66話 「気軽に話せる友達」
「あなたにやってもらうことは二つね!
ラットルの居場所と奴隷売買の黙認者と奴隷の売買を実際に行なっている悪徳貴族を私に教えることと私を奴隷として捕まえたことにして貴族オークションへと連れていくこと!」
「四つじゃねぇか…てか貴族オークションに?」
ゴットンは予想にもしていなかった言葉に目を大きく見開く。
「うん!私は他国からこの国の内情の調査をしに来たの!
分かっていると思うけどこの大陸で奴隷の売買をしたら極刑は免れても一生拘束されちゃう。
それくらいいけないことなのはあなたが一番理解しているよね?」
「ああ…反省している。今回の件が終わったらこの仕事から足を洗う」
「偉いね!あなたが良ければだけど罪を償いたいのならユーランシーに来てよ!
労働力が欲しかったの!
あなたの体格なら結構良い役職与えられると思うし生活も困らないと思うよ!」
「ありがたい話だぜ、スタシアの姉貴。
だがその話は今回の件を片付けてからだろ?」
「そうだったね!うっかり!」
ゴットンとスタシアは貧民街の空き家でこれからする行動についての話をしていた。
「それよりよ姉貴。あのガキはいいのか?連れ去っちまったけどよ…」
「大丈夫…あの子は多分だけど中央の城に連れていかれたんでしょ?」
「ああ、そうだが、」
「なら近いうちに私も行くことになるからその時についでに助けるよ」
「ついでって…まぁいいか。俺たちのせいだしできる限り手伝わせてくれ。」
「おーさっきまでとは見違えたね!」
「やめてくれよ姉貴…俺だって自分より圧倒的に強い奴にさっきまでの態度取り続けられねぇよ。
というかそれを言うなら姉貴の方だって俺を信用しすぎじゃねぇか?」
「え?ダメだった?」
「いや、ダメって言うかよぉ、なんで信用してくれてるのかなって気になたから…」
「だって私の事裏切れないでしょ?
裏切ったら死ぬんだもん!裏切れるわけないよ!だから信用してる!」
「ハッハッハ!おっかねぇ嬢ちゃんだぜ姉貴は!
まぁたしかにその通りだしな!
丁度いい機会だよ…汚ぇ金で食う飯は美味しくなかったしよ…いつの間にかこの国で食う飯が美味しく感じられなくなってな。
足洗って…綺麗な金で綺麗なもん食うぜ。
そんためならあんたに力貸してやりてぇんだ。
こう見えて結構顔は広くて共通の知り合いが多いんでな。
オークションがあるのは明日の夜の中央城西側に位置する倉庫の地下だ。」
「倉庫の地下?随分と貧相な場所なんだね」
「奴隷売買は犯罪だ…それに加えて国内でも奴隷売買を行なっている貴族の方が少数だ。
だがら目立たない場所で行なわれている。」
「なるほどぉ〜。
そこに潜入は出来そうなのかな?」
「問題ないと思うぜ姉貴。俺はもとより明日のオークションには裏方で出席するからな。」
「なら話は早いね!私を奴隷として連れて行って!」
「構わないが何するつもりだ?」
「奴隷売買をしている貴族の顔を覚える…というか、
状況次第ではその場で取るべき行動を取るかもしれない。
その時にあなたには奴隷達の解放を手伝ってもらいたいの。
この国の騎士団員か何かにその保護した奴隷達を預けるのが役目」
「…それは、ちょっと危ないかもな」
「どーして?」
「言葉足らずだったがよぉ、貴族だけじゃねぇんだ。
騎士団員の中にも奴隷売買を黙認してる奴もいるっと事だなぁ。」
(…なるほど。ヴェルファド国内の状況は腐る一歩手前。
カエリオン王がこの状況を知らないとも考えずらい。
やっぱり、、)
「そっか…」
「だが、保護した奴隷達を安全な場所に連れていきたいなら当てはある。
俺の知り合いによぉ、奴隷捕まえて売る仕事してるワロックってやつがいるんだ。
そいつに協力して貰えりゃ、奴隷達を安全な場所に保護できるだけじゃなく元いた所まで返してやれっかもなぁ」
「ふーん…協力してくれるの?」
「それは姉貴の仕事だろ?」
「言うと思った!全く…私も一応女の子なんだけど?」
「男十数人ボコボコにしておいて何言ってんだがなぁ」
「もう!失礼しちゃうね!…ま、決行は明日だし、今日中にそのお仲間にご挨拶しに行かないとね。」
「た、頼む!!殺さないでくれぇぇ!!そ、そうだ!
