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天使とサイナス  作者: 七数
2章 【番】
27/58

25話 「純粋な心」

「チッ…ここに来てからイライラしてばかりだ」


ルシニエと手分けしてこの国の構造を把握するため、

俺は東回りでマリオロを見て回っている。

マリオロという国はユーランシーより発展しているとは思うが幸福度で言うならばユーランシーの半分にも行かないだろうな。

何しろ、空気が汚い。


それにしてもイライラが止まらない。

あのルシニエとか言う無能は、なぜあんなにも手間をかけさせるのが上手いんだ。

俺とあいつを組ませたメアリー女王の意図が未だに理解ができない。

メアリー女王の事だから、守恵者をよく知ってもらうためだから俺と組ませるなんてそんなくだらない理由じゃなく、もっと深い考えがあるのだろうが…

イライラするもんはする。


『私の言ったことは正しいです』


あの真っ直ぐに俺の顔を見て反論してきた時の顔…。

あの人を思い出してしまう。


俺が歩いていると路地裏で大人数人が何かを囲っているのが見えた。

俺は足を止めてじっと見つめると、その大人数人は

まだ10の歳も行かないくらいの女の子を囲って蹴飛ばして笑っている。


俺は関わらずにそのまま無視をしようとする。


『ですが、苦しんでいる子がいるのにほっとけと言う方が私にはできないことです』


だがルシニエが言った言葉を思い出し、また足を止めて路地裏の方を向く。


「チッ、」




「お願いします…やめてください…許してください…

助けてください…」


「汚ぇクソガキがよォ!この国の汚点野郎が!」


「てめぇみたいなガキは生きている価値がねぇんだよ!」


「おい、お前ら。」


「あ?なんだおまっ」


俺は男数人の顔面に1発ずつ拳をぶつける。

全員が後方へ吹き飛んで壁にぶつかりそのまま意識を失う。

俺は女のガキを見下ろしながら睨みつける。


(骨は折れては無いが、全身の至る所にアザがあり、打撲している。

擦り傷から感染症を引き起こす可能性もあるな。)


痛がりながらも俺のことを怖がる女のガキに背中を向けてしゃがむ。


「乗れ。運んでやる。」


「え…?」


「早くしろ、俺はガキが嫌いなんだ」


「は、はい…」


ガキは俺の肩を掴んで背中に乗る。

ガキを支えながら立ち上がり、俺はひとまず貸家の方に向かう。


「お前、名前は」


「…ないです」


「そうか。家は」


「…ないです」


「親は」


「分かりません…」


(マリオロに来てから異様に子供が多いことに違和感は感じていたが…。

これはここ最近の出来事と考えた方がいいな。

そして、マリオロでここ最近の出来事と言えば…

スクリムシリの襲撃か…。

恐らくだが、あの貧しい子供たちは全員、スクリムシリの襲撃によって親を殺された。

だが、なぜあそこまで暴力を受けるのか…。

マリオロの治安の問題なのか…それとも…)


「おじちゃん…いい匂い」


「次おじちゃんと言ったら捨てるぞ」


「名前、なんて言うの?」


「…アレル」


「アレル…かっこいい名前…」


「…そうか」


調子が狂うな…。

女のガキを相手にしたことが無いが為に扱いに困る。

貸家に着いたらルシニエにでも任せておけば良いか。

そもそも、このガキは中心街に入れるのだろうか?


色々とこのガキのことを考えていたら グゥー という音が聞こえてくる。


「お前…」


「お腹すいちゃった…」


ったく…ガキは自分の感情に正直すぎるからムカつくんだ。

とりあえずこの汚らしい身なりでは、店に入れるかも分からない。

服屋に寄るか…。


服屋に入ったは良いものの…全くわからん。

何を買ってやればいいんだ…

こういう時にミリィノかスタシアがいれば良いんだがな…。


「何か困ってますか?」


俺が女の子用の服のエリアで突っ立って悩んでいるのが怪しく見えたのか女性に話しかけられる。


「妹が転んで服を汚してしまってな。

新しい服を選ぼうと思ったが、俺は女性物に疎くてな。」


ここで俺の妹ではなく、知らない貧しい子供と言ってしまったら恐らく追い出されてしまうだろう。


「あ、びっくりさせてすみません!

