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天使とサイナス  作者: 七数
1章 【易】
3/3

2話 「騎士団」

もう少し来るのが早ければ…助かった人もいるかもしれないのに。

あの村の住民には前からずっとユーランシー内で暮らすように促していた。

しかし、伝統を重んじているからと断られていた。

どんな状況であれ、どんな理由であれ、人を死なせてしまったら我々騎士団の責任だ。

唯一あの村の生存者 ルシニエ・ヨーセルという

若い女性。歳は20行ってないくらいだろうか。

肩まで伸びた黒髪、毛先が白で美しかった。

彼女が村外れの森でスクリムシリ・『予』に食べられそうになっているのを助けた。


緊張と恐怖からの解放で気を失ってしまい俺の家へと

連れて寝かせてあげた。

彼女が起きた時、違和感を感じた。いや、見えた。

彼女の中で芽生えるスクリムシリに対する燃えたぎるような殺意と憎悪。

彼女自身も気づかないほどの怒り。

俺は知っている、怒りは人を成長させる物だと。

だから、彼女に騎士団を進めた。彼女はとてつもない力を秘めていると確信した。


俺は彼女を騎士団の特別入団させるために推薦しに

中央城・ホールディングスの王女の間に向かっていた。

昨日、彼女には騎士団や天恵のことを色々と教えた。

覚悟は出来ているようだったから、それならば約束通り全力でフォローさせてもらう。

女王の間のでかいドアを押すと広い空間が広がり、

天井まで伸びる4つの柱がこの広い間を崩れないように支えている。

壁には窓が多くあり、光を差していた。

間の奥には数段の階段と女王の椅子がある。

既に2人先客がいるようだ。


「あ!ディシ君!!久しぶりだね!!」


綺麗な青い瞳と色が抜けたように真っ白な髪を腰まで伸ばす美しい女性。

俺と身長差があるため、幼い顔も相まって妹みたいに感じる。


「あ!今失礼なこと考えたでしょ!」


『信愛の意思者』スタシア・マーレン

騎士団にいる2人の女性のうちの1人。


「考えてないよ。早いね。相変わらず」


「まぁね!ディシ君が集めるなんて珍しいね」


そんなに珍しいか。確かに滅多に集めることは無いけど。


「ディシが集める時なんて大体、気に入った人がいる時でしょう。前回の人は確かに才能はありそうでしたけど結局サボってばっか」


近くの柱にいけ好かない長身の黒と青の毛が混ざった男が寄りかかりながら腕を組んでいた。

『契約の意思者』アレル・ドレイン

天恵の使い方が騎士団内でも群を抜いて上手い。


「アレルさんったら、ディシ君はディシ君なりに騎士団の成長を望んでるんだから良いでしょ?」


ドアが開く。

黄色と黒が混ざった髪の色を後ろで結んでいる美人が立っていた。

スタシアよりかは背が高く、雰囲気がある。


「お久しぶりですね。皆さん」


『剣韻の意思者』カウセル・ミリィノ

剣の扱いが上手く、騎士団内でも指導者として動いている。

「ミリィノか。久しぶりだな」


「ディシさん。あなたが招集なんて珍しいですね!」


「またお気に入りの人を見つけたんだとよ」


「ふふっ、ディシさんらしい理由ではないですか」


過去には意思者は6人いたが、スクリムシリとの

大きな戦争があり、その際に2人死んだ。

スクリムシリとの戦争は意思者ですら簡単に死ぬ。

だが、騎士団の上に立つものとして団員達を引っ張っていかなければならない。

『結命の意思者』として


「メアリー女王が来られましたよ」


ミリィノがそう言った瞬間に俺たちはすぐさま

女王の座に向けて、右膝を床に着け右手を胸に添える。

後ろから コツ…コツ…と足音がする。

そして、俺たちの左から紺色のドレスを纏った

金髪の美女が現れる。

女王は女王の座に姿勢よく座り言葉を発する。


