0話 『意思と天恵』
「今から何千年も前にある一国の美しい女王がいました。
女王は民から愛され、また女王も民を愛していました。
しかし、女王が26の歳をすぎた時にある不治の病に
罹ってしまいました。
民は少しでも女王の病を癒すために毎日、教会で祈りを捧げていました。
女王の病はそれでも癒えることは無く日々弱りきっていきました。
そして、病に罹り五月ほど経った頃に
女王は危篤状態に入り、健康な頃の姿の面影もありませんでした。
そんな中でも民はいつものように祈りをしていた。
そんなところに一筋の淡い希望が差しました。
民の元に天使が舞い降りたのです。
綺麗な白髪を靡かせ、優しく笑う少女のように幼い顔をした女性は言いました。
「女王を救いましょう。その代わりに試練を課します。
あなた方の『意思』を見せてください。
そして、迫り来る脅威に勝利してください」と。
天使は、両手を広げると眩しくも眺めていたくなる
ような暖かい光を出しました。
そして、光が収まると天使の姿はどこにもありませんでした。
民は急いで女王の元に向かうと、女王の痩せこけた
体が嘘のように元通りになっていました。
女王は民に泣きながら感謝を伝え
「私は…私たち一族は、民のために尽くすと約束します」と言い、より民と女王の関係は良くなりました。
しかし、それから数ヶ月のことでした。
女王はいつものように街を歩き、民に笑顔で挨拶したり、民からの贈り物を貰ったりしていました。
その時、一人の民が慌てた様子で女王の元に行き
言いました。
「人が…大勢が…殺されました」
女王がその民に案内されて着いた場所には、男性も
女性も子供も家畜も関係なく血を流して、死んでいました。
生き延びた民の話によると、「見た事のない姿をした
超巨大な獣が殺戮の限りをしていた」と。
女王は民を守れなかったことによる、
自責の念にかられ一人で化け物に立ち向かおうとしました。
そんな女王の固い『意思』を見て、女王と共に立ち上がることを決意し、化け物に立ち向かいました。
そして、事件から三月後、また襲来の時が来ました。
しかし、前に襲ってきた巨大な獣とは違い我々と同じ人の姿をした『何か』が、大量の異様な姿をした獣を
連れていました。
人の姿をした『何か』は、成人男性ほどの身長に
30代くらいの姿をしており、前回の巨大な獣ほどの
脅威は無いように思われました。
だが、その者は意思疎通が出来たのです。
それがより、残虐性を増させました。
「我は、天使を崇高する者・サンバレス」
立ち向かう民は次々と殺され、獣に喰われていきました。
女王自身もサンバレスと名乗る男に、致命傷を負わされました。
人型の化け物…サンバレスは女王にトドメを刺そうと、女王に刃を振り下ろすと一人の民が
女王の前に立ち、庇い右肩から左腰にかけて切断されてしまいました。
「ア…アシュリ…エル…」
女王を庇った民は女王の婚約者であったのです。
目の前で愛する婚約者が殺されてしまった女王は
怒りと目の前の化け物への殺意で自我を失いました。
そして、自我が戻った時には人型の化け物の上半身と下半身は離れており、周囲には大量の獣の死体がありました。
女王自身もボロボロであり、その場で倒れました。
次に目が覚めた時、女王は城の医務室におり、
治療され一命を取りとめていました。
しかし、今までの女王ではありませんでした。
戦いでのショックで以前のような優しい笑顔は無くなり、もう一つ…圧倒的な『力』を持っていました。
それから、化け物はスクリムシリと呼ばれそれに対抗するべく女王はその身が老いて果てるまで戦い続けました。
女王の寿命が近づいた時、女王はこの国に産まれてくる民にある呪いをかけました。
その呪いとは『天恵』という力の源です。
それ以来、この国の民は天恵によりスクリムシリに対抗する力を蓄えていきました。
そして、女王の力は 始まりの意思『先駆の意思』と
呼ばれるようになりました。
そして今、この国ユーランシーは女王の意思を受け継ぎ、戦わなければなりません。民のために」
長い演説を終え、下を見ると民から大きな歓声と拍手が飛び交う。
今話した話は実話であり、私 アシュリエル・メアリーの先祖に当たるアシュリエル・ミレーの代の話だ。
この国の民が他国と違い、天恵という力を所有していること。
今もなお、驚異となっているスクリムシリに対抗する手段であること。
私は一礼をし、中央城のホールディングスの中へと歩みを始める。
読んでくださりありがとうございます!
序章なのであまり長くは書きませんでした。
書くことに慣れている訳では無いので、
不自然な点などを見つけたら教えて欲しいです。