32話「マリオロ襲撃-後編」
目の前の男と女。
忌々しくもランスロット様から貰い私が強化したスクリムシリを殺すだけの実力はある。
特に女の方。ルシニエ・ヨーセルの突然の成長は危険だ。
予想外を突かれる可能性もある。
まずは狙うならばヨーセルからだろう。
契約の意思 は実際の戦闘でも強いが真に力を発揮するのはサポートに回る時だ。
ヨーセルの破壊力に加えて、契約の意思によって私にデバフをかけるという戦い方をされたら少々厄介だ。
(でも、厄介ってだけよね)
剣身の細い剣を生成する。
この剣はジャレン様からおすすめされた剣であり、私の戦い方に最も適している。
持ち前の技術力についていけるのはこの細さの剣身のみだと私自身も理解している。
「飛び道具を使う戦い方は飽きたわね。
近接戦闘で楽しみましょうか」
私が剣を構えるとヨーセルとアレルも構える。
緊張が走り、両者とも集中力が凄まじい。
私の前に出している方の足を滑らす音を合図に互いに一瞬で距離を詰める。
(あら、アレルが前に出てくるのね)
良く考えればそうだろうな。
ヨーセルが私とアレルの速さについてこれる訳が無い。
私はアレルの脇腹を狙って剣を刺しつけようとするが、
アレルは持っている短剣を私の剣に滑らしながら受け流し、距離を詰めてくる。
「やるわね」
私は剣を消し、新たに剣をアレルの腹目掛けて生成する。
アレルは体を少し逸らし、脇腹にその剣を刺しながらこちらに近づき短剣を上に投げて拳で私の頬を殴りつける。
(すごい威力…顎が砕けたわ。
それにしても…脇腹刺されて真顔でそのまま殴ってくるなんて…この男人間なのかしら?)
すると後ろにいつの間にか回り込んだヨーセルが私の足元めがけて剣を振るう。
側面からヨーセルの剣を踏んづけて地面に抑えるがヨーセルはその剣を離す。
「見様見真似…お返し」
そう言いながら私の腹部に剣を持つ仕草をする。
と同時にヨーセルは剣を生成して私の腹を突き刺す。
「ゴフッ……やるじゃない!」
「何を油断している。まだ終わりじゃない。強制…」
まずい、と思いヨーセルの顔面を思いっきり殴り付け剣を離した隙にアレルから距離を取る。
だが意味が無く、私の足が捻れ潰れる。
地面にうつ伏せで倒れそうになるのを片足だけ直ぐに再生して耐える…が
(しまった…隙を、)
遅かった。
目の前でアレルが短剣を振り切る。
直後に私の視界は真っ暗になり激痛と共に何も見えなくなる。
「ルシニエ!畳み掛けろ!」
「はい!」
追い込まれた、攻撃が見えない。
感覚で受け切れるだろうか…。
こんなにもピンチで死にそうな状況なのに…
こんなにも痛くて苦しい怪我なのに…
どうしてこんなにも心が昂っているの
「アハっ!」
私は地面を思いっきり踏みつけて地割れを起こす。
目をすぐ再生して、直感の赴くままに動き出す。
「まずはお前だヨーセル。
綺麗な顔だね…グチャグチャにしたくなるよ。」
私は本気の殴りを瞬きの合間に4回ヨーセルの顔にお見舞する。
その速さに衝撃すらも置き去りする。
次の瞬間にヨーセルは後方へと吹き飛ぶ。
顔の骨にいくつかヒビを入れた。
天恵での回復をしないと戦線復帰など不可能だろう。
(ああ、楽しい!幸せ!)