私、別にここの店員では無いですよ!ただ、すごく悩んでいる様子だったので」


「そうか…すまないな。勝手に勘違いしてしまった。」


「いえいえ!紛らわしい私が悪いので!」


ニコッ と笑うその笑顔はどこかスタシア味を感じさせる。


「私はミュレイと言います!実は、この国には冒険途中で訪れたんです」


「冒険者か…。どこから?」


「ここからずっと西の方角からですね。」


(スクリムシリの被害が比較的少ない方角か…)


「えーっと…」


「アレルだ」


「アレルさん!アレルさんはどちらから?」


「ユーランシーからだ。野暮用でな」


「へぇ…ユーランシーからですか…」


なぜか少し笑う目の前の女は不気味さを感じる。

とりあえずこいつの服を選んでやらないとだが…

ここは女性の意見を聞かせてもらうとするか…。


「良ければ、この子の服を選んでくれないか?」


「もちろん、良いですよ!」




「助かった。俺には思いつかないようなコーデだな。」


「お役に立てたなら良かったです!

それでは私はこの辺で!またね!」


ミュレイは俺とこの子に別れを告げて去っていった。


「それにしても…服だけでここまで変わるんだな。」


だいぶ出費は痛かったが、まぁ許容範囲だな。

髪は少しボサボサだが、外見だけ見たらお金持ちのガキの容姿だ。


そして、俺は簡単な食事のできる店へと入った。

意外と種類が豊富でどれにするか悩ましい。

ガキの方に目をやると春巻きを食べている他の客を凝視していた。


「あれ食べるか?」


ガキは小さく頷く。

俺は春巻き4個を2セット注文した。

春巻きが届き、フォークで春巻きを刺して一口食べるととてつもなく驚いた顔をしていた。


「美味いか?」


そう聞くとガキは噛み締めるように頷く。

2個、3個、4個と次々に食べてあっという間に1セットを完食する。


「俺の分も食べていいぞ」


俺がそう言いながら皿をガキの方へと滑らせると

申し訳なさそうな顔をしてこちらを見る。


「ガキが遠慮するな。俺は腹が減ってない。」


すると、ガキはもう1セットを次々と食べる。

相当お腹がすいていたのだろうな。

あっという間に完食してしまった。

ガキは満足そうな顔をしながら水を飲む。


「お腹…いっぱいか?」


「…はい。」


ハッ としながら恥ずかしそうに小さくそう答える。

ガキのくせにそんなことを気にするのか…。

このくらいの歳で女性としての作法を意識するなんて相当頭が良くないと出来なそうだが…。

ともあれ俺とガキは店を出て中心街へと向かう。


中心街の身体検査に差し掛かった。


「アレル様…そちらの子供は?」


「どうやら中心街に住んでいる様なのだが、迷子になってそのまま帰れなくなった所を俺が見つけた。」


「左様でしたか。でしたら、問題はございません。」


案外すんなりと通れたな。

貸家の方へ向かっていると後ろから聞き覚えのある不愉快な声に呼び止められる。


「アレルさん!アレルさんも戻っていらしてたんですね。」


「チッ…」


「どうして舌打ちするんですか!って…そちらの子は?」


「貸家に戻ってから話す。」



ひとまず貸家に着き、俺とルシニエとガキは1階の食事スペースの椅子に座る。


「こいつは路地裏で大人数人に囲まれて暴行を受けていたから保護した。

名前も家も無く、親もいない。

ひとまずここに連れてきた。」


「そうだったんですか…。先程…少し服の下が見えたのですが、アザが…」


「ああ、ひとまずこいつを風呂に入れてやれ。

話はそこからだ。」


「分かりました。あ、その前に名前決めませんか?」


「勝手に決めておけ」


するとガキが俺の方に寄ってきて裾を指先で掴んで引っ張る。


「なんだ」


「アレルに…名前…決めて…欲しいです」


まだ俺のことが怖いんだろうな…、ビビりながら俺にお願いをしてくる。


「なぜ俺が決めないといけないんだ」


冷たくあしらうとガキは悲しそうな顔をする。

俺が悪者みたいな感じになっているのだが?