捕まえたエルフか獣人…なんなら人間!どれか譲ってやるから見逃してくれ!!」
夜になってスタシアとゴットンはワロックと呼ばれる男のアジトに乗り込んでいた。
ワロックはこの国の中でも顔の広い商人でもあり、それなりに護衛もいた。
(姉貴…この量を一人で…。それに、殴り合う時だけ人が変わったように表情から行動の何から何まで違く見える…)
スタシアは護衛数十人を一人で拳のみで気絶させ、
部屋にはワロック一人がスタシアに向かって土下座していた。
「ねぇ、ワロックさん…よく私の目見てよ。
この目が奴隷欲しい目に見える?あなたの命乞い聞きたい目に見える?」
「ヒッ…ヒィィ!!」
「そうだよね。私に協力して。」
「す、するっ、する!だから殺さないでくれっ!!」
「もちろん!約束を守ってくれるなら私達も守るよ!」
「すまねぇ、ワロック。だが、いい機会だろ…。
俺達もこの汚ぇ職から足を洗う時が来たんだよ」
「ゴ、ゴットン…だったら、どうやって食っていくんだよ!!
俺たちは俺たちなりの生存戦略だったろ!、
どうやって…生きていけば…」
「ワロックさんの商人としての功績は聞いているよ!
だから、ユーランシーで商人として働いてもらおうかなって思ってるんだけどどうかな?」
「ユーランシーで…?」
「ヴェルファドなんかよりもずっと平和で…今より良い暮らしを保証する。
私の知り合いに頼めばあなたの商人としての実力ならすぐに認められる。
ただし条件は奴隷の解放と奴隷達の元いた場所に返すこと。
どう!」
「…こんな仕事してる俺でも、こんな汚れちまった俺でも、またやり直せるか?」
「罪は消えない。けど隠せる。その方法は様々だけどあなたは人として罪を隠せば良い!」
「分かっ…わかりました。、、スタシアさん…いや、スタシア様。私にあなたのお役に立たせて頂きたい」
ワロックの目は先程までとは違い、覚悟を決めた目だった。
スタシアはこの目を知っていた。
人間が変わろうと決心した時にする目だ。
「うん!よろしくね!ワロック!」
「よし!これで役者は揃ったわけだなぁ!
ワロックよぉ、いきなりだが決行は明日なんだぁ、
危険になるかもしれねぇ。
それでも良いんだなぁ?」
「構わない。スタシア様のためさ」
「なんかむず痒いなぁ、えへへ。
それじゃ、私の考えた大まかな流れを説明しちゃうね!」
スタシアの考えた流れはこうだった。
ゴットンがスタシアを緊急で仕入れた商品としてオークション会場へと連れていき奴隷が拘束されている牢屋に入れる。
そして、オークションが始まるまでの十数分のうちに今回の参加者の名簿の回収と奴隷達にこの作戦のことを伝える。
その間、倉庫近くでワロック率いるその仲間たちが奴隷を安全なところまで運ぶための馬車を用意しておく。
そしてオークションでスタシアが競られている時に作戦は開始。
ゴットンとワロックの仲間が奴隷達を逃がす…が、この時にもしその動きがバレた時の最終手段としてスタシアの実力行使が始まる。
といった流れだった。
「実力行使…ですか。騒ぎになる可能性もありませんか?」
「それはそれで好都合かな。私個人としては少し厄介だけど国としては結局奴隷売買の場を見ることが出来る。
仮にその中に黙認者がいたとしても国として見過ごすことは出来ない。
そしてその件がバレたことをきっかけに奴隷制反対の貴族たちの規制が厳しくなり、今みたいにオークションをすることは難しくなる。」
「たしかになぁ…姉貴頭いいじゃねぇかぁ」
「ふふん!うちの国の尊敬する人真似しちゃった!」
「一つ懸念点があるとするならばですけど会場内に黙認者の騎士団や観覧者の冒険者がいた場合ですね。
実力的にスタシア様一人ではさすがに厳しくはないでしょうか。
相手は充実した武器も所有しておられると思いますし…」
スタシアは不敵に笑うとついさっきまでとは違い目の奥が全く笑っていないまま言う。
「大丈夫」
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なんだかユーランシーに戻ってくることが出来ても心に余裕が生まれない。
それどころかとてつもなく嫌な予感がする。
それに加えてしばらくスタシアにも会えていない。
前にディシの言っていた事が分かった気がする。
『スタシアはずっと絡まれたら結構鬱陶しい元気さだけどその元気さが無いとそれはそれで寂しくなるんだよな。』
(スタシアの性格にはいつも元気を貰っていたからなぁ…。
スタシアに会いたいなぁ…)
私はミリィノさんに頼まれていた買い出しを終わらせて夜、誰もいない道を一人で歩いていた。
普段歩き慣れない道なため迷わないように天恵で明かりを灯しながら歩く。
暗さは既にマリオロでの夜の見回りで慣れているため大したことは無いが一人なのがなんとも寂しい。
仲があまり良くなかった時とは言え、アレルがあの時は居てくれたから寂しさはあまり感じなかったが今は一人。
(この時間帯だから開いているお店もほとんど無いだろうし…。
ん?)
