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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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078 勘違い

朝更新ですが、そこそこ長めな文章量になってせいまいました。

ブックマーク登録をして、涼しい場所で読んでいただければっ(-_-;)


「イザヤ様! わたしは、イザヤ様と一緒にいたいです!!」

「うん? おれも、エミリアと一緒にいたいよ?」

「イザヤ様……ありがとうございます! ありがとうございます!!」

「ちょっと。本当にどうしたの、エミリア。やっぱり離れている間に何かあった? もしかして、誰かに嫌なことでもされた? その相手はおれが……って、立ったまま話すことじゃないか。エミリア、こっちに行こう」


 思わず涙ぐんでしまったわたしは、イザヤ様に掴まれていなかった左手で目元を拭います。

 そんなわたしを見たイザヤ様は、わたしの手を引いて<修繕>した内の一軒へ向かいます。

 椅子に座ろうと誘われ、木の長椅子に隣り合わせに座りました。そしてわたしを心配するように首を傾げています。


「エミリア。どうか泣かないで。エミリアに泣かれたら、どうすればいいかわからないよ」

「も、申し訳……」

「……今は、緊急事態だから……」


 今までは聞こえていなかった、イザヤ様の小声の内容が聞こえました。

 ですがその言葉の意味を理解できずにいると、突然イザヤ様から抱きしめられます。


「イ、イザヤ様!?」

「ご、ごめん。驚いたよね? でも、こうしていればエミリアの涙も吸い取れるでしょ? これなら泣いてるってわからないから!」

「……えぇと? 涙を吸い取っている時点で、泣いているとわかっているのでは?」

「っ! そ、そうだね!!」

「ふふっ……。イザヤ様は、変わらずお優しいですね」

「そ、そう思ってくれるのなら、嬉しい」

「少しだけ、胸をお借りします」


 抱きしめられた時点で、すでに涙は止まっています。ですがイザヤ様の優しさが嬉しくて、じんわりと涙が出てしまいました。

 イザヤ様の背中にそっと手を回し、あふれた涙を拭わせてもらいます。


 ようやく心も落ちついてから、わたしは濡らしてしまったイザヤ様の胸元に<修復>をかけました。

 このスキルは濡れている部分を直します。使い方として合っていないかもしれませんが、今は良いのです。


「すごい。ちょっと解れていたところも直ってる。これも、新しいスキルだよね?」


 イザヤ様は、わたしが話しやすいように優しい口調で仰います。

 やはりわたしは、気遣いが細やかなイザヤ様と一緒にいたいです。

 一度深呼吸をして、わたしは自分が化け物になったことを伝えました。


 イザヤ様の反応を待ちます。

 イザヤ様に距離を取られたくはありませんが、それも覚悟の上でイザヤ様のお言葉を待ちました。

 しかし、イザヤ様は不思議がるように首を傾げます。それはもう、本当に不思議そうに。

 その反応は予想していなかったので、思わずわたしから声をかけてしまいます。


「あ、あの、イザヤ様?」

「あ、ああ。ごめんね。エミリアが何を悩んでいるのか思いつかなくて」

「あの、イザヤ様? 申し訳ありませんが、わたしは勇気を出してお伝えしたのですが……」

「うん、ごめん。すぐに問題ないよって伝えれば良かったよね」


 イザヤ様の反応はあまりにも軽く、わたしの決意すら軽くあしらわれてしまったように感じます。

 いえ、イザヤ様ですから、そんなことは決してないとわかっているのですが。


「エミリア、怒らないで。本当に、何で悩んでいるのか思いつかないんだ」

「……イザヤ様がそんなに薄情なお方だとは思いませんでした」

「待って! 誤解だよ!! エミリア、思い出してよ! エミリアのステータスがすごい数値になったとき、すぐおれに報告してくれたじゃん!!」

「……?」


 イザヤ様に指摘され、過去を振り返ります。

 ステータス値が百万という大台を超えたのは、ルーガの技能牧場の全開拓を終えてから。

 それは、いつだったでしょうか。


 そう。あれは<敏捷性、200万>となり、今後のために集合場所を決めて……。


 確かに、イザヤ様はわたしの化け物的なステータス値を知っています。

 バッと、すぐに頭を下げました。


「申し訳ありません!!」

「エミリア、思い出してくれたんだね。それなら頭を上げて」

「いいえ! わたしは自分が忘れていたことを棚に上げ、イザヤ様を罵ってしまいました! 弟子として、師匠を嘲るなどと言語道断。罰は全て受け入れます。何をすれば、許してもらえるでしょうか」

「何でもするなんて、軽く言っちゃダメだよ? ……おれだって、男なんだから……」

「? イザヤ様が男性ということは、重々承知しておりますが?」

「え?」

「?」


 イザヤ様の小声に反応すると、イザヤ様は驚いたようにわたしを見ました。

 その反応の意味がわからず、首を傾げます。わたしは何かしてしまったでしょうか。


「あの」

「ちょ、ちょっと待って!? エミリア、小声で言ったことも聞こえてるの!? いつから!?」


 イザヤ様はお顔を真っ赤に染めながら、ざっと木の長椅子の端まで寄りました。

 口元を手で押さえながら、顔を青くしたり赤くしたりと目まぐるしく顔色が変化します。

 あれだけ急激に顔色が変わるということは、何か重大な病気かもしれません。もしかしたら、腫れたままの右腕の影響でしょうか。だとすれば、<治癒>をかけても回復できないかもしれません。