「アレルさん!せっかくなら付けてあげてくださいよ!」


「ったく…」


女のガキに名前なんて付けたことが無いし、そもそも

どういう名前が正解なのかすらも分からん。


(透き通るような青い瞳…汚れや傷が付いているがそれでも綺麗と思わせるほどの肌。

美しさを持つ女性ならば、七大天使の一人のミカエルを少し変えて…)


「ミカリエ…はどうだ?」


「おぉ!とてもいいと思います!ミカリエですか!」


「ミカリエ…ふふっ、嬉しい…」


ガキは頬を弛めながら喜ぶ。


「お前、笑えるんだな」


俺がそう何気なく言った言葉…それにミカリエは急に顔色が悪くなり地面に膝と額を擦り付けて土下座をする。


「ごめんなさい。ごめんなさい。笑ってごめんなさい。

殴らないでください。もう笑いません。許してください。

お願いします…」


泣きそうな声で土下座して謝り続けるミカリエに俺は

とてつもなくショックを受けた。

まだこんなにも小さな子供が笑うことに対して恐怖を抱いてしまっていることに。

ずっと酷いことをされてきたのだろう…。


俺が言葉を発しようとしたら先にルシニエが声を出す。


「ミカリエ…顔を上げて」


優しい声…ミカリエはそっと顔を上げる。

ルシニエはミカリエのことを抱き寄せる。

そして、


「謝らないで…ここにはあなたを傷つける人は誰もいない。

笑ったっていいよ、泣いたっていいよ。

我慢なんてしなくていいの。

ミカリエには私達がついてるから」


ミカリエを抱きしめながらルシニエは安心させる言葉を沢山かける。

次第にミカリエの目から涙が流れて、泣き叫ぶ。

俺は、子供の涙に初めてここまで心動かされたと思う。


「風呂に入れてやってくれ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アレルがミカリエという少女を拾ってきた。

お風呂場で服を脱がせてあげるとアザだらけだった。

骨は折れてはいないみたいだが、腕やら太ももやらが腫れていて痛々しかった。

私もついでにお風呂に入ろうかと服を脱ぐ。


ミカリエの全身を傷に痛まないように優しく綺麗に洗ってあげる。

髪がだいぶ汚れている為、念入りに洗った。

お湯で流すと美しい赤みがかった色だった。

赤っぽさがあるだけでほぼ黒色。

黒紅色とでも言うのだろうか。

綺麗に真っ直ぐと伸びる髪は濡れていても分かるくらいには質が良かった。

ミカリエの全身を洗ったあと、自分の身体も洗って一緒にお湯に浸かる。


「お姉ちゃん…アレル、好き?」


唐突にそんなことを言い出す。

え、この歳の女の子ってもう恋バナとかできちゃうお年頃なの?

私がこれくらいの歳の時なんて、虫追いかけ回していた記憶しかないのだが…。


「んー、尊敬はしているけど好きではないかな〜?」


(はい、嘘です、あんま好きじゃないです。

だって怖いもん。)


「そっか…」


「どうしてそれを聞いたの?」


「ミカリエね…アレル…好き」


なるほど…。まぁ確かにアレルがミカリエを連れて歩いているのを見てめちゃくちゃ驚いたが、その後にこの子を保護すると聞いてさらに驚いた。

アレルは表面的には怖くて厳しい人なのだろうけど

本当は優しい人なのだろうと感じた。

ミリィノの言っていた通りだ。

きっとミカリエにはそれが分かっているのだろう。


(アレルさんはきっと、子供に好かれやすいタイプなんだろうな…)


