095 技能牧場と、今後のこと
自由なドニー様を見て嘆息しましたが、隣に座るイザヤ様に伝えます。
「イザヤ様。ギルド長様の公開処刑が二日後に行われるようです」
「二日後? そっか、間に合ったんだ」
「それは喜ばしいことなのですが、実質あと一日半で解決しなければいけません。ギルド長様はどちらにいらっしゃるのでしょうか」
「んー……たぶん、お城の牢屋とかだと思うけど……」
ギルド長様を助けるために、わたしの自由がなくなることは良いのです。しかし、助け出した後のことを考えないといけません。
わたしが勝手にギルド長様のことはドニー様の策略だと思っていますが、国が進んで冤罪者は出さないでしょう。
国家反逆がイザヤ様の冒険者等級を下げたこと、情報関係がテイマーのことを調べたから。そう考えるとあながち嘘の罪状ではありません。
本当にそれが適用されるべきなのかは別として。
「イザヤ様。今はとりあえず、技能牧場を開拓しようと思います。<スキルⅡ>に関しては全て使い切ってしまったので、睡眠を取る前に少しでも数値を上げておきたいです」
「わかった。おれは今後のことを考えているよ」
イザヤ様がお隣にいる安心感を抱きながら、わたしは<発育>を使った猫型友獣と、鳥型友獣の開拓を始めます。
まずは、ガットからですね。
ガットは聴覚を向上してくださる友獣ですので、なるべく進化させたいです。身近にはいませんが、もしかしたら断末魔を聞いてしまって聴覚を失った元冒険者の方がいるかもしれません。
ガットの技能牧場を開くと、名前の隣に<+6>とありました。10秒で一回なので、合計60秒ほど使用したのでしょう。
ガットは進化を目指しつつ、スキルを開拓していきます。
<スキルⅠ>の右から、五番目から九番目。
<スキルⅢ>の右から二番目。
<スキルⅢ>は、<健康>。これは主の健康を常に保つそうで、状態異常も効かないし、疲労感もないそうです。
わたしは体力値が他と比べて低く、どうしても疲れてしまいがちでした。<健康>を使えば、その心配もなくなりますね。
続いて、ペリカの開拓です。
ペリカは名前の隣に<+28回>となっていました。
ペリカも視覚を向上させる友獣なので、進化を目指しましょう。風属性のマークは、少々難しいですが。
ペリカの技能牧場を確認します。<気配探知>を取得したときに<スキルⅠ>も<スキルⅡ>も、一番右端を選択しました。
わたしは不用意に技能牧場の画面に触らないようにしながら、薄目を開けて風属性のマークができるかどうか考えます。
先の方が長い、つむじ風という感じで行けそうな気がしました。ダメなら、そのときにまた考えましょう。
<スキルⅠ>が右から、二番目から六番目。<スキルⅡ>が右から六番目と七番目。
<スキルⅢ>が右から七番目と八番目。
<忠誠Ⅰ>が右から八番目。
<器用Ⅰ>が右から、八番目から六番目。
<技能Ⅰ>が右から、六番目と五番目。さらに八番目から十番目。
<幸運Ⅰ>が右から六番目と七番目。さらに十番目。
<敏捷性Ⅰ>が右から十番目と九番目。
<防御力Ⅰ>が右から、九番目から五番目。
100万以下は端数切り捨てとなりますので、ステータスで変わったのはスキル数のみということになります。
進化をさせたくて技能牧場の開拓を進めました。今使えない状態になっていた<スキルⅡ>は、合計<+13>です。
現段階で気兼ねなく使えそうなのは、回数が関わる<擬態>のみということになりました。
13秒では、すぐに効果が切れてしまいます。実質、睡眠で回復するしかないようです。
技能牧場の開拓を終え、イザヤ様に今後の方針も含めて報告しました。
しかし、イザヤ様は眉を寄せます。
「エミリア。進化も確かに重要かもしれない。でも、そんなに頻繁に進化はしない方がいいと思う」
「なぜでしょうか」
「進化は、エミリアのステータス値の99%を譲渡しなくちゃいけないでしょ? ファラのときは上限値まで行っていたから、100万残った。でも、上限値に達していなかったら? <+%>があるから100万のままってことはないだろうけど、それでも進化は上限値まで高めてからの方が良いと思うんだ」
「ですが四桁あれば、充分数値としては高いと思うのですが」
納得がいかないわたしに、イザヤ様は鞄から取り出した紙と筆記具で説明してくださいます。
「前に200万だったから、それを基準に考えるよ?」
時機良く二体の友獣が進化できると仮定しました。
200万から99%譲渡は、残りが2万。さらにその2万から99%譲渡すると、残りはたったの200。
それぐらいの数値だと、ゴールド級を取得して少し時間が経ったくらいの数値だと言います。
一般的な冒険者であれば、その数値でも良いのかもしれません。ですがわたしは、テイマーなので、自分の身を守るためにも、四桁は欲しいところ。
「……申し訳ありません、イザヤ様。こんなに数値が低くなってしまうものなのですね」
「まあ、進化が駄目だってわけじゃなくてさ。進化の時機が重要かなって」
「確かに。イザヤ様の仰るとおりです」
イザヤ様に言われていなかったら、わたしはどうなっていたでしょうか。
今は、<幸運、100万>なので滅多なことは起きないと思います。ですが、もしかしたらその数値が二桁ぐらいに落ちているときに進化の時機が来るかもしれません。
そして不運というものは、起きて欲しくないときに起こるから不運なのです。低い数値のときに何らかの騒動に巻きこまれるかもしれません。
わたしが気づいてもいなかったことまで考えてくださるイザヤ様には、感謝しかありません。
ステータス値の理解を深めましたので、次はギルド長様のことを考えましょう。
現在のステータス
<攻撃力、100万>
<防御力、100万>
<敏捷性、100万>
<幸運、100万>
<技能、100万>
<器用、100万>
<体力、85>
<スキルⅠ、552>
<スキルII、353>
<スキルIII、282>




