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天使とサイナス  作者: 七数
3章 【予】
56/58

51話 「天使のような少女」

「かかってこいよ。殺してやるから」


俺は目を疑っていた。

何故か…それはジャックスを片手で持ち上げたからでも圧倒的な力で吹き飛ばしたからでもない。

マレランは間違いなく天恵を使っていた。

俺は天恵を感じることなんてできないし使うことも出来ない。

だが、長年天恵を主体として戦う騎士団員達に戦闘の仕方を教えていた。

だから天恵が使えなくても、他者が使ったかどうかは見れば分かる。


(今のマレランはアイネスが傷つけられたことによって正気ではないだろうな。

だから記憶も多分残らない。

天恵が一時的なものだとすれば天恵という存在がバレるような心配はしなくても良いが…今の問題はマレランは抑制が効くかどうか。

下手したらジャックスは死ぬ)


前にルシニエが特別試験を受けた際にも似たようなことが起こった。

ルシニエの場合は村を襲われたことからの怒りと無力感、責任をカウセルとの戦闘で思い出して覚醒者(ちょうえつ) と一時的になった。

そして今回のマレランは怒りから天恵が一時的に使える。

まだまだ使い方はなっていないが使えるだけでも普通の人間には十分。


(止めるべきか?キャスに言うのが1番なのだが…)


そんなことを考えているとジャックスは立ち上がり、歩いてくるマレランを睨みつける。

2人の距離はわずか50センチほどだろうか。

互いに睨み合う。


「さっきとは別人だなぁ!やっぱりアイネスとかいう女をボコボコにしたのは正解だったぜ!

楽しもうぜ!マレラン!」


「楽しむ?何勘違いしてんだ能無し。

これは殺し合いだ。そしてお前は一方的に殺されるだけのゴミ。

覚悟しろよ」


「誰に、んな口聞いてんだぁ!!


ジャックスが拳をマレランの顔面に向けて本気でぶつけようとする。

マレランはそれに合わせるようにジャックスの拳に向けて自分の拳をぶつける。

互角…かのように思えたがマレランはジャックスの拳を押しのけてそのまま頬に力強く拳をぶつける。

ジャックスは血を吐きながらも不意を突こうと反撃し、

マレランの膝を蹴り飛ばそうとする。

だが、マレランはそのジャックスの足すらも側面から殴り、体勢を崩す。

地面に膝を着くジャックスにマレランは頭を両手で抑えて勢いよく膝蹴りをする。

ジャックスは宙に浮かび上がり鼻血やら血反吐が空に舞う。

地面に仰向けで倒れる。


「諦めるならこれ以上苦しませないでいてやる。

続けるなら死ぬ気でこい」


「はっはっはっはっ!!面白いやつだよお前は!

この程度で俺に勝った気でいるんじゃねぇぞぉ!!」


ジャックスは立ち上がり、剣を構える。


「俺ぁな、アイネスを痛めつけるつもりはなかったんだぜ」


「…」


「信じてねぇな。

まぁ、少し話してやるよ。

ラインラット先生…昨日アビスさんにぼこぼこにされて相当ストレス溜まってたんだろうよ。

元よりプライドが高い人だ。

今のメンタルを保つためかは知らないが俺とアンナに ノースアヌス学園の生徒をできる限り苦しめながら勝てとな。」


「…」


「まぁ、俺だって痛みつけるのは趣味じゃねぇ。

だからよぉ、今から婚約だか、先生の指示やら全部無視して…

互いに全力でぶつかり合おうぜ。

俺は今のお前を前にして体が震えるほどビビってる。

だがまだ本気は出てない。

そしてそれはお前もだろ?

