029 エミリアができること②
ルーガの技能牧場の開拓が終わり、ステータスは体力以外が三桁となりました。
「イザヤ様。つかぬ事をお聞きしますが、三桁は冒険者の等級だとどの辺りでしょうか」
「そうだね。人によって数値の上がり方が違うから一概には言えないけど、ゴールド級になってすぐぐらいかな」
「なんと……! わたしはまだ、ブロンズ級の見習いですが、まさか、そんな数値になるなんて」
「普通は、レベルを上げて数値が上昇していく。昨日の今日で上がり方が異常だ。ステータスのことはばれないようにしてほしい」
「そ、そうですね。ルコの復興に目処がついたら、ギルド長様に相談してみましょう」
復興、という言葉が出たからか、イザヤ様から質問されます。
「そういえば、どうしてここまで来たの? おれと繋がりがあるってわかったらエミリアまで何か言われちゃうよ」
「それは構わないのですが、イザヤ様にご相談がありまして」
「相談?」
イザヤ様に、食堂の女将コノル様から聞いた食糧事情を伝えます。
そして、わたしがやりたいことも。
「いかがでしょうか」
「うーん……どうだろう。それこそ、チェリニさんに相談してみないと」
「ちぇりに様……あっ、ギルド長様ですね!!」
「そういえばエミリアはチェリニさんの名前を知らなかったっけ。まあ、それはともかく、おれ個人の判断では難しいかな」
「ですが……わたしにしか、できないことだと思うのです」
フスラン帝国のテイマーの方にお願いできれば良いですが、その時間があるならばラゴサへ行ってギルド長様に相談した方が早いと思います。
ルコは今、復興のために動いているのです。
わたしは、イザヤ様の判断を待ちます。
「どっちが良いかなあ……」
「どっち、とは」
「いや、この先のことを考えていたんだ。もし、ルコのためにエミリアが新たなサタルパをテイムするとする。そしてルコの食糧事情を改善。一つの所でそういうことがあると、他で復興しなきゃいけないときに、エミリアが駆り出されることになる」
「それは、テイマーの処遇改善に繋がるのではないでしょうか」
「繋がれば良いけど……」
イザヤ様曰く、今までが不遇すぎてテイマーのことが知れ渡っていないからこそ危険なのだとか。
わたしは研究対象として捕らわれ、短くない時間を奪われてしまうかもしれない、と。
「ですが、いずれはテイマーのことも知られていきます。そのきっかけが、ルコでの畑作りというのは、いかがでしょうか」
「それは、そうなんだけど……」
「イザヤ様には、他の懸念点があるのでしょうか」
質問すると、イザヤ様はわたしに目を向けます。
何か考えていらっしゃるようです。
「畑の管理とか、そういうのはまあ、ルコの街の人に任せれば良いと思うんだ」
「そうですね。わたしがずっとルコにいるわけにもいかないですから」
「そうすると、どっちが良いかなって」
「何と何を比べていらっしゃるのですか」
「……今、おれは次元の裂け目を意図的に作った犯人だと思われているでしょ? そんなおれと一緒にいるとエミリアの努力が無駄になっちゃうかもしれない」
イザヤ様の心配を聞き、ほっとします。
「イザヤ様はお優しいですね。わたしが悪く言われるかもしれないとお考えなのですね」
「んー……でも、いざって時に近くにいたいし……」
「それならば、簡単なことです。わたしとイザヤ様が知らぬ仲ではないと示しながら、わたしがテイマーとして活動すれば良いのです」
「いや、とは言ってもね?」
「イザヤ様はおっしゃったではないですか。わたしが単独で行動することはダメだと」
わたしの言葉を聞き、イザヤ様がハッと気づかれたようなお顔をされます。
「わたしとイザヤ様は一心同体。二人でいなければいけません。こうして相談しているのも、イザヤ様は必ずわたしの隣にいてくださると信じているからなのです」
「……そうだね。エミリアには魔獣のことも学んでほしい。それは、一緒に行動している方が伝えやすいしね」
「では」
イザヤ様が力強く頷かれます。
わたしがやるべきことが決定しました。
ルコの食糧事情を改善する。そのためにもルパ以外のサタルパをテイムしなければいけません。
「イザヤ様。サタルパという魔獣は、本来はどの辺りに出没するものでしょうか」
「サタルパは土以外の場所には行けない。だけど、土があればどこにでも行ける。明るい場所に出ると気絶するから、暗くて土のある場所だね」
「それは例えば、森の中、ということでしょうか」
「そうだね。その辺りが一番出やすいと思う」
「では、近場の森に行きましょう」
イザヤ様と一緒に天幕の外へ出て、片づけました。そしてウォルフォード辺境領に近い方へ進みます。
イザヤ様曰く、フスラン帝国へ行く道が森の中を通るのだとか。その道から少し奧へ進めば、サタルパが出やすくなります。
本日、もう一つ更新します。