「お待たせして申し訳ございません。騎士団の入団試験が近いこともあり、側近の者はそちらに集中させるため連れてきていないことをお許しください」


丁寧な口調で丁寧に説明するメアリー女王。

女王の家系は、その立場に甘えることなく皆が

民を尊重する。

それによって民もまた王女を尊重する。

だから、この国はここまでの大国になったのだ。


「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。」


女王に対する最初の挨拶は招集をかけたものが

言うという決まりがある。

そもそも、守恵者や騎士団長が招集するならば

騎士団員全員が集まるはずなのだ。

しかし、入団試験が近いことに加えてこれは俺が個人でヨーセルを推薦するための集まりな為、騎士団員は集めていない。

騎士団長は来て欲しかったがさすがに忙しかったようだ。

1人を推薦するだけなら女王を呼ぶほどでは無い事だが

メアリー女王は

「少しでも騎士団が関係するならば私も参加させて欲しい」

と常日頃から仰っているので今回も呼ばせてもらった。


「皆さん。楽にしてください。この場には私と皆さんだけなのですから砕けた対応でも構いませんよ」


その言葉を聞き、俺たちは少し楽にする。


「今回、集まってもらったのは騎士団に推薦したい者がいるからです。

先日、ユーランシー城壁外のそばにある村をユーランシーに住むように説得しに訪れた際、村は

スクリムシリ・『予』の1体に崩壊させられていました。

その際に襲われかけていた若い女性を救いました。

そして昨日、目が覚め彼女に問いました。

騎士団としてスクリムシリに立ち向かう覚悟はあるかと。

彼女ははっきりと あります と答えました。」


「ちょっと待て、ディシ。推薦するのは一向に構わない。だが、女性を推薦するというのは前例が無い。

ただ立ち向かう覚悟があるからという理由だけで推薦したのか?」


「アレル。女性だからと差別するのはやめてくれますか?女性でも私やスタシアのように騎士団になることが出来ます。」


アレルの発言にミリィノが言い返す


「ミリィノはそもそも入団試験を順当に合格した上で、だ。スタシアは信愛の意思という能力を抜きにすれば1騎士団員と同じくらいの戦力だ。

俺が言いたいのは女性を騎士団に入れたい訳では無い。女性を推薦することで騎士団の入団試験を飛ばすことに異議があるという事だ。」


アレルの言っていることは最もだ。

騎士団員での女性はミリィノとスタシアのみで、ただでさえ女性の騎士団員がいないわけだ。

だが、俺は女性を推薦した。

1歩間違えればただの無駄死にになる可能性が高い。


「彼女からは彼女自身も気づかないほどのスクリムシリに対する殺意と怒りがありました。

怒りは人を強くする。彼女は間違いなく強くなる。」


「根拠の無い自信をやめろと言っているんだディシ。騎士団員は全員がスクリムシリに対して怒りを持っている。お前が推薦したい女だけでは無いんだぞ」


確かに根拠の無い自信。しかし確信に近い自信だ。


「ディシさんとアレルさんの意見は分かりました。

ミリィノさんとスタシアさんはどうお考えですか?」


「私は…アレルさんが言った通り能力で守恵者という地位を貰ってるにすぎません。

ですが、そんな私だからこそチャンスをあげてもいいのでは無いかと考えます。」


「私もスタシアと同じ考えです。入団試験ではなく

簡易的かつその者がどれくらいの力を持っているかの試験をしてみるのはどうでしょうか」


ミリィノとスタシアの提案により場がまとまる雰囲気があった。

確かにその発想はなかった、入団試験はあくまで

騎士団が主体でするもの。

ならば俺たち守恵者が主体で試験するような形を作れば良いのだ。


「そうですね。騎士団の入団試験は3つの項目の総合評価で決めます。

それを踏まえた上で今回の推薦はその方と守恵者の誰かを戦わせてみてはいかがですか?