互いに殺す気でやり合おうじゃねぇか。

もちろん、剣主体でな。」


今のジャックスの話が観客たちに聞こえていたら大問題だろうな。

いや、俺に聞こえている時点で大問題だ。

この大会は無駄な殺傷は禁止だ。

だから剣は基本寸止め、盛り上げるために打撃はアリというルールになっている。

ラインラット・ヴァン…つくづくクズだな。


「お前は俺の大切な人を傷つけた。

そんなお前を俺は殺したいほどにムカついてる。

乗ってやるよ、お前の全力を正面から打ち壊してやる。

かかってこい」


「最高だぜ、マレランっ!!」


ジャックスとマレランが改めて構え直す。

普通ならば天恵を使用している人間に使用していない人間が勝てるわけない。

だが、ジャックスという男は良くも悪くも化け物だ。

マレランが身体強化をしたであろう動きでジャックスの背後をとるが当然のようにジャックスは反応し、

剣で攻撃を防ぐ、


「そんなもんかぁ!!」


ジャックスはマレランの剣を弾き飛ばし、持ち前の力と研ぎ澄まされた剣技でマレランを押し始める。

冷静に相手の動きを一つ一つ対処しながら少しずつ反撃へと移ろうとするマレラン。


「おらよぉ!!」


ジャックスの剣がマレランの腕にかすり傷を与える。

改めてジャックスという男…凄まじいな。

潜在能力がアンナだとしたらこの男は圧倒的な センス だ。

ジャックスは絶えずマレランに剣を振り続ける。

だがマレランの動きが変わり、防戦一方からジャックスの攻撃を全て避けながら懐まで入り、上半身に3回の打撃を瞬きの間に決める。

相当重い打撃なのだろうな、ガタイの良いジャックスが壁まで吹き飛び血を吐き出す。

マレランは壁に寄りかかりながら体勢を立て直そうとするマレランにさらに腹部への蹴りを入れる。

膝、脇腹、肩、顔とさらに追撃で殴る蹴るを繰り返す。

その一方的さは先程のアイネスとジャックスの戦闘を忘れられるほどのものだった。

見ている者たち全員が声を出す暇もなくその光景を目に焼き付けようとしていた。

そして同時に誰もがマレランの勝ちを確信していた。

だが、マレランがジャックスの顔に拳を放つと、その拳はガッシリと掴まれる。


「次は…こっちの番だ!」


ジャックスは壁から離れてマレランの手を掴んだままマレランの後方まで走りだす。

マレランの手を掴む方の腕を大きく回し、その影響でマレランは身体が宙に浮かぶ。

そしてジャックスは地面に思いっきりマレランを叩きつける。


「くっ、っ!」


地面にめり込むマレランにジャックスは両足で腹部に向けて踏み込むがマレランは体を捻って地面を転がりそれを避ける。

そしてすぐに立ち上がって次の攻撃に備えようと顔を上げたらすぐ目の前にはジャックスの拳があった。

マレランは殴られた勢いから先程のジャックスよりも勢いよく壁まで吹き飛ぶ。

マレランは口から血がスーッと流れる。


(口の中が、切れた。

殴られたとこよりも…壁にぶつけたとこが痛い…。

やばい、意識が…)


「おらおらぁ!まだまだここからだろ!!ボーッとしてるんじゃねぇぞ!!」


ジャックスは意識が朦朧とするマレランの腹部目掛けて蹴りを入れる。

その蹴りの強さから壁にヒビが入り、その日々は観客席まで伸びていく。


「おえっ、ゲホッゲホッ!」


マレランはその場で四つん這いになり血を吐き出す。

片手で腹部を抑える。


「終わりだマレラン!!」


ジャックスが片足を高くあげてマレランの頭にかかとを振り下ろす。


俺は まずい と思い止めに行こうとするが次の瞬間、

ジャックスが足を振り下ろす途中で突然バランスを崩し地面に倒れる。


「な、なんだぁ?」


何が起きたかジャックス本人すらも分かっていない様子だった。


(ジャックスは体格が同じ歳の子達よりも良く、筋肉の付き方も大人以上に多い。

筋肉の密度も常人より多いがために身体能力が爆発的に高い。

だが、先程のマレランの猛攻で筋肉へのダメージが予想以上に大きかった、ということか。)


筋肉密度が高いというのは身体能力が上がるのと同時に一定以上の威力の攻撃を受けると身体を支えられるほどの力が無くなるということでもある。



「はぁ、はぁ、…お互い、満身創痍って事だよなぁ!