私は直ぐにアレルの目の前まで移動する。
私がヨーセルにしたのと同様に顔面を殴ろうとするがアレルはそれを防ぐ。
そしてカウンターまで入れてくる。
「流石ね!でも、これはどうかしらね!」
右手でアレルの顔を狙うが当然のように防がれる。
だが本命は左手だ。
私の左手はアレルの腹部に深く食い込む。
アレルはその衝撃から血を吐き出す。
後ろに行こうとするアレルの体を捕まえてこちらに引き寄せる。
その勢いのまま天恵を纏った両手のひらをアレルの腹部に思いっきり押し付ける。
アレルは後ろに吹き飛ぶことなく、その場で意識を失う。
アレルの頭を潰そうとするが後ろから音が聞こえ振り返る。
驚いた。もうヨーセルが治癒を終えていた。
やはり凄まじい成長。
戦闘の中で体の使い方と天恵への理解がどんどん深まっていっている。
「面白いわ!あなた!すごく面白いわ!」
「はぁ、はぁ、くっ!」
ヨーセルが先程よりも速い速度で私との距離を詰める。
手には何も持っていない。
殴り合いというわけか。
(面白い!乗ってあげるわ!)
私とヨーセルは互いに拳を受け流しカウンターを狙う動作を高速でし続ける。
ここまで来たら認めざる得ない。
この女は大したこと無いなんて言ったことを訂正しなければいけない。
最強たる器になりうる女。
「ヨーセル!楽しいわね!!あなたがここまでやるとは思わなかったわ!」
アレルに使った両手の攻撃をヨーセルの腹部にめがけて放つ。
もろに喰らわせた。
「おしまいね、胃が潰れてまともに動けないでしょう」
だが次の光景に目を疑う。
ヨーセルは私の攻撃を耐え、しかも立っている。
(なんなんだこの女…どういう体してるんだ)
ヨーセルの拳が私の頬にぶつかる。
威力が先程の倍以上ある。
殴られた方の頬が歯にくい込んで行く。
殴り飛ばされて私は地面に倒れる。
「…やるわね。すごく良いわね。」
頬を治癒する。
「はぁ、はぁ、」
「でも、もう限界でしょう?そんな動きずっと出来るわけないもの。」
「まだ…だ。お前は…殺さないと、いけない!」
ヨーセルがフラフラになりながらも私に殴りかかってくる。
「いい殴り合いができて満足よ。それじゃあ、マリオロ崩壊の続きを始めましょうか」
私はヨーセルに特に何もしない。
なぜならもう立っている程の力もないから。
目の前で倒れるヨーセル。
すぐそこで意識を失っているアレル。
「やっぱり…こんなものよね」
と、気がついたらマリオロの騎士団員が私を囲っていた。
いつからだろうか?
殴り合いが楽しすぎて気が付かなかったわ。
「もう飽きたわ。皆殺しにして早く帰って褒めて貰うわ。」
ヒュ〜 という音がする。
どこからだ?背後から?
振り向くと私に巨大な鉄の塊のような球が飛んできて、私にぶつかると同時に爆発を起こす。
(壁から攻撃をしてきたのかしら。何かしらあの黒いやつ。武器?
そういえばランスロット様から砲台というものを聞いたことがあった。
少し興味はあったが期待はずれだ。
大したダメージでは無いな。)
と、足元を見るとヨーセルがいなかった。
アレルの姿も無くなっていた。
辺りを探すと2人の騎士団員がヨーセルとアレルを抱えて離れたところにいた。
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「ヨーセル!大丈夫!?しっかりして!」
「ミュー…どう、して」
「助けに来たの!何よあいつ!アレル様もヨーセルもこんなんになるなんて…
ハーバ!アレル様は無事!?」
「ああ!息はある!気を失っているだけだ!」
「だ…め。逃げ、て。」
「逃げられる訳ないでしょ!友達がこんなことになっているのに!
それにここに来たのはアウグス王の命令!
