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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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073 テイマーの戦い方


 わたしは冒険者として稼げるように、ひとまず昇級を目指しました。

 ドニー様からも、魔獣の問題を解決するようにと言われていますしね。

 知人に会わないように、わたしはアラバス王国の南地方で活動することにしました。

 移動時の調整も、できるようになっています。

 行きたいと思う場所に、五十五の出力ぐらいでちょうど良い場所に行けました。


 地理と照らし合わせながら向かったのは、王都の西南の街ビリア。

 近くには魔都と呼ばれるスカディという街があります。魔都というのは、何が原因かわかりませんが、常に魔獣が湧いている場所ということだそうです。

 そのため、最寄りの街ビリアにはたくさんの冒険者方がいらっしゃいました。

 イザヤ様と一緒にいないと、何人もの男性がわたしに声をかけてきます。

 イザヤ様と一緒にいたときは気にしていませんでしたが、わたしはイザヤ様に守られていたようです。


 けれど、今は一人。

 わたしは化け物なので、対応はできます。

 ですがしつこい方もいらっしゃって、そんな方にはお誘いに乗るフリをして血の温度を元に戻していました。

 そんなことを繰り返していると、ビリアでもわたしは遠巻きにされていきます。

 それはわたしの行動の結果なので良いのですが、受付の方にまで悲鳴を上げられてしまうのは、やはり悲しいものです。

 ビリアも、長くはいられませんね。


 冒険者は、ギルドでクエストを受注してからこなします。そのためわたしはまだ、ブロンズ級の見習いです。

 メタン湿地でのことは、クエストを受注したわけではありません。もし受注していたら、今頃はどれくらいの等級にいたでしょうか。


 ……わたしは、もしかして人付き合いが苦手なのでしょうか。


 ブロンズ級の見習いは、必ず誰かと一緒にクエストへ行かないといけません。

 付添人の方にはあまり得のないお話ですので、一緒にクエストへ行っていただけるだけでもありがたいと思わないといけないのですが。

 採取クエストです。テイマーとしての力を見せることもないでしょう。

 ですが、考えてしまうのです。


 イザヤ様だったら、もっとこんな風に動いてくれるのに、と。


 いけませんね。わたしは一人で行動するのです。

 いつまでもイザヤ様を基準にしてはいけません。

 イザヤ様は素晴らしい方です。そんな方と比べたとあっては、誰も勝ち目はありません。


 結局昇級できないまま、ビリアを後にしました。

 魔獣があふれているというスカディの様子を見ておこうと、ビリアからさらに南下します。

 ラゴサの近くで見た養獣場よりも高く聳える壁は、見上げると首が痛くなってしまいそうでした。

 これだけ高い壁があるから、外には出ないのだなと納得します。

 というよりも、入口がありません。ぐるりとスカディの周囲を回りましたが、壁が聳えるばかりでした。


 魔獣があふれているのならば討伐したかったですが、入口がなければ入れません。

 諦めて移動しようとすると、まるで腰を抜かしたような悲鳴が聞こえてきました。

 中に人がいる。それは、助けに行かねばなりません。

 壁は壊せませんので、わたしは周囲を確認して誰もいないことを確認しました。

 左耳の一番上を素早く二回触り、イルとゴルに出てきてもらいます。


「イル、ゴル。わたしを壁の中へ運んでください」


 イルとゴルは頷き、わたしの腕を両脇から掴みました。

 大きな翼は砂埃を巻きあげながらわたしを壁よりも高く持ち上げます。

 足下に何もないのは落ち着きませんが、わたしの感情など問題ではないのです。

 と、いうより、そんな悠長なことは考えていられませんでした。


 壁を越えたわたしに気づいた魔獣方が、各々攻撃を始めます。しかし、風属性以外の魔獣型はそもそも攻撃が届きません。闘志だけが大きくなっているように見えます。

 サゴイルは風を起こし、蜜蜂型魔獣(サミエレ)は集団でわたしに向かって飛んできました。


「イル。ゴル。わたしを街の中央に下ろしてください」


 イルとゴルが首を振ります。迫ってきていたサミエレを腕で薙ぎ払いながら、再度お願いしました。

 イルとゴルは優しいのですね。また首を振りましたが、わたしの願いを聞き届けてくれました。


 冒険者ギルドにあった鏡で、輝きのある宝石がついたアロイカフスはどれか把握しておいて良かったです。

 街の中心へ下りながら、ルパ、ガット、カッチャ、ファラを出しました。


「ルパ。地上にいる魔獣方を穴に落としてください」

<是>

「ガットとカッチャは、ルパが動きやすいように魔獣方を翻弄してください」

<オッケー>

<わかった!>

「ファラは街の端にいる魔獣方を中央へ集めてください」


 ファラから肯定の意思が感じられました。

 街の中央に下ろしてもらった後には、イルとゴルにも指示を出します。


「イル、ゴル。あなた方は大きい魔獣方から爪で切り裂いてください」


 わたしの指示のもと、友獣方がそれぞれ動きます。各自連携が取れており、あふれていた魔獣方の数がどんどん減っていきました。

 ルパが仕掛けた穴にもいくつも魔獣方が落ちていきます。

 友獣方が戦ってくださっているのを補助するため、わたしは血の温度を操作しました。

 ルパの穴に落ちた魔獣方以外は、ぱたっと気絶しています。その魔獣方に、友獣方がとどめを刺しました。


 残りは、ルパが掘った穴に落ちた魔獣方です。

 血の温度の操作は、どうやら水平方向に効果があるようでした。そのため、穴の中にいる魔獣方はまだ闘志がむき出しの状態です。

 その中の、大きな角が特徴的な鹿型魔獣(サチェル)が壁を蹴り登ってきました。素晴らしい脚力ですが、ピンと指を弾いて討伐します。

 小さいながらも生まれた風圧により、サチェルがぶつかった魔獣方も討伐できてしまいました。


「さぁ、お次はどなたでしょうか」


 にっこりと微笑むと、穴の中にいた魔獣方はすべて恭順の意を示しました。

 新たに猫型友獣(サガット)のトッカ、猿型友獣(サンミャ)のミャー、半魚人型友獣(サメシュペル)のメシュ、蟹型友獣(サグラン)のグラン、戦いに挑んだ方とは違う鹿型友獣(サチェル)のチェル、それに啄木鳥型友獣(サピッキョ)のキョーの合計六体のテイム成功です。


 ルパに穴を元に戻してもらい、一緒に戦ってくださった友獣方を指輪やアロイカフスに戻しました。





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