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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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081 オルビの調査


 イザヤ様と合流できましたので、さっそくオルビの街中を調査したいと思います。

 イザヤ様も仰っておりましたが、オルビの街の方々は正気を保っているようなお方がいらっしゃいません。

 まず、お話ができる方を捜すことから始めましょう。


 イザヤ様と、オルビの街を歩きます。

 深夜に見た街とは違って、白壁に反射する冬の日差しが眩しく思いました。

 緩やかな傾斜があるオルビは、建物と建物の距離が近く、路地裏もたくさんあります。路地裏には明るい場所と暗めの場所がありますが、どこの路地裏にも鉢に植えられた花が置かれていました。

 路地にまで色彩があるのは素晴らしいことだと思いつつ、ある建物の玄関口に飾られていたお花に違和感を覚えます。


 ここは貿易港を持つので、他国のお花も入ってくるのでしょう。見たことのない白いお花がありました。

 見たことがないお花だから目に止まったわけではなく、形が気になるのです。開花直前というような状態ですが、このお花はこれが普通なのでしょうか。


「エミリア? 何を……ああ、ゲッカビジンだね。この花は甘くて上品な香りがするらしいよ」

「香り? それほど強い香りは一切しませんが……」

「え、そうなの? おかしいな、本で見たときにはそう書いてあったんだけど」

「イザヤ様。このお花はこのような咲き方をするのでしょうか」


 わたしが疑問を投げると、イザヤ様はこのお花がおかしいということに気がついたようです。


「ゲッカビジンは、夜、月の下で開くからそういう名前がついているんだ。つまり、夜だけ開く花。今は朝だし、香りがないこともおかしい」

「まるで、このお花の時が止まっているようです」

「そうだね。でも、だとしたらどうしてだろう」

「イザヤ様。一つ、実験をしてみますね」


 わたしは覚えたばかりのスキル<発育>を試してみます。

 ゲッカビジンに右手を向け、スキルを使うと念じてみました。しかし、まるで何かに守られているかのように、パンっと手が弾かれてしまいます。

 その状態を見たとき、今朝のことを思い出しました。


「イザヤ様。これは、本格的に調査が必要かもしれません。今朝、わたしは寝ぼけているだけだと思ったのですが、おかしなことがありました。起きたばかりなのに、寝具が整えられていたのです」

「それはまるで、時が戻っているみたいだね」

「はい。わたしもそう思ったのですが、もしかしたらこのお花のように時を止められていたのかもしれません」

「もしそうだとしたら、オルビの街全体に何かが仕掛けられていることになる」


 オルビは貿易の街。ルコよりも大きな港がありますので、街も大きいです。

 その街全体に仕掛けられている、何かとは。

 そんな大規模なことができる人を、わたしは一人知っています。


「……イザヤ様は、ドニー様とのご関係はどのような状態でしょうか」

「ドニーさんと? 一時期同じパーティーだったってだけかな。からかわれたこともあったし、どちらかと言えば苦手かな。どうして?」


 わたしは、ドニー様が何かをしようとしているということを伝えます。

 リンウッド辺境伯領であったことはすでに伝えていますが、そこで見たドニー様のお力のことは伝え忘れていました。


「ドニーさんは魔術師長だからなあ……確かに、ドニーさんくらいしか街全体に何か仕掛けるなんてできないと思う。でも、なんでだろう?」

「ドニー様から、イザヤ様と一緒にアラバス王国で発生する魔獣の問題を解決してと言われています。そこに、何か解決の糸口があると思うのですが」

「エミリアが魔獣の問題を気にかけることが、ドニーさんのやりたいことに繋がる?? まったくわからない。何がしたいんだろう」

「リンウッド辺境伯領にいるとき、魔法で描かれたような線がありました。この街にももしかしたら何かあるかもしれません」

「そうだね。捜してみても良いかもしれない。でも、もし何かを仕掛けているのだとしたら……おれ達は、ドニーさんの術の中にいるってことになるよね?」


 イザヤ様が、恐ろしい可能性を仰います。ですがわたしは、少し違うような気がしました。


「イザヤ様。リンウッドでは術が発動するのはドニー様の合図か、ドニー様が定めた何かをすることによって変化がありました。今、もしかしたらドニー様の術の中かもしれません。ですが、もしそうだとしたらもう少しわたし達の考え方や行動に変化があると思うのです」

「確かに。ドニーさんがここで何をしようとしているのかわからないけど、おれ達に何も影響がないのは……」

「<防御力>が高いからではないでしょうか」


 防御力値は高ければ高いほど、冒険者の身を守ります。それはもしかしたら、精神的な何かも防げるのかもしれません。


「そうかもしれない。エミリアはもちろん、おれも強くなるためにレベル上げを意識したし」

「魔法と思われる痕跡は、どこかきっかけとなる部分を意識できないとわかりませんでした。ひとまず、捜してみましょう」


 防御力値が高ければ動ける。低いと術に捕らわれてしまう。そんな可能性を考えながら、イザヤ様と術の手がかりを捜します。

 仕掛けるとしたら街の端の方に何かあると思い、移動しました。

 すると、海に近い倉庫街のような場所で自由に動いている方々を発見します。話しかけようと思いましたが、イザヤ様に手を引かれて建物の影に隠れました。

 イザヤ様が指し示す方向には、白い首輪をつけた半魚人型魔獣(サメシュペル)がいたのです。






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