 ですが、試してみましょう。


「エミリア! エミリア、待って!」


 イザヤ様から焦ったような声がかかり、わたしは必要以上にイザヤ様との物理的距離を縮めていたことに気がつきました。

 すぐに下がります。


「……ちょっと、本当に、ごめん。いつから小声も聞こえるようになったの?」


 イザヤ様のお声が、震えているような気がします。お顔は手で隠されていて見えませんが、もしかしたらわたしはイザヤ様を傷つけてしまったのかもしれません。

 すぐに頭を下げ、イザヤ様と離れていたときのことを伝えました。

 リンウッド辺境伯領であったことも、メタン湿地であったことも。

 話し終えると、イザヤ様は怒りを抑えているかのようなお顔をされていました。


「ドニーさんも、リンウッドのお嬢様も、どこの誰だか知らない男も、絶対に許さない……」


 イザヤ様らしからぬ、地を這うような低いお声です。

 わたしはイザヤ様よりも遥かに高いステータス値を持っているのに、まるで(かな)わないような気持ちになります。


「あ、あの、イザヤ様……」

「エミリア! エミリアは、エミリアだよ!! 化け物なんかじゃ、絶対にない!!」

「あ、ありがとうございます」

「あ……ご、ごめん」

「い、いえ……」


 恐る恐る声をおかけしたら、イザヤ様は興奮気味にわたしの両手を掴みました。そして、わたしが欲しかった言葉をくださいます。

 そのことが嬉しくて、握られた手が熱くて、お礼の言葉が滑らかに出ませんでした。

 わたしの反応を見たイザヤ様は、すぐに手を離してしまいました。

 そのことを少し残念に思いつつ、顔を赤くしたイザヤ様を見て、わたしも熱くなった頬に手を当てます。


 イザヤ様の様子を窺おうと、目を向けました。


「っ」


 目が合ってしまい、思わず顔を背けてしまいます。

 変な態度を取ってしまったことを謝罪しようと顔を上げ、また目が合って、少しそらして。

 そんなことを繰り返していましたら、イザヤ様が木の長椅子から立ち上がりました。


「エミリアとまた一緒にいられて、すごく嬉しい。でも、この<修繕>してしまった建物はどうしようか」


 イザヤ様に見つからずにできる範囲でやろうと、<修繕>は五回使いました。

 このままでは、早朝に大事件として騒がれてしまうでしょう。

 ですが、それ以上のことをしてしまえば。


「イザヤ様。わたしは顔見知りの方と遭遇しないよう慎重に行動しました。しかしそれでは時間が足りません。なのでわたしは、このまますべての建物を<修繕>してしまおうと思います」

「でも、それじゃあ……」

「ルコの皆様方も、いち早く日常生活を取り戻したいと思います。ですので、きっと、喜んでくださるはず! 作業が始まる前にひっそりと街から出れば良いと思うのです」

「それだと、エミリアの功績にできないよ。ああ、でも、エミリアがテイマーで<修繕>の力が使えるっていうのは知られない方が良いのか……」


 イザヤ様はお優しいです。わたしのことを考えてくださいます。


「イザヤ様は、他の方々とお話されていますよね? なので解散になってから合流しましょう」

「わかった。場所はラゴサ?」

「それでも良いですが、血流の操作によって自在に動けるようになっています。ラゴサまで行かなくても大丈夫ですよ」

「それなら、隣の街のオルビで待ち合わせしようか。他の人なら二日か三日かかるけど、おれ達ならすぐに着くでしょ」

「かしこまりました。わたしは作業開始の時刻までに外へ出て向かいます」


 イザヤ様には先に泊まる場所へ戻っていただきたかったですが、そんなことをするのはイザヤ様ではありません。

 わたしを心配して、作業が終わるまで見守ってくださると思います。

 わたしが先に出て、イザヤ様と後で合流する。その方法を取るには、早急に<修繕>を終わらせないといけません。

 わたしはその場に座り込み、両手を地面に着きました。


「エミリア? 何をする気?」

「<治癒>もいけたので、<修繕>もいけると思います」

「え? だから、何を??」


 疑問に思っているイザヤ様はわたしの後ろに下がってもらいまして、わたしは<修繕>を使います。

<治癒>も<修繕>も、どちらも<スキルⅠ>の項目。すなわち、攻撃力値が関係しているはずです。


「最初の五軒は慎重に、なるべく音が立たないようにしていました。ですが今は!」


 わたしの気合に応えるように、<修繕>が力を振るいます。直っていく建物群が、まるで地面から生えるかのようににょきにょきと建っていきます。記憶にある通りに、建物が建ちました。

 それはもの凄い轟音で、夜にこんな音を出してしまったことだけは謝罪すべきですね。


「イザヤ様! あとはよろしくお願いします!!」


 街の方々が無事だった建物から出てくるざわめきが聞こえてきます。

 わたしは顔見知りの方に会う前に、騒ぎに乗じてルコを出ました。


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