剣の技術、天恵の使い方、単純な力、全てを見分けるならばこれが一番良い方法だと思います。」


やはり、メアリー女王はこの案が出ることを分かっていた上でミリィノとスタシアに聞いたのか。

そして、ミリィノの案に付け足して完全に場をまとめあげた。

相変わらずカリスマ性が高い。


「なるほど…我々とその推薦者を。とても良い案だと思います」


「私も異論は無いです!」


スタシアもミリィノはその案に同意した。

そして勿論俺も同意だ。


「チャンスをくださりありがとうございます」


問題はアレルだが、


「メアリー女王が言うならば私も異論はございません。」


大丈夫そうだな。さて、問題は誰がその試験の相手を担当するかだが。

まず俺は絶対にダメだろうな、推薦した本人だし。

そしてスタシアも無理だろう。

剣の実力も力もめちゃくちゃ優秀という訳では無い。

ならばミリィノかアレル。


「私が、御相手させて頂いてもよろしいですか?」


名乗り出たのはミリィノだった。


「私は構いません。アレルさんはそれでもよろしいですか?」


「はい。私自身、手加減が苦手なので指導が上手いミリィノが最適だと思います」


どうやらまとまった様だ。あと決めるべきことは合格基準だが…

それはミリィノ次第といった所だろうか。


「合格基準ですが…私に1度でも攻撃を当てることが出来たら合格ということでもよろしいでしょうか」


妥当だな。能力なしで剣だけの力ならミリィノはこの国で2番目だ。そんなミリィノに1度でも攻撃を当てることが出来たならば相当の実力者だ。

(そういえばアビスさんどこ行ったんだ。)


「それで構いません。一通り決めることが出来ましたね。それとディシさん。その女性の方の名前を皆さんに知らせてくださいね」


「失礼しました。ルシニエ・ヨーセルです」


「ありがとうございます。それでは今回の会議は以上です。」



そう言い、女王は女王の座から立ち上がり女王の間から出ていく。

俺たちも各自で解散する流れになる。

俺がドアの方へ向かって歩き始めたらスタシアが話しかけてきた。


「ディシ君!この後、用事ってあったりする?」


「今日のことをヨーセルに知らせるくらいだけど」


「ならさ!久々に一緒に飲もうよ!」


「スタシア、明日任務あるだろ」


俺たち騎士団には任務がある。

結界は絶対に破れない訳では無い、むしろ同じ場所に何回も攻撃が当たると案外簡単に崩れてしまうものだ。

だから、守恵者が指揮を取りながら城の外のスクリムシリ達を殺さなければならない。

それを任務と呼ぶ。

スクリムシリは大体、北か東にいる。というかほぼそうだ。

それに俺たちにはスクリムシリホードがある…


「え〜行こうよ〜!」


ガキかこいつ。だが、まぁ、最近は忙しくて息抜きできてなかったからな。

たまにはいいのかもしれないな。


「分かったよ…少しだけな」


「やったぁ!」


喜ぶスタシアを見て俺は少し笑ってしまう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


部屋をノックされる。

ディシの家の1部屋を私は借りていた。

ディシはどうやらとてつもなくお金持ちのようだ。

家と言うより屋敷の規模感ではある。

屋敷内は数人のメイドのようなものが歩き回っていたりなかったりしている。

あと唯一、ディシの部屋を出入りしている身なりの整った男の人がいるくらいだ。

私が「はい、どうぞ」と言うとドアが開き

ディシが入ってくる。


「どう?精神面も身体面も回復したかな?」


「はい、お陰様で。それで、どうかしましたか?」


「騎士団の入団試験の事なんだけど、君には特別試験を1個だけやってもらう。

それを合格したら晴れて騎士団に入れる。」


「え?特別試験…ですか?」


「そ、上の人達に掛け合ってね。俺が君を推薦した形だね」


そんなことが可能なのか?事実してもらった訳だが。

それとディシの騎士団での地位はどれほどのものなのかがどんどん気になってくる。


「それで…試験の内容っていうのは」


「守恵者と一対一で戦ってもらう」


私は耳がおかしくなったのかと思った。

守恵者については昨日ディシに教えてもらったからわかっている。

騎士団の中でもより優秀な者という事。

問題はその人と私が戦うという事だ。

整理しても全く理解できない…なぜそうなったんだ?


