079 ステータス上昇の推奨は、します
ルコの街を「生やした」わたしは、その騒ぎに乗じてサッと街を出ました。
そしてラゴサとは反対方向にある隣街、オルビへ向かいます。
血流を操作しまして、すぐにオルビへ到着しました。
ルコからすると徒歩で二日か三日ぐらいの距離です。それほど離れているとは思いませんが、オルビは次元の裂け目の被害は出ていないのでしょうか。
門兵の方は一人しかおらず、眠そうに船を漕いでいらっしゃいます。
「あの」
門兵の方に近寄り、声をかけます。
一度では覚醒しなかったらしく、ぼんやりとしたお顔でなんとなくわたしの顔を見ました。
「あの!」
「んお!? あ、ああ。どうした」
「オルビに入りたいのですが」
「オルビに人が来るなんて珍しいな」
「お隣のルコで次元の裂け目が発生していました。オルビにも連絡が来ているはずです」
「あ? そうだったか……?」
門兵の方と言えば、元冒険者のはず。
今は深夜とはいえ、この方はぼんやりとしすぎではないでしょうか。
冒険者証を見せましたが、きちんと確認しているようには思えません。
元冒険者とはいえ、この方は引退から時間が経っているのかもしれないです。親ほど離れていそうなこの方は、もう現役時代の感覚も忘れてしまっているのかもしれません。
門兵の方がぼんやりしていても大丈夫なのは、オルビという街が平和だからでしょうか。
それはそれで、一つの街のあり方なのかもしません。
オルビは、アラバス王国の最北西の街。ルコにも港はありますが、この街の港はさらに大きいものとなっております。
海に面するこの街は、いわば貿易の街。巨大な船も泊まり、海から諸外国へ繋がる玄関口です。
白壁に茶色い屋根の街並みと、青空のような鮮やかな色をしている扉。同じ国内なのに、違う国へ来たような感覚になります。
深夜というのもまた幻想的で、街を照らすランタンが温かみを感じさせてくれました。
街の散策は明るい時間にした方が良さそうです。
今はひとまず宿へ向かいましょう。冒険者ギルドの、上のお宿が空いていれば良いのですが。
白い街並みの中を進むと、少し高台にあたる位置に煉瓦造りの冒険者ギルドを発見しました。
オルビの冒険者ギルドは、生け垣で街との境を作っているようです。街並みとは違う建物ですので、そうしているのかもしれません。
運良く、お宿が空いていました。宿賃は、一泊銀貨二枚です。金貨を一枚出し、八枚の銀貨が返ってくるはずでした。
「あの?」
「あ? ああ、宿に泊まるお客さんだね」
金貨一枚を渡し、金貨一枚が返ってきました。深夜ですので、受付の方は眠たいのを我慢しているのかもしれません。
声をかけると、今度は正確な釣り銭を渡されました。
部屋は二階の一番奥ということで、鍵を持って向かいます。
……明日の朝、もう一度様子を確認してみましょう。
門兵の方も、宿の受付の方も。どちらも対応に首を傾げます。
深夜ですから、睡魔と戦っているだけなのかもしれません。ですがそれだけではないような、そんな違和感があります。
ひとまず今日は、お部屋へ行きましょう。
受付の方の様子から、もしかしたら整えられていないかもしれないと想像しました。
ですがお部屋の中は、隅々まで行き届いていて清潔感があります。
部屋を掃除する担当の方と、受付の方は違うのかもしれません。
「イザヤ様と合流する前に、技能牧場を開拓しておきましょう」
わたしはステータス画面を開き、右上の白く点滅するボタンの数を確認します。
数は四。<気配消散>はイルとゴルの二体分を使った判定のようですね。
開拓が進んでいれば、同じ種類の友獣はスキルを使うときに同じ時機になるのでしょうか。
わたしの疑問はさておき、開拓です。
<気配消散>を使いました。これは<スキルⅢ>で、時間は100秒。10秒に一度開拓ができますので、十回分の開拓です。
<防御力Ⅰ>は右から八番目、七番目、六番目、五番目。
<攻撃力Ⅰ>は右から八番目、五番目、四番目。
<忠誠Ⅱ>は右から七番目、八番目、九番目を開拓します。
「そうなりますよねぇ……」
防御力値、攻撃力値は<Ⅰ>なので端数切り捨てとなり、ステータス上昇はなし。
しかし忠誠値は<Ⅱ>。<+%>の項目となりますので、現時点で600万という数値が確定してしまいました。
当然、すべての開拓が進められるという結果になります。
ここで問題なのは、全開拓をするかしないか。
ステータス値の大幅アップよりも、属性のマークで開拓を進めるとどうなるかの結果が知りたいです。
技能牧場のイルの名前が、赤く点滅しています。ルーガのときはここに触れ、全開拓になってしまいました。
いえ、ステータスを上げなければいけないとは思います。思うのですが。
イルが全開拓の可能性があるのならば、ゴルも全開拓ということになります。
「……これは、イザヤ様と相談案件でしょう」
属性のマークで開拓するとどうなるのか。それを知りたいわたしの欲と、テイマーとしての成長か。
究極の選択です。そんな極端な選択は、今のわたしでは判断できません。
先送りにします。
ひとまず、ゴルも同じような状態にまで持っていきました。その結果、忠誠値がとてつもなく跳ね上がっています。
次に<忠誠Ⅱ>の<+%>は、慎重に場所を選択しないといけなくなりました。
心を落ちつかせるため、グランとメシュの開拓をします。
まず、<修繕>を使ったグランからですね。開拓回数は六回です。
グランは<スキルⅠ>の段を右から七番目までをすべて開拓している状態に、メシュは右から三番目を開拓しました。
結果、<スキルⅠ>の数が穏やかに上昇しています。
ステータス上昇を細かく刻んでいたときは、少ない上昇数を寂しく感じました。ですが、元となる数値が大きくなってからだと、穏やかな上昇の仕方が安心します。
イルとゴルの開拓はまだ残っていますが、これはイザヤ様と相談案件です。
今日の所は、もう寝てしまいましょう。




