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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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048 イザヤ様が嫌うもの


 ララブル亭の女将さんから紹介され、店の裏手にある宿屋へ向かいます。

 受付にて紹介されたことを伝えると、本当にお部屋が取れました。そのお部屋は、二階の角部屋。ベッドは大きめなものが一つ。

 女将さんからすでに話が伝わっていたのでしょうか。ベッドの上には、花弁でハートマークが記されていました。


「お、お花のおもてなしがあるようですね!」

「ねえ、エミリア。ちょっと良いかな」

「な、何でしょう!?」


 ララブル亭から出てから、イザヤ様は何かを考えているようでした。宿泊は三日と宿主に伝えていましたが、必要最低限の言葉しか発しておりません。

 そんなイザヤ様からの、お話。

 わたしは緊張しながら、イザヤ様が引いてくださった椅子に座ります。

 イザヤ様がわたしの正面に座りました。


 お話をするときは相手の目を見て話す。

 それは、常識でしょう。しかしララブル亭での出来事を思い出してしまい、イザヤ様のお顔を正面から見られません。

 ましてや、わたしはイザヤ様の唇の柔らかさを知ってしまっているのです。先程はとてもお顔が近かったですし、どうしてもイザヤ様の唇を見てしまいます。


「エミリア」

「は、はい!」


 ちらちらと見てしまっていたことを咎められたと思い、返す言葉が力んでしまいました。

 そんなわたしを見たイザヤ様は、ぐっと眉間にシワを寄せます。


 ぐむっと、胸が苦しくなります。まるで、直接心臓を掴まれているようです。


 ……イザヤ様を、怒らせてしまいました。


 いつもお優しいイザヤ様が、眉を(しか)めるのです。わたしはとんでもないことをしてしまったようです。


 嫌われてしまった、と思った瞬間。目が潤んでしまいました。

 しかし涙を流すわけにはいきません。わたしが悪いのです。涙なんて、イザヤ様を困らせるだけ。

 わたしは、ぐっと歯が食い込むほど力を入れて唇を噛みます。


「……エミリア、ちょっと待って。そんなに強く噛んだら痛いでしょ」

「これしきのこと、なんてことはありません。イザヤ様の気分を害してしまったわたしへの罰です」

「そっか、ごめん……。顔に出ちゃったよね。エミリアが悪いわけじゃないんだ。過去にあったことを話すから、とりあえず唇を噛むのは止めて?」


 イザヤ様に促され、わたしは自分の唇を解放します。

 防御力値を高めていたため、血は出ていません。イザヤ様が心配をされないように、笑顔を作ります。

 それから、イザヤ様が話してくださいました。


「エミリアは、おれが勇者一行だって知っているよね。そのメンバーに、からかわれたことがあるんだ」


 勇者様一行の中で、イザヤ様は最年少の十六歳。二年前のお話なので、当時は十四歳ですね。他のお三方は四歳以上離れているのだとか。

 その中で、聖女様のオーリー様からよくからかわれたそうです。その、恋愛方面で。そして、そのからかいを助長するような、他のお二方。


「おれはずっと、好きな人がいるって伝えていたんだ。それなのにまるで外堀を埋めるようなやり方をされて、すっごく嫌だったんだ」

「外堀を……ということは、ララブル亭でのことは」

「相手がエミリアだったから前向きに考えたけど、やっぱり好きになれないよ。本当の恋人同士だったら盛り上がるかもしれないけどさ」


 わたしとイザヤ様は、確かに恋人同士ではありません。師匠と弟子です。

 それなのにわたしが望んでしまい、お優しいイザヤ様を不快にさせてしまいました。

 わたしはすぐに立ち上がり、イザヤ様に頭を下げます。


「申し訳ありませんでした! イザヤ様のことを考えず、女将さんに返事をしてしまいました!」

「いや、まあ、それはもう良いんだ。ただ、前にも伝えたと思うけど……周囲の人に何か言われたりされたりして、エミリアの気持ちが動くのは嫌なんだ。エミリアの気持ちはエミリアにしかわからないし、他の人に決定権もないから」

「はい……肝に銘じます。こんな不甲斐ない弟子ですが、まだご一緒にいてくださるでしょうか」

「それはもちろん! ずっと一緒にいるよ。エミリアが許してくれるならね」

「わたしが許す……? それでは、立場が違うと思うのですが」


 首を傾げると、イザヤ様は様々な気持ちを抱えているような複雑な微笑みをされます。

 これは、わたしに与えられている課題の一つ、ということでしょうか。


 イザヤ様にはずっと、一途に慕う方がいる。

 それはとてもイザヤ様らしく、素晴らしいことだと思います。思うのですが、なぜか胸が痛みました。

 三度目の胸の痛み。四度目を経験したら、わたしはどうなってしまうのでしょう。


 胸に手を当てていると、イザヤ様から提案されました。


「魔術道具研究所で<治癒>を使ったでしょ? ルーガの技能牧場、開拓しよう」

「かしこまりました」


 わたしはルーガの技能牧場の画面を開きます。

 さて、今回はどこを開拓しましょうか。

 万遍なくステータスの数値を上げたいですが、直近の問題としては<攻撃力>でしょう。

 イザヤ様のように纏う空気を自在に調整するためには、最低でも<攻撃力500>以上は必要と教えていただきました。

 わたしは現在<攻撃力301>。<攻撃力Ⅱ>を右の方へ開拓すればすぐに目標の数値に届くはずです。


 開拓する場所を決めました。開拓済みの<攻撃力Ⅱ>の右から四番目。そこから一つ隣を二つ右へ、開拓です。

 該当する草を、小さなルーガが食べる演出が入りました。

<+512%>し、<攻撃力1842>となりました。


「っ。ついに、エミリアに攻撃力が抜かれたね」


 ステータスの数値はすぐに反映されるらしく、それを肌で感じたイザヤ様が冷や汗を出しながら両腕を抱えます。

 イザヤ様の<攻撃力>も高かったですが、四桁に届いていませんでした。それなのに粗相をされないイザヤ様は、想像を絶するような精神力をお持ちなのかもしれません。

 以前聞いたお話では、50の差があると勝ち目無しと判断すると伺いました。


 え、イザヤ様、超人すぎませんか。


 千近くの数値差があると思います。それなのに、冷や汗だけとは。

 改めて、イザヤ様はすごい人なのだと思います。


「ごめん……エミリア……」

「イザヤ様!?」


 冷や汗をかいていたイザヤ様のお顔は、蒼白になっていました。数値差から、倒れてしまうとわたしが気に病むと思ってくださったのかもしれません。

 わたしに謝罪した後、イザヤ様は意識を失われてしまいました。



現在のステータス

<攻撃力、1842>

<防御力、205,219>

<敏捷性、27,234>

<幸運、326>

<技能、25,321>

<器用、706>

<体力、51>

<スキルⅠ、117>

<スキルⅡ、78>

<スキルⅢ、78>


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