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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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060 レタリア様のお心。


 レタ様と、ドニー様と、ギレルモ様。三者三様の視線を向けられているわたしは、まず現在地を確認しましょう。


「あの」


 ドニー様は教えてくれるつもりがないようでしたので、レタ様に聞こうと一歩近づこうとしました。

 しかし、護衛のギレルモ様の魔法が発動し、わたしの目の前には石の杭のようなものが刺さっています。

 ギレルモ様は警戒心を隠そうともせず、わたしがまたリタ様に近づけば容赦なく攻撃されてしまうでしょう。

 わたしはディポポの前から動かないようにして、レタ様に尋ねます。


「レタ様。ここはどこなのでしょうか」

「レタはレタリア。その呼び方、許さない」

「これは失礼いたしました。では、レタリア様。ここはどこなのか教えていただけないでしょうか」

「お前、バカ? レタの名前聞いてもわからないなら、お前バカ」


 レタリア様のお名前は、それほど有名なのでしょうか。その有名とは、どの界隈でのお話でしょうか。

 レタリア様を見ます。

 ドニー様にぴったりとくっついている様子は可愛らしく思いますが、レタリア様は成長がお早いお方なのでしょうか。

 見た目だけで言えばわたしと同じくらいか少し上に感じるのに、話し方と大量のリボンというドレスの装飾から幼い少女のようにも思えます。


 まるで、わざとその服を着せられているような、そんなちぐはぐ感。


 ちらりと、ギレルモ様を見ます。この方はまだ一度も、話されていません。

 警戒されていますから、この場所のことを教えてはもらえないと思います。思いましたが、唯一の手がかりです。


「あの、ギレルモ様」


 名をお呼びすると、ギレルモ様は首を振りました。そして、喉を指差します。

 なるほど。ギレルモ様はお話ができないお方のようです。

 これは、詰んでしまいました。

 ここがどこだかわからないのに、それを示してくださる方が誰もいらっしゃいません。


「エミリア。そんなに急いで帰ることないじゃん。ここにいれば良いよ。そうしたら、ぼくもまた話せるし」

「お前、敵!」

「ま、待ってください!」


 笑顔付きのドニー様の発言。レタリア様の怒り。その怒りに即時対応する、ギレルモ様。ギレルモ様の前方には、いつでも飛ばせるような岩の杭が浮いています。

 正直、ギレルモ様から攻撃を受けたところで全く問題ないです。問題は、その後ですね。


 頑丈すぎるわたしに、ドニー様が興味を持ってしまうかもしれません。

 その後は、きっと実験的な観察のためにどこかに閉じこめられてしまうでしょう。

 いえ、まあ、閉じこめられたとしても簡単に抜け出せます。<攻撃力、200万>ですし。

 想定する最悪な状態は、イザヤ様やギルド長様などわたしと交流がある方が捕らわれてしまうことです。その方々を盾に取られてしまっては、わたしも自由に動けません。


「もう、ここがどこかということは訪ねません。どこかに行けと言うならば、その通りに従います。わたしはどうすれば良いでしょうか」

「そうだなー。ぼくとしては、レタがエミリアと仲良くしてくれたら良いかな」

「イヤだ! レタ、こいつ嫌い!」

「レタ。そんなこと言わないで。ぼくが喜ぶんだよ? 嬉しくない?」

「……ドニー喜ぶ。レタ、嬉しい」

「そう。レタは良い子だね」


 ドニー様に両頬を持たれ、見つめ合っていたレタリア様。そのお顔は林檎のように真っ赤で、レタリア様のお気持ちが透けているようでした。


 レタリア様は、ドニー様のことがお好きなのですね。


 レタリア様は、見た目通りの年齢ではないのかもしれません。成長が早いだけの、幼子なのかもしれません。

 そんなお方から見たら、ドニー様は憧れのお兄様。その憧れは、いつの頃からか違う気持ちに変わるのですね。


 微笑ましく思っていると、レタリア様はキッとわたしを睨みつけます。


「お前、レタと来る!」

「かしこまりました。どちらへ行きましょう?」

「黙ってついてくる!」


 ギレルモ様が横に避け、レタリア様が部屋を出ていきます。わたしも追いかけ、その後をギレルモ様も続きました。

 レタリア様に案内されたのは、建物の地下。道中、窓から見える景色から現在地を推定しようと試みました。

 遠くの方に海が見え、少しだけ城壁のような堅牢な建物が見えたような気がします。しかしそれだけで、現在地がどこかまではわかりませんでした。


 進むレタリア様の足取りは軽く、周囲が人工物から自然物になっても止まりません。

 土壁には篝火が焚かれ、いつでもここを歩けるように照らされています。

 もしかしたら、自然の洞窟と繋がっているのかもしれません。そんな風に思っていると、レタリア様がある扉の前で止まりました。


「お前、ついてくる!」


 くるりと振り返り可愛らしい八重歯を見せたレタリア様は、扉を開けて入っていきます。

 わたしもそれに続きますが、ギレルモ様は入らないようでした。

 わたしとレタリア様が入った部屋は、一面が藍色の洞窟のような空間。


「ギレルモ、待機!」


 レタリア様の指示を受けると、いつの間にか出していた石板に了承の意味でしょうか。丸が書かれていました。

 なるほど。ギレルモ様はその石板で筆談をするというわけですね。石板を削れるようなものをお持ちでないように思いますが、それも魔法でしょうか。


「扉、閉める!」


 レタリア様の指示に従い、扉を閉めます。

 振り返ると、顔の半分を覆っていた黒い布を首の方に落としていました。

 レタリア様の瞳は左右で違うようです。髪色こそ茶色ですが、藍色の瞳と紫の瞳をもっていました。

 見たことがない色の組み合わせで、不思議な印象があるのに、どこか懐かしいような気もします。


 わたしがレタリア様を見ると、レタリア様はにんまりと笑います。


「お前、ここで死ぬ」


 なぜ死の宣告を受けるのかと思っていたら、レタリア様が叫びました。






次、お昼更新です。

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