こうでなくちゃな!!戦いはよォ!!」


マレランとジャックスはふらつきながらも立ち上がり、

互いに剣を構える。


「終わらせよう。」


「賛成だぁ」


向き合い沈黙の後、2人はほぼ同時に踏み込みぶつかり合う。

互いの剣を押し付け合う。

ジャックスがマレランの剣を横に押し退け、がら空きになったマレランの首に剣を振りつける。


「終わりだマレラン!!」


ジャックスは勝ちを確信した…が、次の光景に目を疑った。

マレランはジャックスの本気で振るった剣を素手で…

それも指だけで抑えていた。


「ハハッ…そんなんありかよ」


「感謝する…ジャックス。

お前のおかげでさらに強くなれた」


「おうよ、宿敵(ライバル)


マレランはジャックスの腹を剣の取っ手で殴り、剣が離して後方に吹き飛ぶジャックスを地面に押さえつけて首スレスレに剣を近づける。


会場はしばらく沈黙になる。


「しょ、勝者!!マレランんんんんん!!!」


ロイの宣言とともに今日1番の盛り上がりを見せる会場内。

バルタ王や貴族連中すらも立ち上がりマレランとジャックスの戦いに拍手を送っている。


「完敗だ…マレラン。」


「俺も危なかったよ。お前はやっぱり強いよ」


「ハハッ…嬉しいこと言うぜ。

…なぁ。」


「なんだ?」


「後でアイネスに謝りに行かせてくれ」


「…後でじゃなく、今行くぞ」


「体動かねぇ」


「支えてやるから」


「お人好しがよぉ」


マレランはジャックスに手を伸ばし、ジャックスはその手を取り立ち上がる。

そしてマレランの肩に腕を回して退場口へと歩き出す。

2人の背中を観客たちは見送りながら拍手と歓声をあげる。


「シラ先生、良かっ…たですね?」


シラの方を見ると号泣していた。

口を両手で覆って声が出ないようにしながら涙を流す。

俺はシラの頭を片腕で抱き寄せる。


「おめでとうございます…シラ先生」


「…はいっ、」


「控え室行きましょう。

皆に会いに行きましょうか」


「そうですねっ!」




控え室に行くと話し声が聞こえてくる。


「マレラン!!すげえよ!!」


「さすがですマレラン先輩!!かっこよかった!!」


「やべぇ、俺だけ戦わずに交代とかしちまった…」


「ネイサは良い判断だったよ。ラインラット先生が痛めつけるよう命令出してたしな

ネイサが余計な怪我する必要もなかった。」


「勝てたのは皆が応援してくれたからだよ。

ありがとうな」


「な、なんか照れるな…」


「マレラン!」


アイネスが足を引きずりながらマレランの方に歩み寄る。

そしてマレランを抱きしめる。


「ありがとう…ありがとうっ!!」


「アイネス…」


アイネスは涙を流し、マレランはそんなアイネスを強く抱きしめ返す。


「惚れたか?」


「うんっ!かっこよかったっ!」



俺とシラは目を合わせ少し頬を緩ませる。

そして控え室のドアを開ける。


「みんな!おめでとうっ!!」


シラは少し涙声になりながらも笑顔でそう言う。

5人はシラの顔を見た瞬間、近寄り、アイネスはシラを抱きしめる。


「先生っ!先生っ!やったよ!!」


「これで…婚約しなくて済むよ!!」


「うん!うん!ありがとうっ!ありがとうっ!」


俺は壁に寄りかかりながら6人が泣き笑いながら嬉しそうに話すのを眺める。

こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。

ただ純粋に嬉しく、幸せで満ちる。

すると6人は何やら小さい声で話をしている。

そして、こちらを向きながら並ぶ。


「アビス先生!本当に…ありがとうございます」


「「ありがとうございます!!」」


6人は頭を深く下げて俺に感謝を伝える。


「良くやったよ。お前たちは俺の誇りだ。おめでとう」


