ、」


「あるよ」


「え?」


「夢…あるよ」


「ど、どんな?」


「カルメラに行った時にね…少しの時間だけど仲良くなれた子がいたの。

その子に聞いたらね、南は北では見た事ないような凄い不思議な生き物が沢山いるんだって。

鋼鉄くらい硬い皮膚を持った空飛ぶ鳥?とか皮膚も肉も無い骨だけの状態で人間と同じように動く化け物とか、人間の姿に獣のような耳が生えた種族とか…

凄い色々な生き物がいるんだって!

凄いよね!ワクワクしちゃうよね!

だからね…私、いつか南の大陸を冒険してみたいんだ。

この目で、世界の色々な現象や生き物を見てみたい。

それが私の夢…多分叶わないんだろうけどね!」


ハハハと笑いながら一口酒を飲むスタシア。

そんな話を聞いたヨーセルの目にはさっきまでの酔いでの虚ろな目はなく、悲しそうな目だった。


「…叶えよう!」


「え?」


「必ず叶えようよ!私も協力する!

スタシアと一緒に色々な思い出を作りたい!

だから私ももっともっと頑張ってスタシアの負担を減らして…スクリムシリを全部倒して天帝も倒して、平和が訪れた後に二人で南側を一緒に冒険しよ!」


「そ、そんなこと…」


「できる!やるの!ね?」


「…っ!うんっ!約束ね!」


「うん!約束!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「計画が狂いましたね…。

支操の意思を宿った剣…少し厄介ですね、

恐らくは我々天帝に対しての…強い拒絶ですか。

さて、どうしたものですかねぇ」


カルメラにて天帝慈刑人 悪我の意思者 ハインケル・ソッズが支操の剣を為す術なく見つめていた。

その理由は明白だった。

その剣自体がユーランシーを囲む同様の結界を小さく張り巡らせており、その結界は 意思 が認めなければ入れないようになっていた。


「…守恵者が来るとアンバーは言っていましたね。

少し利用させてもらいましょうかね。」

読んで頂きありがとうございます!

4章はこれで終わりになります!

次章まで少し時間を空けますのでご了承お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