「驚くのも無理は無いね。でも、君なら受かると思っているよ。だって俺が推薦した人だからね」


「でも、私は天恵の使い方はおろか、剣の使い方すらも分かりませんよ…」


「それは俺が今から教えるさ。試験は今から1週間後。それまできっちりと指導していくからね」


1週間で国一番の騎士に勝てと言われているようなものだ。

だが、私は覚悟を決めたからには全力でやるつもり、

どんなに高い壁でも必ず乗り越えてみせる。



私は早速、東の城の騎士団練習施設に連れてこられる。

そこで、木刀と実際の剣を渡される。

本物の剣は重いと思っていたが全然片手で持てるくらいだった。

だが、ディシにはそれを褒められた。

女性で、しかも剣を持ったことないのに片手で持てるなんてすごいね と。


「まずはどれくらいの実力か知りたいから俺と木刀で戦ってみようか」


ディシはそう言いながら木刀を持ち、私の対面へと立つ。

そして、手に球体を出現させる。

(あれが天恵なのか。物とかも作ることが出来るのか。)

ここに来るまでに一通りのことを聞いた。

天恵は体を強化することや訓練すれば多少の怪我なら治癒することが出来ると。


「これが割れたら開始ね」


ディシが作った天恵の塊は宙を浮かび、私たちのちょうど真ん中で止まる。

そして、パリン と割れる

その瞬間に私は地面に強く踏み込み、思いっきり蹴飛ばし距離を詰めて木刀をディシに振りつける。

しかし、ディシは容易く木刀でそれを受け止める。


「凄いね、初めてでそれは。」


私は少し不快になる。なぜならディシは全然余裕そうだからだ。

さらに、攻撃を繰り出す。

だが、読まれているかのように全て防がれる。

しかも、ディシはその場から一切動かないで腕だけを動かしている。


ディシの余裕さに対する不快感と共に何故だろうか。

楽しさを感じる。剣を振れば振るほど、体が軽く早く動ける気がする。

しかしそう長くは続かなく、私の剣をスっと容易に流されてディシの木刀が私の首に当てられる。


「見込み通りだよ、ヨーセル。いや、それ以上かも。多分だけど並の騎士団員より強いと思うよ」


お世辞を言うにしても、もう少しマシなものは無いものだろうか。


「でも、負けました」


「アハハハッ!さすがに俺には勝てないよ!