「そっか!なら、アレルさんからも好きになって貰えるように頑張ろ!」


「うん!頑張る…。でもね、ミカリエ…人と話すの…

苦手、」


「大丈夫!私がサポートするね」


「ほんと?」


「ホントだよ」


「ありがと。お姉ちゃん」


「うん!いいよ!」


あー、癒される〜。ここに来て正直ムカついてしまうことばかりだったからこういう癒しの存在がいるだけでこうも心が浄化されるのか。

恐るべし、純粋な心。


「お姉ちゃん…お胸…おっきいね」


「へ?ど、どうしたの!?急に」


「まだね、お母さんがいた頃に…お胸が大きい女性は魅力的だって聞いたことがあって…」


(なんて教育をしているのだろうか。)


「ミカリエ…」


ミカリエは自分の胸の部分を両手で触りながら悲しそうな顔をする。

こんな小さいのに胸のこと気にするなんて…、


「ミカリエ、大丈夫。ミカリエも成長するにつれてどんどん大きくなっていくよ」


ここは大人の余裕を見せながら安心させるべきだな。

私の周りには基本的に胸が大きめの人しかいない…。

まぁ、スタシアは別として。

説得力はあるはずだ…


「ミカリエ…おっきくなる?」


「うん!なるよ!」


「魅力的になれる?」


「もう魅力的だよ」


「えへへ、やった!」


(可愛い)



お風呂から上がりミカリエの身体をタオルで拭いてあげる。

髪を入念にタオルドライして、私がユーランシーから持ってきた保湿液を塗る。

やはり、とても綺麗な髪だ。


「うん!だいぶさっぱりしたね!」


「ありがと!お姉ちゃん!」


「どういたしまして!」


服はどうしようかな…、

アレルが買った外での服しか無いし、下着も無い。

いくら子供だからと言っても下着を着ないで暮らすのはさすがに嫌だろうし。

アレルに相談しようと風呂場のドアを開けると子供用の服一式が置かれていた。


(もしかして…アレルさんが)


上も下も下着も置かれていた。

さすがに下着は男の子用だったがそれでも今は十分だ。


(やっぱり、子供には優しいんだなぁ)