そう言うとマレランやネイサ達が頬を緩ませ、ケイン、イリア、シラは涙を浮かべる。

アイネスは俺に飛んで抱きついてくる。


「先生!大好き!本当に感謝してる!!」


「おいおい…」


「だからアイネスさん!アビス先生に抱きつかないの!!」


「あ、アイネスっ!?大好きって…ど、どういう意味だ!?」


何故か動揺しまくるシラとマレランを見て俺含めて、他5人が笑う。

するとドアをノックされる。

俺が どうぞ と言うとドアが開き、ジャックスとアンナが入ってきた。

俺とマレラン以外は全員警戒する。


「何の用だ。負けたからって八つ当たりでもしに来たか?」


「先輩たち、下がってください。」


「いや、大丈夫だよ。皆。アイネス…おいで」


マレランがアイネスに肩を貸してジャックスの前まで歩く。


「お、おい、マレラン…何されるか…」


「アイネス…すまなかった。

理由はあれどやりすぎてしまった。

許してくれるなんて思っていないし許さなくてもいい。

ただ、申し訳ないという気持ちだけは理解して欲しい。

すみませんでした」


ジャックスが頭を下げる。

マレランと俺以外…アンナですら理解不能な顔をしていた。


「…大丈夫、って訳でもないけど…変に手加減されるよりかはこうやって今の自分の実力を知れる方がいいから気にしないで。」


「…えっと、つまり?」


「怒ってなんかないし許さないなんてことも無いよ」


「…そうか。ありがとうな。」


「良かったらさ理由を教えて欲しいな。」


「、ラインラット先生さ。

これから俺たちはラインラット先生のところに行かなければいけない。

恐らく、卒業ももう出来ない。

イースアヌス学園はラインラット先生に逆らったらもうおしまいなんだよ。

実力でも勝てない。

多分だが半殺しにもされるかもしれない。

仕方ないことさ。バチが当たるんだと考えれば良いだけだ。

邪魔したな」


ジャックスとアンナは部屋を出ていく。


「…アビス先生。私はアイネスさんを必要以上に傷つけたあの子たちを簡単に許すことはできません。

ですが、生徒の弱みに漬け込んで脅すような教師がいることはもっと許せません。

お願いします。どうかあの子たちを助けてあげられませんか?」


「…言われなくとも、行くつもりでしたよ。

ラインラット先生をそろそろ粛清しないとなと考えていましたし。」


俺は部屋を出て2人の背中を追う。




「来たか…」


ラインラットは手には木刀を持っておりその用途はジャックスもアンナも理解していた。


「言葉は不要だな。貴様らはイースアヌス学園の顔に泥を塗った。

覚悟しろ。」


「ですが先生!ノースアヌスの生徒たちは決して弱くありませんでした。

事実、俺は負けました。本気でやりあって負けたんです。

最後に勝てなかったのは俺のせいだ。

罰なら俺だけにしてください」


「いい度胸だな。だが、ダメだ。

俺はただでさえイライラしてるんだよ。

クソガキ共が俺を舐めるんじゃないぞ?」


ラインラットはアンナの前に行き、木刀を上から下に

頭目掛けて思いっきり振り下ろす。

アンナは覚悟を決めて目を瞑る。

だが、それがアンナに届くことはなかった。


「それが教師のあるべき姿か?」


「貴様…アビス…コーエンっ!!」


「この子達は俺がこの人生で見た中でも上位に来るくらいの良い勝負をしてくれた。

俺はこの子達の教師でもなんでもないが褒めてあげたいと思えるくらいには感心した。

だが、あんたはどうだ?痛みで生徒を支配し、権力を振りかざして夢すらも奪う。

…そろそろ見苦しいぞ、ラインラット」


「黙れ黙れ黙れ!!昨日は油断したが貴様ごとき容易く殺してや…」


ラインラットはアビスに殴り掛かるがアビスはラインラットの腹部を5発殴る。

ジャックスやアイネスすら1発殴ったかどうかギリ見えるくらいの速さだった。

ラインラットは痛みから気絶しその場で倒れる。


