031 テイマーの未来のために
二体目のサタルパ、パルタを友獣にしたわたしは、イザヤ様と一緒にルコへ行きます。
その道中、イザヤ様と相談しました。
テイマーの未来のため、パルタに畑を作ってもらいますが、それを任せるのはなるべく少ない人数にしようと。
まだテイマーの可能性を探っている段階です。多くの人に目撃されることで魔塔に報告されないように、もしくは報告が遅れるようにしようということになりました。
わたしはこれまで、ルパと一緒に野菜の魔獣達と戦っていたと思っていました。
しかし実際は、サタルパが耕した畑に野菜の魔獣が来るらしいのです。来る、というと語弊があるかもしれません。生えてくる、という言葉が正しいでしょう。
パルタに活動してもらうためには、野菜の魔獣達の対処も併せて伝えないといけません。
「イザヤ様。ルコは復興の最中ですが、網を用意できるでしょうか」
「網? 何に使うの」
「野菜の魔獣の名前を存じ上げないのですが、トマトを捕獲します」
「トマトなら、サポモだね」
「サポモは、飛びかかってきて自爆する子なので、その前に捕獲すれば問題ないのです」
「<器用>も三桁だよね? エミリアが作れると思うよ」
言われ、わたしはまだまだ自分のステータス管理ができていないと痛感します。
わたしは現在、<器用、699>です。20になっただけでジャガイモをするすると剥けるようになったのです。
三桁あれば、もしかしたらパパッと欲しいものを作れるようになるのではないでしょうか。
ルコへ行きがてら、復興材の中から紐と棒をいただきました。そしてパパッと網を作ります。
場所を移し、食堂の女将コノル様に裏へ来ていただきました。そこで初めてわたしがテイマーだと明かし、畑を作ることの了承をいただきます。
他の方はそれぞれ復興作業に忙しく、この場にはイザヤ様とコノル様とわたししかいません。
畑を作った後コノル様だけで対応できるか心配でしたが、コノル様は何と昔冒険者だったとか。職業は他に選択肢がなく剣士だったそうですが、己の拳一つで魔獣と戦っていたようです。
「テイマーだなんて聞いたことがないけど、大丈夫なのかね」
「えぇ、安心してください。これからわたしがテイムし友獣となったサタルパを出します。魔獣ではありませんので、攻撃は控えてくださいね」
小指の黒い指輪を二度触り、パルタを出します。
「パルタ。できる限り広い畑を作ってください」
<是>
パルタが、縦に横に動き、土を柔らかくしていきます。畝を作り、畑として完成させました。
すると、それほど時間が経たない内にポコッと青黒い魔獣が出現しました。
「サヴォロだ」
「キャベツはそのようなお名前なのですね。コノル様、この子は畑を転がり回ります。捕まえるまでは大変ですが、捕まれば潔く大人しくなる子です」
「わかった。捕まえれば良いんだね」
コノル様がサヴォロを捕まえるため動きます。
するとそんなコノル様の足下を、パルタではない何かが動き回ります。
「足下にジャガイモがいます!」
「サパタは茎を中心に動き回るので、引き抜いて!」
「コノル様! 背後からサポモが近づいています! お手伝いしますね!」
作った網を使い、サポモを捕獲します。少し網の中で暴れますが、すぐに手足がなくなり、赤く熟れたトマトになりました。
「前方、タマネギが出現しています! わざと催涙液を噴射させてください! 一回だけしかできないので!」
タマネギはサポラと言うようです。イザヤ様も野菜系魔獣の捕獲に動きます。
青黒い野菜系魔獣は、捕獲されたり攻撃手段をなくすと、食べ頃の美味しそうな色になります。
この野菜達には、何度助けられたことか。この子達がいなかったら、わたしは満腹状態を知らないままでした。
しかし、不思議です。手足があって顔もあるのに、戦闘意欲を失うと野菜になるなんて。
張りツヤのあるキャベツ。ごろっと大きなジャガイモ。瑞々しいトマト。きゅっと引き締まったタマネギ。
どれも美味しい食材です。
一通り野菜系魔獣と戦い終えると、食材が一気に増えました。
「ふぅー。なかなかな運動量だね」
「ルコの復興のため、パルタをコノル様へ預けます。パルタが畑を耕すと魔獣が出てきますので、コノル様の良き時機に食材を集めてください」
「そりゃありがたいけどさ、あたし一人じゃ難しいよ。せめてもう一人に知らせちゃダメかい」
コノル様から聞かれ、イザヤ様を見ます。頷いてくださったイザヤ様を確認しました。
「では、コノル様が信頼できる人を選出してください」
「わかったよ」
コノル様は給仕として働くわたしの様子を気にかけてくださった方です。きっと良いようにしてくださるでしょう。
わたしは日陰にいるパルタに近づきます。
「パルタ。あなたはわたしの友獣ですが、先程一緒に動いてくださったコノル様の指示に従うのですよ」
<是>
こうしてわたしは、ルコの食糧問題を解決しました。野菜だけ、ですが。
それから、イザヤ様はまたルコの復興作業へ戻っていきました。
わたしも、給仕として働きます。
テイムによってステータスは上がっていましたが、今はまだそのことを公にはできません。そのため、変わらない動きを心掛けました。
少し、心配していました。
敏捷性も上がっていたので、ブロンズ級の見習い以上の動きをしてしまうのではないかと。
結論からすれば、あまり問題ではなかったです。
様々なステータスの数値が上昇しましたが、体力は48のまま。体力とは持久力や筋力のようなもののようです。
重たいものは持てませんし、疲れも溜まります。少しだけ早く動けるようになっても、体力が追いつきませんでした。
今後冒険者として活動するにあたり、体力をつけていかないといけませんね。
本日、もう一つ更新します。




