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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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019 エミリアの可能性


 十年間一緒にいてくれたファラが友獣(アミスティア)になりました。

 ということは、畑で暴れる野菜達と戦ってくれていた戦友も仲間にできるかもしれません。


「あの、一つ伺ってもよろしいでしょうか」

「どうしたの、エミリア」

「地中から現れる、鼻先が長めの魔獣は何というお名前でしょうか」

「その特徴ならサタルパだね」

「ありがとうございます。その、可能性の話なのですが、そのサタルパもテイムできるかもしれません」

「え、どういうこと?」


 質問されたギルド長様に答えるように、ウォルフォード家での暮らし方をお伝えしました。最近の、ヨークボ様との話も。

 ギルド長様からは慰めるようなお声をかけてもらいます。

 イザヤ様からはなぜか、冷気を感じました。


「そんな訳なので、あの子もテイムしたいのです」

「ご実家の方に戻るのは危険な気もするけど……エミーが力をつけるためにはテイムも必要だ。イザヤはどう思う?」

「金輪際、エミリアに馬鹿な話が持ち込まれないようにすべきだと思います」

「ん? そんな話だったか? まあ、それも一理あるな。いっそのこと、イザヤと駆け落ちします! だから絶縁してくださいって、言っても良いかもね」

「望むところですよ。なにせおれは、国の英雄ですから。エミリアが幸せになるのなら、いくらでも手伝います」


 力説するイザヤ様を見て、ギルド長様はニマニマと笑ってしまう顔を抑えているように見えました。


「おやおや? イザヤってばすっかり大人になって」

「何を……って、ち、違いますよ!? おれはエミリアの幸せを願っているだけで!!」

「そこは、おれがエミーを幸せにする、じゃーないのかね」

「だから、違うっ」


 ギルド長様はイザヤ様と仲良しですね。

 お二方を見ていると思います。

 自分の処遇を他人任せにしてはいけないと。

 そもそも、何も言わずに出てきました。成人している大人としては、よろしくない行動です。

 しっかりと婚約を解消して、イザヤ様と一緒に行動できるようにならなければいけません。


「イザヤ様。サタルパをテイムできるかどうか試したいので、一緒にウォルフォード領へ戻ってもらえますか」

「そ、それは、もちろん!」

「スルーされて悲しいね、イザヤ」

「では、よろしくお願いします」

「さらにスルー!?」


 イザヤ様がギルド長様に勝ち誇ったかのような笑みを見せていました。お二人は本当に仲良しですね。


 家を出てから二日。

 わたしはイザヤ様と一緒に、ウォルフォード家本邸へ向かいます。





   ▼


「これでようやく、ウォルフォード家も落ち着くだろう」


 双子の姉娘エレノラと王太子ボルハとの婚約を発表後、帰宅したレット・ウォルフォードは腕を組み長椅子に座る妻ヘレンの隣に座る。

 双子の妹であるエミリアの婚約者も見つけることができた。相手のヨークボは少々問題を抱えているが、本邸からエミリアを追い出せるのならそれも許容範囲だ。


「ヘレン。すまないが、念のために魔法をかけておいてくれるかい」

「良いでしょう」


 レットはヘレンを向くように体の位置を変え、待つ。

 レットの髪は濃い緑色だ。本来の瞳の色は薄緑をしているせいで、子供の頃はよくカラバシンという野菜に似ているとからかわれたものだ。

 しかし髪はカラバシンの皮の色そのもので、風属性の魔法は使えた。気配を消して、レットをからかった相手が最も屈辱を感じる場面で仕返ししている。


 それからも風魔法の鍛錬を怠ることなく励み、歴史あるウォルフォード家に婿入りが決まった。

 瞳の色以外は、全てが完璧だったのだ。


「ヘレン? 今日はいつもよりも長くかかっていないか」

「擬態なんていつも簡単に施せていたのに、疲れているのかしら」

「そうかもしれないね。念願叶って、エレノラがボルハ殿下の妃になると発表された。土地が広いだけのリンウッド辺境伯家に勝ったんだ。気持ちも高ぶっているのかもしれないよ」

「それにしても……」


 突然魔法が使いづらくなったことに、ヘレンは眉間にシワを寄せて苛立っている。

 ヘレンは水魔法に精通しているから、レットの瞳の色を濃い緑に見せるのも慣れているはずだった。

 しかし、いつもよりも倍の時間をかけて魔法をかけ終えたようだ。


「さあ、ヘレン。今日はもう寝よう」

「そうね」


 レットはヘレンの手を引き、寝室へ向かう。


 今日馬車で供に本邸へやってきたヨークボと女性達は、家の中では一番下の部屋を用意させている。それでも豪華だとはしゃいでいたから、普段はよっぽど質素な部屋で暮らしていたのだろう。


 ヨークボ伯爵家は、あちこちで金を借りていると有名だ。エミリアの婿になれば多少の融通は利かせると言ったら、簡単についてきた。

 あとは、本邸には邪魔な人間(エミリアとクズ共)を領内の別邸へ追い出せばいい。


(……まったく。エミリアを見ていると昔の自分を見ているようで不愉快だ)


 色素の薄い瞳。それは子供の頃の自分を思い出させ、擬態魔法をかけてもらったところで意味はないのだと突きつけられているような気持ちになる。

 しかし、レットはエミリアとは違う。努力で全てを手に入れた。


 いつ家督を譲っても申し分のない長男(セイン)。若くして副魔術師団長になった次男(ケンデル)。そして、王太子妃に内定した長女(エレノラ)

 魔力なしの次女(エミリア)がいなくなれば、完璧なウォルフォード家ができあがる。



 ヘレンと二人で旅行に出て思い出を作っても良いかもしれない。

 そんな風に考えるレットは知らなかった。

 まさか、魔力なしと侮るエミリアが家を出るとどうなってしまうかなんて。


   ▲




 明日は金曜日です。

 朝更新しますので、ブックマーク登録をしてお待ちいただけると幸いです。

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