ヨーセルとアレル様の応援に行けという命令!」
「だめ、なの!あいつは…あいつは…スクリムシリで
2番目の強さの階級なの!」
ミュレイという女のスクリムシリに目を向けると地面を思いっきり足で砕く。
地面に広範囲に天恵が流れて、その範囲全てが爆発する。
ほとんどの騎士団員が爆発に巻き込まれて重症、または即死。
私を抱えるミューとアレルを抱えるハーバはその範囲外におり攻撃には当たらなかった。
「な、何が起きたのよ!み、皆!!皆!」
「嘘だろ…ふざけんなよ!クソ女がお前ふざけんなよ!」
2人は仲間が大勢目の前で殺されたことによってミュレイに暴言を浴びせる。
だが、その暴言すらも嘲笑うかのようにニヤニヤとした表情を浮かべる。
「ゲホッゲホッ…2人とも…アレルさんを連れて、逃げて。
あいつを…倒せるとしたら、アレルさんだけ。私が、あいつを止めておくから。
逃げて!」
私はミューから離れるとミューを押し飛ばす。
「そんな…それだとヨーセルが!」
「ここで…全滅するよりかは良いでしょ!早く行って!」
私は2人に怒鳴りつける。
「…無能が…一丁前に命かけるな。命令だ。
お前は…今いる重傷者をその2人と共に中心街まで運べ…。」
私の後ろからボロボロのアレルが歩いてくる。
足を引き摺っており、まだ完治できていない様子だった。
「私も…戦います」
「ダメだ。引け。お前ではもう相手にならん。」
「それでも、何か役に立てることがあるはずです」
「強情も程々にしろ。これは命令だ」
「強情なのはアレルさんです!!
あなたは自分が犠牲になればそれで良いと考えている!
ふざけないでください!
あなたがいなければどれだけの人が助からず、どれだけの人が悲しむと思っているんですか!!」
「…黙れ、」
「黙りません!
あなたの過去を聞いて、あなたに申し訳ないと思いました。
ずっと怖い人だと…酷い人だと思っていた。けど
人一倍優しいだけだった。
あなたはもう1人じゃないです。
アレルさんには私がいます」
『大丈夫、あなたには私がついてる』
(また…重なる。シスウスと…。そうか、シスウス。
お前が訴えかけていたんだな。
人に頼ってもいいって。)
「足でまといになるなよ。ルシニエ」
「善処します」
ミュレイの外傷はゼロ。残りの天恵がどれくらいかは分からない。
対してこっちは私もアレルも外傷は同様にゼロだが、
私は残りの天恵が少ない。
チャンスは一回。隙を作り出すことに全神経を注ぐ。
「ふふっ、あなた達、最高よ!!本当に最高!!
さぁ、最終局面と行きましょう!」
「意志『制罰』」
契約の意思…それの意志。
能力は分からない。けど、全身全霊で合わせる!
私とアレルは左右に走り出し、同時に攻撃を仕掛ける。
ミュレイは急に喋らなくなりながらも冷静に私とアレルの攻撃を対処する。
しかし、なぜだかいつもより動きやすい。
連携が取れる。
私がミュレイの顔目掛けて蹴りを入れるが片手で防がれてしまう。
しかし、それは油断を誘うための囮!
剣を生成して、足に突き刺す。片足に剣が刺さり固定されて動けないミュレイ。
足を千切ろうとするがその隙すら与えない!
「鬱陶しい奴らが!!」
ミュレイは天恵を集中させて地面に放とうとする。
(まずいっ、巻き込まれたら防御するほどの天恵はもう…)
「罰発動だ。」
「なっ、」
突然、ミュレイの腹に風穴が開く。
それと同時にミュレイが血を吐き出し、その顔にアレルが遠慮なく殴りを入れる。
剣が刺さっている足が千切れながら後ろに吹き飛ぶ。
「追撃しろ!ここで仕留めろ!!」
アレルがそう叫ぶ。
私はすぐさま剣を抜いて、ミュレイに向かって剣を振るう。
アレルも同時に短剣を突き立てる。
(なんで…なんでこの状況で…この女は笑っているの)
次の瞬間、私とアレルの両腕が吹き飛ぶ。
血を吹き出しながら私は地面に転がり、アレルは倒れはしなかったが膝を着く。
「ここまで…追い詰められたのは人生でさっきに続いて2回目よ
使うつもりは無かったけどしょうがないわ!!