そう思いながらミカリエに服を着せてあげる。

風呂場を出て、食事スペースに行くがアレルの姿は無く、置き手紙だけがあった。


『ノルザレン城に用がある。待機しておけ』


そう書かれた手紙。


「アレル…は?」


ミカリエが私の服を引っ張りながら聞いてくる。


「少し、お出かけしてるんだって。きっとすぐに戻ってくるよ」


「よかった…」


「ミカリエ…眠くない?」


話を聞く限り、ミカリエは寝るのを辛い環境にいたと聞く。

ろくに睡眠も取れていないのではないだろうか。


「眠い…」


「アレルさん帰ってくるまでお姉ちゃんの部屋のベッドで寝よっか!」


「いいの?」


「うん!もちろん!」


私はミカリエの手を繋いで2階に行き、私の部屋のベッドで寝かせてあげる。

さすがは中心街の貸家なだけあってそれなりに高級なベッドだ。

恐らく、ユーランシーよりも上品質な素材でできている。


ミカリエはベッドに寝っ転がって数分で眠ってしまった。

相当疲れてしまっていたのだろう。

私はお風呂に入ったが、せっかくキッチンがあるのだから少し料理をしようと食材を買いに外へ出る。


中心街を見て回っているが、どれもこれも高級食材ばかりだ。

正直、料理に自信があると言われれば全然そんなことないためそこまで高級な食材は使いたくない。


どうしようかと考えながら歩いていると、中心街には似つかわしくない少し古びた建物があった。

なぜだか異様に気になってしまい、その建物に入ると中には色々な食材が並んでいた。

しかも、高級ではなくユーランシーでも売っているような日頃から食べるような食材。

値段も普通のお店で売っている位の値段だ。


すると中から店主が出てきた。

結構なお年寄りで頭は白髪でてっぺんが禿げている。

眉毛も髭も白く口と目が毛で覆われて見えない。


「おや、お客さんかい…珍しいのぉ」


「こんにちは。」


「見ない顔だねぇ。他国の者かい?」


「はい、ユーランシーからです」


「ユーランシーか…懐かしいのぉ。

よく見たら、天恵が流れておるな…」


私は即座にこのおじさんから距離を取り、腰に付けている剣を抜きおじさんに向ける。

マリオロに向かう途中の馬車でアレルから注意を受けていた。

ユーランシー以外の国でもしも 天恵 を口にするものが現れたらそれは知性あるスクリムシリの可能性が高い と。


「天恵の名をどこで知ったんですか。

答えないのであればあなたはここで命を絶つことになります」


私はおじさんを鋭く睨む。

だが、おじさんは狼狽えることがなく、答える。


「ホッホッホ。正しい反応じゃな。

ユーランシーの兵はとても優秀だという証拠じゃ。

紹介が遅れてすまんのぉ。

わしは、元々ユーランシーで騎士団員として動いていた者じゃよ。

元騎士団長の ジェノワルサー・マザック。

ナルバンは元気かのぉ?」


今、自分でも分かるくらいに腑抜けた顔をしている。

今なんと言った…?元騎士団長…?

嘘?いや、でも天恵の事とナルバン団長を知っているということはユーランシーにいたという事は確かだ。

なら、本当に…?


「えー、と…マザックさん?は本当に騎士団長だったのですか…?」


「もう昔の事じゃ…。今や筋力も衰え、寿命が近く、

天恵だってまともに使えんよ。」


私はすぐさま片膝を地面に着けて頭を下げる。


「申し訳ありません!失礼な態度をとってしまいました。」


「ホッホッホ、気にすることでは無い。

わしはもう引退している。それにここはユーランシーでも無いからのぉ」


「その…どうしてマリオロに?」


「前々女王のアシュリエル・カレア女王を守ることが出来なかったからじゃよ…。

カレア女王は心優しい方だった。

だがな…国王会議の帰国中に 天帝慈刑人 の襲撃を受けて亡くなられてしまった。

その際の防衛がわしともう1人…ディシという若者だったのぉ。」


「ディシさん!?!?」


「なんじゃ、あやつはまだ守恵者としてやっていけとるのか…。

わしの選択は正しかったのぉ。

天帝からカレア女王を守れず、なのにわしとディシは生き残ってユーランシーへ帰国した。

その事を国民や騎士団員達からとてつもなく責められたのじゃよ。

その時に、わしもディシもユーランシーから追放されそうになった。

じゃが、わしはディシという存在はユーランシーに必要不可欠と思い…

『ディシの責任では無い!俺の命令のせいでディシが上手く立ち回れずカレア女王を守れなかったんだ!』

そう言って、わしだけが国外追放となったのじゃよ。」


「そんな事が…」


「ディシは元気にやっとるのか?」


「はい…すごい活躍なされています。私もディシさんにこの命救われました。」


「そうか…わしの判断は正しかったんだな…。」


表情は見えながどこか嬉しそうな様子を見て、私も自然と表情が緩む。


「そうじゃった…ここに来たということは食材を買いに来たのじゃろ?

タダで貰っていくといいぞ。ここで会えたのは何かの縁じゃ。」


「そ、そんな…悪いですよ」


「気にするな。老い先短いもうすぐで90になる爺さんの親切は素直に受け入れるもんじゃ」


そう言われたら断ることなんて出来ない…。

というか、もうすぐで90!?

つまり、今は80後半という事だろうか…。

そうなるとディシって…

とりあえず、今晩のご飯に必要な食材を袋に入れる。

そして、袋を持ちながら店の外に出る。


「こんなに…すみません。」


「ホッホッホ、気にするでない。お嬢さん、名前は?」


「ルシニエ・ヨーセルと申します」


「ヨーセルか…良い名前だ。この国にはわしとお主を含めて天恵を宿しているものが4人おるな。

お主の連れは相当のやり手じゃな。がんばりーよ」


そう言いながらおじさんはお店の中へと入っていく。

私はその後ろ姿に深くお辞儀をする。

予想にもなかった出会いだ。

なんだか特別な気分のまま私は貸家へと戻る。


この時点で、おじさんの発言のおかしな点に気づくべきだった。

これは意外な出会い…。

マリオロでは色んな出会いがありますね!


読んで頂きありがとうございます!


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