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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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039 テイムリングの代わりになるもの


 ギルド長様は、私物だと言って様々なものと用意してくださいました。

 筆記具、替えの眼鏡、眼鏡入れ。服から取れたボタン、壊れた眼鏡のフレーム、何かの染みがついた服。装飾がない金の指輪、女性を模したような肖像が施されたカメオ、赤く透き通った宝石。

 目移りしてしまうほど机に並べていただきましたが、その内の何かの染みがついた服はイザヤ様が即座に排除しました。

 抗議をしようとしたギルド長様を、一睨みで黙らせてしまいます。


「とりあえず、何が利用できるかわからないからやってみようか」

「かしこまりました」


 ギルド長様の部屋で出せる友獣、ファラを出します。


「ファラ。机の上にあるもので気になる物はありますか」


 問いかけると、ファラは数ある物の中から赤く透き通った石の上に止まりました。

 しかしファラ自身は、わたしの薬指にある赤い指輪の中にしか入らないと主張しています。

 そのことをふまえ、推測を立てました。


「恐らくですが、友獣は宝石を好むのだと思います。ファラが何か伝えたいときに指輪にある宝石が点滅していました」

「え、そうなの? 見せてみせ」


 興奮気味にわたしの左手を取ろうとしたギルド長様の手を、イザヤ様が鮮やかな手さばきで落としました。

 口を尖らせて叩かれた右手を擦っているギルド長様。相変わらずお二人は仲が良いですね。


「指輪に宝石が着いているなら、決まりだね。友獣は、宝石に入るんだ」

「だとすると、宝石を用意しなければいけなくなりますね……?」


 現在、わたしの指に装着されている指輪は、赤、青、黒の三種類です。そのどれも、一つだけ小さな宝石が着いています。

 このことから、属性別の宝石を用意しなければいけないという想定外の事態になりました。


「宝石と言ってもピンからキリまであるからねえ……今着けている指輪と同じ大きさで良いならそれほど値は張らないと思うけど」

「わたしは今、サタルパを二体テイムしている状態です。地属性だけでも、まだあと三種類はいると伺いました。他の属性もまだ種類がいて、同じ魔獣を複数テイムすることもあるかもしれません」

「宝石の数もそうだけど、友獣の住処の数だけ装飾品が増えるかな」


 例えば、地属性がサタルパ二体と他の種類を一体ずつ持ったとしましょう。その場合は五つの住処が必要になります。しかし、それぞれ二体ずつテイムしたとすれば、その数は十。

 最終的にどれくらいの数をテイムできるかは、未知数です。

 一つの装飾に一つの宝石では、結局動きづらくなってしまうのでは。


 そんな懸念を、イザヤ様の思いつきが解決します。


「……例えばですけど、あらかじめ小さな宝石をいくつか着けた装飾品を用意しておくとか?」

「ほう。具体的には?」

「エミリアが装飾品を着けていなかったから、指輪が装着されたと考えます。その指輪には属性別の宝石。もし先に属性別の宝石が着いている装飾品を身につけていれば、そこへ入るのではないかと思ったんですが」