「俺はあと二週間ほどこの国に滞在する。

もしラインラット先生がまたこのような事を言うようなことがあれば俺の元に来い。

君たちを守ってやる。」


「アビスさん…ありがとうございます」


ジャックスを始めとするイースアヌスの生徒5人が頭を下げる。


「気にするな。俺はラインラット先生を医務室に連れていく。

…良い試合だったぞ。」


生徒は教師の背中を見て育つ。

だが、その教師が非人道的ならば別の者が助けなければいけない。


(俺がその役割を担えてればいいがな)





ラインラットを医務室に届けたあと、俺は宿に帰ろうと歩き出すと後ろから腕を掴まれる。


「先生やっと見つけた!どこ行こうとしてるんですか?」


「いや、宿に帰るところだが?」


「え、今から祝勝会行かないんですか?もうノースアヌスの見に来てくれた生徒も先生も全員会場に向かってますよ?」


「祝勝会か…そうだな。せっかくだし行こうか。」




大きな両開きドアを開けると広い空間の部屋が広がっていた。

等間隔ででかい丸机が置かれており、机の上には豪華な料理が並んでいた。

壁際の机には飲み物が置いてありワインから何まで置いてあった。


「随分豪華だな…」


「先生たちが奮発してくれたんです!そろそろ始まりますよ!」


マレランが小さい台に立ち声を上げる。


「皆さん、今日は応援に来てくださりありがとうございます。

見事団体戦でイースアヌス学園に勝利することが出来ました。

これは皆さんの応援、日頃からの教師陣の支援…そして

ユーランシーから臨時として来てくださったアビス先生のおかげです。

僕ら5人から皆さんに感謝を申し上げます」


いつの間にかマレランの前にアイネスたちも並んでおり頭を下げる。

全員が5人に拍手を送る。


「それでは皆さん!飲み物を持って!」


「アビス先生、これどうぞ」


「ありがとうございます」


シラが白ワインの入ったグラスをくれる。


「それじゃあ!乾杯!」


マレランの掛け声とともに全員が 乾杯!! と言う。





オロビアヌス 東地 大通りから伸びる脇道にて。


「ちくしょうが!!1度ならず2度までも俺に恥をかかせやがって!アビス・コーエンっ!!

絶対に許さん!!」


「オロビアヌス随一の剣術実力者でありながら団員と揉めて騎士団をクビとなりイースアヌス学園に教員として就くも他国から来たものに2度ボコボコにされ、

教え子たちからの信頼も失う。

哀れだな」


「あぁ?誰だ!」


ラインラットが声をした方向に振り返ると黒い髪を腰まで伸ばし毛先が赤い少女が立っていた。

黒い髪は暗く、無を感じさせるような暗くなった空に違和感なく馴染んでいる。

少女ながら神々しさを感じ、まるで天使かのように思えてしまうその佇まいにラインラットは少し目を奪われた。


「ちょうどいい、犠牲者1号はお前だ」


「あ?なんのこと言っているがは知らんが俺は今機嫌が悪いんだ。

クソガキはさっさと家に帰りな」


「お前みたいな雑魚はアビス・コーエンにはどうやっても勝てない」


「…おい、ガキだからってあんまり調子に乗るなよ。

親の代わりに再教育し直してやるよ!」


ラインラットは少女に真剣を本気で振りつける。

だが、次の光景ではラインラットの上半身は跡形もなく消え失せていた。

ラインラットの下半身が地面に鈍い音を立てながら落ちる。


「ハインケル…始めるぞ」


「分かりましたよ。」


セルシャは右足のつま先を地面に タンタン と叩くとオロビアヌス全体を囲う天恵の膜が出来る。


(ラインラットという男を殺したことで奪った天恵でここまで巨大な天恵の膜を作り出すなんて…

恐ろしいものですねぇ)


「まずはバルタ王を殺す」

読んで頂きありがとうございます!

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