剣に触れたことがないのにここまで出来るなら大丈夫だよ。」


「あの…ディシさんって、騎士団ではどういう立場なんですか?」


「俺?守恵者だよ」


思考が停止した。この人の言っていることが本当だとするなら私はとてつもなく失礼な態度を取りまくっていた気がする。

いや、そうじゃなくても失礼な態度は取るべきでは無いのだが。


「驚いた?聞かれるまで内緒にしとこうかなってさ」


「さすがに驚きました。だから、家もあんなに豪華なんですね」


「俺はあんなにでかく無くて良いって言ったんだけど、周辺に住んでる人達が俺の家はでかくすべき!って言ったりしてさ、でかくなっちゃったよ」


「今まで無礼な態度すみません」


「気にしないで、俺は上下関係は気にしない人だから。」


あまり守恵者の強さの基準が分かっていなかったが

さっきディシと手合わせしてみて、その強さを実感した。

それと同時に私は試験に受かるのかと不安になる。


「私の試験の相手って…」


「前に少し話したことあるかな。剣韻の意思者の

ミリィノって人。女性だよ」


確か、騎士団初の女性として騎士団試験を合格して

努力のみで守恵者になった人。

努力のみという点では確かに試験者としてとても合致しているのか。だが、騎士団でトップレベルの剣の使い手が相手となると厳しい門になるだろう。


「正直、天恵を使わないで剣だけの勝負なら俺は

勝てないかな、ミリィノには。でも、勝ちようは

いくらでもある。ヨーセルの剣の才能の見込みは想像以上だった。

だから、この1週間は天恵の使い方を練習しようか」



そこからディシには天恵の使い方を教わる。

天恵の使い方…というか使うにあたっての順序があるらしい。

1つは身体の強化。天恵を使うにあたっての基礎にあたる部分だ

2つ目は物の増築。先程ディシが作った物は1番簡単で

練習にはうってつけらしい。

しかし、時間が無いため今回は練習しないことになった。

3つ目は、身体の治癒。習得するには才能と時間を有するようだ。

騎士団でも使える人は限られる。

天恵による身体の治癒を出来るものを騎士団内での役職で言う、『聖者』という物に分担されるらしい。

聖者は天恵の技術が高く、「物の増築」の応用で

天恵を直接的な攻撃として使うことが可能なくらいだそうだ。


私は身体強化のみを教えて貰っていた。

ディシは教えるのがとても上手く、私はすぐに身に付く感覚が感じられる。



練習から3日ほど経った頃。

私は村のみんなのところに来ていた。

そして、花を添えて手を合わせる。村に住んでいた頃とは全くの違った生活。

とても楽しく充実している。皆とここで暮らしたかったな と思ってしまう。

私が霊園を出ると門に一人の女性が立っていた。

私と同じくらいの背の高さかそれより少し小さいかくらいの可愛らしい顔の女性。

風に靡く腰まで伸びた綺麗な白髪は美しさと一緒に不気味さもあった。


「ルシニエ・ヨーセルさんですか?」


聞くと心が落ち着くような声と口調に私は魅了されていた。


「そうです…あの、あなたは?」


「私はスタシア・マーレンと申します。ディシ君に頼まれてあなたに会いに来ました。」


「ディシ君…」


どうやらディシととても親しいようだ。

それに、ディシにお願いされて会いに来た?

この人は一体誰なのだろうか。


「ヨーセルさんは今、特別試験のために天恵の使い方を学んでいるんですよね。それで天恵の使い方を

ヨーセルさんに教えてあげて欲しいとディシ君に頼まれたんです」


なるほど、ディシは守恵者であるからそれなりに忙しいから当然と言えば当然だ。なんなら今までずっとディシに教えて貰っていた私はだいぶ恵まれていたのか。

しかし、このスタシアという女性はよく分からないがとてつもなく圧を感じる。何かわからないが私との間にある圧倒的な差、的なものを感じる。


「…なるほど。ディシ君が言っていたことがわかりましたね。才能の塊ですね!それじゃ、早速一緒に訓練しましょ!」


陽気な人だな と思いつつスタシアさんの後をついて行く。

着いた場所は南国の小さめの草原だった。中央には

デカ目の木が立っている。


「ここにいるとすごく心が安らぐんですよね。

この国の子供たちがよくこの場所で無邪気に遊んで笑って、だからよくここに来ちゃうんですよ私。」


「確かに落ち着く場所ですね」


「ふふっ、そうでしょう?私からの訓練は一つだけですよ。この木と天恵を共有することです!自分の天恵をこの木に流し込む、そしたら木の方の天恵もヨーセルさんに流れる。それを繰り返すんです!」


「それだけ…ですか?」


「はい!これを試験の日まで続けるだけです!頑張ってくださいね!私はこの後、用事があるので失礼しますね!切り上げるタイミングとかは任せますので!」


もう少しきついものが来るのかと思ったがそんなことは無かった。と思っていた私が間違いだった。

早速、天恵を木に流し込もうとするが強い抵抗にあい、無駄に天恵を消費しただけになった。

ここで私は気づいた。この木は1つの神樹なのだと。

(一筋縄ではいかないということか)


私はスタシアの言葉を思い出す。

ここにいると心が安らぐ…か。そういえばスクリムシリに襲われてから私はずっと焦っていた気がする。

早く騎士団になって皆の仇をうちたい。そればっかりだった。周りを見渡すといつの間にか子供が遊んでいた。曇りない笑顔で駆け回っている。

そっか、この木はこの光景をいつも見ているんだ。

(スタシアさんが言っていたこの木と天恵を共有するというのはつまり、「意思」を共有するという事)

私はもう一度天恵を木に流し込もうとする。

今度は焦らずに心を落ち着かせ、遊ぶ子供を見守るかのように優しく。

すると、木の方ならも天恵が流れ込んでくる。

この木と感覚を共有していると実感する気がする。



2日後

(ヨーセルさんどうでしょうかね、さすがに2日ではまだ難しかったでしょうか…。

…これは予想以上でしたね。木の天恵全部が元はヨーセルさんの天恵になってますね。)


「お疲れ様です、ヨーセルさん」


スタシアがいつの間に背後に立っており、私は少し ビクッ と驚いてしまう。


「スタシアさん…」


「正直、この木との天恵の流れを共有することは無理だと思っていました。しかし、それすらも容易に出来てしまうとは…さすがディシ君が推薦しただけはありますね!それでは身体強化をお教えしますね!」



読んで頂きありがとうございます!

キャラが台詞を言う時に間を開けてみました。

これからはこんな感じで書いていきます!

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