恵み…災理の意思」
災理の意思
・自身の天恵か血を相手の体に付着させることによりその付着させた箇所に、災害の現象を引き起こさせる。
血の付着は天恵よりも威力が大きくなり、
加えて付着させる量が多ければ多いほど威力が増す。
台風…付着した部位を捻り潰す。
火災…付着した部位が炎上。治癒が遅くなる。
浸水…付着した部位が腐り、脆くなる。
噴火…付着した部位が吹き飛ぶ。
この4つの中から選択することが出来るがそれぞれに最低限の付着しなければいけない量があり、最低限の量に達していなければ自身がその部位にダメージを負う。
「私の、血があなた達の腕に多く付着していて助かったわ。
良かった、上手く行って。」
どういうことだ…ありえない。
今の攻撃はまるで…意思者のような。
ここに来て、隠し持っていた技が…まずい!
「死ぬかと思ったわ。さすがの私もイラッときちゃったかしら。
苦しめながら殺してやる。」
ミュレイは腹部の治癒をしながらこちらに歩み寄ってくる。
やばい…両腕を回復したら動ける分の天恵も残らない。
(こんなの…どうしたらいいの)
私はとりあえず片腕だけ治癒を始める。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんだ…今の攻撃は?
ミュレイは意思者?いや、そんなはずは無い。
両腕を治癒するがまだ時間が有する。
(ルシニエの天恵はもうすぐで切れる。
片腕だけの治癒をしているのは賢いがそれでも長くは動けない。
この状況を乗り切るには俺が何とかするしかない。)
「ハーバセンチス!ミューレラ!最重要命令だ!!
ルシニエ及び他の重傷者を連れて中心街まで引け!」
俺は大声でそう叫ぶ。
後ろから2人の返事が聞こえる。
「逃がさないわよ!!絶対に殺す!」
(まずいっ、2人をっ…)
ミュレイはハーバセンチスとミューレラの2人を先に殺しに向かう。
俺は立ち上がり治癒途中の腕だがミュレイの間に入ろうとする。
だが、
(ダメだ…間に合わないっ!)
すると、ミュレイの目に何かが投げつけられる。
ミュレイはそのせいで目から血を流し、ふらつく。
「誰だっ!!」
俺はそこに立つ人物に驚愕と絶望する。
「ど、どうして…なんで…ミカリエ!どうしてここにいるんだ!!」
ミカリエがミュレイに向かって石を投げていた。
「ヨーセルと…アレルを…虐めないで!」
そう泣きながらミュレイに石を投げつける。
ミュレイは立ち止まり、目を治癒してミカリエを睨みつける。
「クソガキが…殺す」
「や、やめろ!!」
ミュレイがミカリエに向かって剣を生成して向かっていく。
俺は治癒を終えてミュレイの前に立ち、短剣でミュレイを抑える。
だが、ミュレイの攻撃の速度は先程よりもさらに上がっていた。
俺は腹、肩、顔と捉えきれない速度で殴られ、吹き飛ぶ。
ミュレイはミカリエの方へ走り出し剣を振り下ろす。
「頼む…やめてくれっ」
ミュレイの攻撃は地面を大きく叩きつけて砂埃が立つ。
何が起こったか分からず俺はただ絶望していると、
砂埃が明ける。
「ゲホッ!」
ルシニエがミカリエを抱えていた。
ルシニエはその場で倒れて意識を失い、ミカリエはそのルシニエの体を揺らして起こそうとする。
「ハーバセンチス!ミューレラ!」
「「はい!!」」
2人はミュレイの目を盗んでルシニエとミカリエを抱えて中心街へ向かって走り出す。
「チッ…どうせ皆殺すのにそっちに逃げたって意味ないわ。」
俺は立ち上がり、ミュレイと向き合う。
「今更あなたに何ができるって言うのかしらね。」
俺は湧き上がる怒りを抑えて心を落ち着かせる。
(集中しろ…天恵を巡らせろ!)