「なるほどな……それは、ありかもわからん。ただ、その装飾品を何にするかが問題だ」

「指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、カメオ、イヤリングなどでしょうか」


 わたしが眼鏡をかけていたら、その眼鏡も装飾品に含まれるかもしれません。ですが、普段かけていない眼鏡をかけるのは、動きに制限が出そうです。


「装飾品はいくつもあると思いますが、宝石を大きい物にしてそこに同居してもらう……のは、嫌だとファラが言っています」

「そうすると、やっぱり個別の宝石が必要だよね」

「しかし小さくても宝石だ。数多くの宝石をつけていたら、盗賊に襲われる心配が出てくる」

「わたしのステータスが上がっている状態ならば、脅威ではないのではないでしょうか」

「それは駄目だ。エミリアが危ない目に遭う必要はない」


 何が適切か。ギルド長様の部屋の中にいる三人で考えます。

 するとギルド長様が、机に置かれていたカメオを手に取ります。女性を模していると思われる肖像が施されているものです。

 カメオを手に取ったギルド長様は百面相をしているかのように、何か悩んでいるように見えました。


「チェリニさん? 何か思いつきました?」

「あー……いや、可能性はあるんだけどね」

「その可能性とは」

「装飾品と考えると、身につける数が気になよね。でも魔術道具と考えたらどうかなと思って」

「魔術道具……それは、わたしでも扱えるのでしょうか」

「それは問題ないと思うよ。エミーは三属性までは持っているって確定しているし」

「魔術道具は、少しでも魔力があれば使えるんだよ」

「なるほど」


 わたしはテイマーですが、想像できる魔法使い様のように杖を持つのでしょうか。杖にいくつも宝石を埋め込み、触る。

 なかなか良さそうです。

 見た目は魔法使い、中身はテイマー。ワクワクする展開ですね。


 杖を持って活躍する自分を妄想していると、ギルド長様と目が合いました。


「エミー、ちょっと確認したいんだけど良いかな」

「何でしょうか」

「テイマーって友獣と一緒に戦うでしょ? そのときに複数の友獣って出せるのかな? 違う属性でも出せる?」

「それは、どうでしょうか。試したことがないのでわかりません」

「思ったんだけど、一緒に戦う友獣を限定したら、後はステータス値を上げるだけの存在にならないかな」


 ギルド長様の提案は、理に適っています。今の目的は、ステータス値を上昇させることですから。

 しかし、それでは何か寂しいと思ってしまうのは、贅沢な悩みでしょうか。

 わたしが考えこむと、イザヤ様が代弁してくれました。


「チェリニさん。それじゃあ、テイマーの意味がないと思う。テイマーにとって友獣は家族のような、親友のようなものですよ。一緒に戦わないなんて、寂しいじゃないですか」

「まあ、それもそうか。となると、他の友獣も活躍させることを前提とすると、エミーが触りやすい場所にないといけないということになる」


 戦闘時に宝石に触らなければいけない。となると、それは限定されてくるでしょう。妄想したように杖でも良いと思いますが、その杖を盗まれてしまう可能性があります。

 盗まれにくい場所は両手、顔周りなど肌が出ている部分でしょうか。

 考え、少し前のイザヤ様のお言葉を思い出します。


――あらかじめ小さな宝石をいくつか着けた装飾品を用意しておく――


「あの、思ったのですが耳を外側と内側で挟むような装飾品なり魔術道具なりであれば、数を用意できるのではないでしょうか」

「なるほどね。耳につける数にもよるけど、一つで二つの宝石を着ければいけるかも」


 ギルド長様と盛り上がりますが、イザヤ様が難色を示します。

 頭の中で色々と考えておられるようです。腕を組んで首を傾げたり、眉間にシワを寄せたりしています。


「なに、イザヤは反対なの?」

「反対というか……」

「イザヤ様。わたしでは思いつかないような不安要素があるかもしれません。どんどん意見をお願いします」

「うん。……これは完全に、おれの主観なんだけど」

「意見の種類はお気になさらず!」

「その、さ。エミリアのために友獣が入った宝石を身につけないといけないのはわかるんだけどさ」

「なんだよ、イザヤ。煮え切らないな」


 ギルド長様に急かされたイザヤ様は、気まずそうに頬をかきます。

 そして、わたしを見ました。


「……エミリアは、嫌じゃない?」

「何がでしょう?」

「その、耳にたくさんの装飾品を着けるってさ、こう……目を合わせたらいけないような人に見られない?」

「ぉ、ん?」

「いや、良いんだ。忘れて」


 イザヤ様が心配されていることの真意がくみ取れず、思わず変な声を出してしまいました。そのせいで、イザヤ様が慌てて出された意見を否定します。

 そんなイザヤ様を見たギルド長様が、何かを企んでいるような口元を手で隠しました。


「イザヤ。わかる、わかるぞ。お前の気持ち。そうだよな、心配になるよな」

「ギルド長様はおわかりになったのですか」

「エミー。つまりイザヤは、こう言いたいんだ。見た目が怖くなちゃうと将来の結婚相手も逃げてしまうのではないかってね」

「イザヤ様……」

「いや、その、違うんだ! 別にエミリアはどんな格好になっても可愛いから何も問題はないと思うんだけど!」

「イザヤ様は、やはり素晴らしいお方です。弟子の将来まで考えてくださるなんて」


 わたしの発言に、イザヤ様とギルド長様が驚いたようなお顔をされました。

 ギルド長様は憐憫のような表情をされ、イザヤ様の肩を叩きます。

 イザヤ様はどこか諦めの境地のようなお顔をされているような気がするのですが、わたし、何かしてしまったでしょうか。


「イザヤ……エミーには勘違いしないような言葉で伝えないと駄目だと思うぞ」

「それは、何となく思っていました。でも、まだちょっと……」

「まだってことは考えているんだな。結婚式には呼んでくれ。絶対に駆けつけるから」

「イザヤ様、結婚されるのですか? どうしましょう。そうしたら、わたしは一人でやっていかねばいけません」

「…………いや、エミリア。その心配はしなくて大丈夫」

「え、そうなのですか?」


 わたしが重ねた言葉で、イザヤ様は少し肩を落としたように見えました。

 そんなイザヤ様をまた慰めるように、ギルド長様が肩を叩きます。

 お二人の仲が良いのはわかっていましたが、わたしだけ話の意図を汲めないのは悔しいです。

 イザヤ様の一番弟子として、もっと師の言葉を理解できるようにならなければ。


 わたしがそう決意した後。

 ギルド長様からある人物の紹介を受けました。今後の活動のため、わたしの身を守るため、その方の所へ向かいます。

 ギルド長様からの手紙を携えて。



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