私はふとある建物の電気が付いているのに気が付く。
大人のお店…にしては小さいし飲み屋…にしても盛り上がりがない。
私は気になり明かりの付いた建物に入るとシックな雰囲気の落ち着いた空間だった。
カウンター席があり、その奥には上品な服を着たおじさんがいた。
黒髪をオールバックにしており、白い髭も綺麗に整えている背格好が少し高い人。
店員さんだろうか。
ミリィノに聞いたことがある バー というお店だろうか。
教えてもらった特徴通り色々な種類のお酒が店員さんの後ろの棚にズラリと並んでいる。
「おや、見ないお嬢さんだね。今夜は新客が多いねぇ。」
穏やかな口調で銀色のケースをシャカシャカと振っている店員さん。
マスター?と呼ばれる存在なのだろうか。
私はカウンター席に座り荷物を隣の椅子に置く。
「えっと…お任せでもよろしいですか?」
「それだったら、僕が選ぼうかな?」
「え?」
私の三個隣の席には私より歳上…だけどそこまで離れていない若い男性が座っていた。
中々に整った顔立ちだった。
この国の人は全員美男美女という決まりでもあるのだろうか…。
(そんなことより…まるで気配に気が付かなかった。
偶然?だとしてもこんなに気が付かないことなんて…)
「あなたも今夜が初めてでしょう?」
「マスターそんな事言わないでおくれよ。
こういうお店は結構慣れてはいるんだよ?
で、僕が選んでも良いかな?」
どうせお任せだしせっかくなら…
「でしたらお願いします」
「分かった。そうだなぁ、君は結構大人びてる顔立ちっぽいけどあまり強いのは得意じゃなさそうだからカルーアミルクとかにしようかな。
あまりお酒感じないけど酔いはするから飲むペースな気をつけてね」
「お客さんはそれでも?」
「えっと、はい。ならそれで」
「あ、今更だけどいきなり話しかけてごめんね」
「いえ、ありがとうございます。
こういうお店は不慣れでして」
「うん、そんな感じする。隣に行っても?」
「はい」
「君はこの国の人?」
「はい、騎士団で働いています」
「へ〜、騎士団か。僕も騎士団には顔見知りがいるよ。
と言っても僕はこの国の人じゃないけどね!」
「そうなんですね。冒険者ですか?」
「そんなところ!それより敬語はよしてくれよ。
お互いラフにいこうよ。」
「あなたが良いならそうさせてもらうね。
それと自己紹介が遅れちゃったね。
私はルシニエ・ヨーセル…あなたは?」
「僕?そうだねぇ…僕は…ランスロット・アンバー
…よろしくね、ヨーセル」
「よろしく、アンバー」
私はアンバーと意外にも話しが合い会話が弾んでいた。
「やっぱり騎士団は厳しい?」
「う〜ん…大変だし危険なことも多いけど、みんないい人だよ。
あ、でも、女性が少ないこともあって他の騎士団員から嫌な目で見られやすいけど」
「アッハッハッ!それ君の口から出るの面白いね。」
「ふふふっ、笑いすぎ!困ってることなんだよ?」
「そうは見えないけどなぁ」
「アンバーはどこの国の人?」
「国出身じゃなくて村出身。」
「え!そうなんだ!実は私もだよ!ユーランシーのすぐそこにあった村出身」
「そうだったんだ。なんか通りで話し合うと思ったら!」
「ふふっ、それあんまり関係ないんじゃない?」
「おーい〜せっかく村出身の好になれると思ったのにさぁ〜」
「ごめんごめん!可笑しくって」
(あれ…なんでだろう。すごく楽しい…)
「村あるあるだけどさ!夜寝る時とか少しでも虫の音とかさ…」
「うんうん!分かる!あるあるだよね!」
(すごく気持ちが楽になる…こんなの初めて…)
「あ、そろそろ僕は行かないと。楽しかったよヨーセル」
「私も。ね、ねぇ、また良かったらお話しよ?」
こういうことを言うのも初めてなため少し緊張した。
アンバーは少しニコッと頬を緩ませると
「もちろん」
と言った。
「ここのバーに丁度通おうかなって思ってたところ。
毎日来ると思うから暇があれば来てよ」
「うん、分かった。またね」
「うん、また」
アンバーは店を出ていく。
なんだかスタシア意外にも気軽に接しられる友達ができたみたいで嬉しくなる。
「マスター、おかわりお願いします」
「はいよ」
「ルシニエ・ヨーセル…どこかで会った事あるよな。
それにしても、ミュレイちゃんと殺り合って生き延びただけあって…
面白いね」
読んで頂きありがとうございます!