体温が高くなるのを感じる。
もっと、心臓と脳で天恵を循環させろ。
「感謝する。”ヨーセル”」
俺は剣を生成し、地面に突き刺す。
「サイナス・『権情の記』」
契約の意思
サイナス・『権情の記』
自身と対象のみにしか見えない精神空間を作り出し、
両者の体は現実に実体として残っており、精神空間と同様の動きをする。
その精神空間で受けた傷は全て現実に反映される。
1、火の海 2、針羅の雨 3、闇の世界 4、徴収
5、進退の終焉
1〜3は両者に影響を与え、4は対象の天恵の7割没収。
5は両者とも「死」
精神空間内にいる使用者以外の身体能力は時間が経つ事に使用者へと吸収され、対象の身体能力は低下する。
(サイナス、ここで!?ここは…どこ?熱っ、)
「1、火の海。地面が火に囲まれている。どこにも逃れる場所は無い。」
(体がさっきより重い…なんなのよこれ!)
俺はミュレイに攻撃を仕掛ける。
ミュレイはその攻撃に反応するが体がついてこれていない。
「熱くてしょうがないだろうな…。俺だって熱いさ。
だが、お前を殺すって決めた。それのためなら俺の足は地獄にでも送ってやる」
どんどん追撃を加える。
ミュレイは何とか付いてこれてはいるが先程の鋭さは無い。
そしてまた空間が変わる。
白い空間…。
「どこだ!ここは!!」
「2、針羅の雨。無情にも打たれる切なき雨だ。」
空から鋭い針が無数に降ってくる。
雨のように捉えることの出来ないくらいの量が降ってきて俺とミュレイの体を突き刺す。
「どうした?痛くて動けないか?」
俺とミュレイは頭には刺さらないように全て弾き返しながら距離を詰める。
「舐めるな!!この程度で私を殺せると思うな!!」
ミュレイは自身の全身から天恵を放出し大爆発を起こす。
するとまた景色が変わる。
真っ暗で何も見えない。すぐそこにいたはずのミュレイすら見えない。
「3、闇の世界…視力を失う気持ちはどうだ。己の感覚だけが頼りだ。」
俺は耳をすまして、聞き分ける。
そして、短剣を振るう。
何かを切る感触がしたと同時に叫び声も聞こえてくる。
俺は追撃を加える。どんどん切り刻む。
そして景色が変わり現実に戻ると右腕、左脇腹、左頬が切り刻まれたミュレイが立っていた。
(体がっ、重い!なんなんだ!これは!)
「4、徴収…天恵の徴収だ」
ミュレイから天恵を7割没収する。
急に大量の天恵を失ったことでミュレイは片腕がボトッと鈍い音を立てながら地面に落ちる。
(スクリムシリは天恵で体を構成している。
天恵が無くなれば体の原型を保つのは困難だろう。)
「次は5、進退の終焉。両者共に「死」」
「ははっ!それだとお前も死ぬだろう!!」
「いつ、俺がサイナスでお前を殺すと言った?俺のサイナスはミリィノとは違って、途中解除が可能なんだ。」
俺は自身のサイナスを解除する。
「終わりだ、ミュレイ」
俺はミュレイの上半身を切り刻む。
心臓が移動する隙間なく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!嘘だ嘘だ!!
私が負けるなんて有り得ない!!
私はあの方々に褒めてもらわねばいけない!!」
頭が切断されたミュレイがそう叫ぶ。
「こうなったらこの国ごと道連れにしてやる!!」
するとミュレイの上半身があった場所に天恵が集まっていき、巨大な天恵の球ができる。
「ハッハッハ!!これでお前たちもおしまいだ!!」
「契約成立だ」
「…は?」
その瞬間、ミュレイの顔は地面に押しつぶされた。
天恵の球は空中に消えていく。
「意志「制罰」」
最後にやつが自爆するという行動を指定し、それ通りにミュレイは動き、罰を受け頭が潰された。
「勝った…。」
(ヨーセル達は…無事だろうか…)
俺は耐えきれずにその場に倒れ、目を閉じる。
読んで頂きありがとうございます!




