061 魔獣生成、それはすなわち大量の友獣。
「ドニー、構う! お前、死刑!」
「えっ!?」
レタリア様が死刑宣告をすると、どこからか魔獣のサピッキョが現れました。
サピッキョは火属性に分類される魔獣です。フスラン帝国で見かけたときは誰かの友獣となっていましたが、今はわたしに敵対しています。
啄木鳥型のサピッキョは、止まり木を捜しているのでしょうか。藍色の部屋の中を飛び回っていたかと思うと、わたしの肩を目がけてまっすぐに向かってきます。
思わず、攻撃を防ぐために顔の前で両腕を交差しました。
「……?」
一瞬、何かが当たったような感覚がありました。しかし、これが<防御力、3200万>の効果でしょうか。
わたしは無傷です。
そして、わたしとぶつかったと思われるサピッキョも、跡形もなく消えてしまいました。
「……お前、変。何者」
黙っていろと言われたので口を閉じていましたが、話しても良いのでしょうか。
レタリア様を見て口を閉じていると、またどこからともなくサピッキョが現れました。
サピッキョはレタリア様の周囲をぐるりと飛ぶと、わたし目がけて飛んできます。
今度はきちんと結果を見届けようと、わたしは向かってくるサピッキョに手を向け、指を弾きました。
サピッキョは風圧で飛ばされ、壁にぶつかる前に消滅します。
<攻撃力、200万>の力は絶大です。もはや、わたしが攻撃すると意思を持ってしまうと、全てを壊してしまうような気がします。
「……ばけもの! 化け物! お前、化け物!!」
最初は恐らく怒り。次が不安。そして、三度目が恐怖。
原理はわかりません。ですがレタリア様が負の感情を抱くと、魔獣が生成されてしまうようです。
サピッキョ、犬型魔獣、猫型魔獣、猿型魔獣だけは二体が、一斉に出現しました。
「っ!」
レタリア様の叫び声が聞こえたのでしょう。ギレルモ様が入室するなりわたしに岩の杭を飛ばしてきました。
岩の杭はわたしにぶつかりましたが、すぐに砕け散ります。
「ギレルモ!!」
レタリア様がギレルモ様のところへ駆け、すがりつきました。ギレルモ様は一瞬だけ険しい顔を緩ませますが、すぐにわたしを睨みます。
出現した魔獣達はレタリア様の心理状態に左右されるのか、わたしに攻撃しようと青黒い目を光らせているように見えました。
わたしは、攻撃力も防御力もあります。ですので、全てを個別に対応しても何も問題はありません。
対応できると思います。が、しかし。対応中にレタリア様やギレルモ様に被害が出ないように、ここは一気に片をつけましょう。
「っ!?」
「うっ」
血の温度を元に戻しました。
その瞬間、魔獣達は泡を吹いて気絶。レタリア様は呼吸がしずらそうに口をぱくぱくと開閉し、ギレルモ様は自らの呼吸よりもレタリア様を助けようとされています。
そして漂う、ツンとしたニオイ。
いけませんね。このままではお二人の命を奪ってしまいます。
わたしはすぐに血の温度を下げました。
出現していた魔獣達はわたしに恭順の意を示し、ギレルモ様は痙攣しているレタリア様を庇うようにしてわたしを睨みあげます。
それにしても、わたしが力を解放したときて気絶しないとは、ギレルモ様はなかなかの手練れですね。
いえ、感心している時間はありませんでした。
レタリア様に<治癒>をかけなければいけません。
わたしが近づくと、ギレルモ様は震えて恐怖を感じているような目をしながらも、レタリア様を守ろうとします。反対側に回ろうとしても同じでした。
一刻も早く<治癒>をかけねばいけないのに、レタリア様へのギレルモ様の忠誠心が邪魔をします。
穏便に済ませたかったのですが、そうもいかないようですね。
ギレルモ様と目線を合わせるように、腰を下げます。
「ギレルモ様は、なぜ話せないふりをしているのでしょうか」
「っ!?」
「話せないご事情があるのでしょう。ですが今は、レタリア様のお命が危険です。すぐに<治癒>しなければいけません。わたしのことは信用できないかもしれませんが、その場を退いてもらえないでしょうか」
ギレルモ様が首を振ります。
ギレルモ様は手練れです。ですのでわたしとの力量差はわかっているはず。それでも退かないのは、レタリア様を守るという気持ちが強いのでしょう。
護衛としては完璧ですが、それではダメです。
慣れないことをする前に、わたしは深呼吸をして気持ちを整えました。
「……ギレルモ、そこをお退きなさい! わたしはレタリア様を<治癒>すると言っているのです! わたしの行動を拒絶して、レタリア様を殺しても良いのかしら!?」
「!」
ギレルモ様はようやくわかったのでしょう。さっと退きました。
わたしはすぐにレタリア様の口元に左の人差し指を持っていき、<治癒>をかけます。
ビクンッと大きく跳ね上がったレタリア様を支え、寝かせました。
ギレルモ様が心配そうにレタリア様を見守ります。
とっさに最上級の方法で<治癒>してしまいましたが、大丈夫でしょうか。
わたしは少々不安を抱えながら、レタリア様の目覚めを待ちます。
そして、レタリア様がパチッと勢い良く目を開けました。ゆっくりと顔を動かし、わたしと目が合うと。
「エミリア様!! レタは悪い子! だから殴って!!」
ガバッと体を起こしたレタリア様は、わたしに抱きつき、見上げながら、とんでもないことを願い出てきました。
やはり、不安は当たってしまったようです。<治癒>をかける前はわたしに敵対心を持っていたレタリア様は、その真逆というか何というか。かなり振りきってしまったような人格になってしまったようです。
ギレルモ様を見れば、わけがわからないというようなお顔をされていました。
それも当然です。わたしも、ある程度のことは覚悟していましたが、予想を上回っていました。
「エミリア様! レタを……きゃぁ!!」
レタリア様が、ご自分の状態に気づきました。気づいて、しまいました。
「こんなっ……こんなっ……エミリア様の前で、こんなっ!?」
レタリア様が、藍色の部屋を飛び出して行きました。そしてその後を、ギレルモ様が追います。
これでお二方とも、お着替えをされることでしょう。
「さて。あなた方はどうしましょうね?」
藍色の部屋に残されたのは、わたしと複数の魔獣方。
テイムをするべきか、何もせずレタリア様を待つか。
無意識とはいえ、粗相をしてしまったのです。羞恥に耐えられず、戻って来ないかもしれません。
最悪の場合、自ら死を選んでしまう可能性もあります。
「急ぎましょう」
レタリア様はわたしが異常だと目撃しています。全てを倒したということで、テイムしておきましょう。
冒険者証を触ると、お馴染みの質問がされました。魔獣方の数の分だけ是と答え、名前をつけます。
サピッキョはピー、サカッチャはカッチャ、サガットはガト、サンミャはミンと名付けました。
そしてわたしは、レタリア様を追いかけます。
次は金曜日です。
朝更新しますので、ブックマーク登録をしてお待ちいただけると幸いです。
アロイカフス装着状況
※数字が若いほど上の方のアロイカフスです。
右1前:右1後=
サルペンテのテン:サルペンテ のペル
右2前
サガットのガト
右3前
サンミャのミン
左5前
サカッチャのカッチャ
左6前
サピッキョのピー




