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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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018 技能牧場

 少し長めの文量です。


 ギルド長様から紙と筆記具を受け取ったわたしは、今見えている情報を書き出します。

 一番左上に、白く点灯しているボタン、その隣に火のようなマークと友獣(アミスティア)と書かれ、ファラの名前も表示されています。その下には縦に十七、横に十二のマス目が描かれているようです。

 マス目の項目は上から、攻撃力Ⅱ、防御力Ⅱ、敏捷性Ⅱ、幸運Ⅱ、技能Ⅱ、器用Ⅱ、忠誠Ⅱとあり、同じ七項目のⅠが並び、下の三段はスキルⅢ、スキルⅡ、スキルⅠとなっていました。


「へえ、面白いね。体力が忠誠に変わっている以外は、ステータス画面と同じだ」

「エミリア、今さらだけどこんな大切な情報、明かしちゃって大丈夫なの?」

「はい。わたし自身のステータス画面は数値が低すぎてとてもお見せできるようなものではありませんが、技能牧場は問題ありません。むしろ、テイマーの良いところをどんどん広めていって、魔獣にも良い子はいるのだと知ってもらいたいです」

「テイムしているから、厳密に言うと魔獣ではなくなっているけどね」


 ギルド長様のお言葉を受けて、確かにと思います。わたし自身は納得できましたが、イザヤ様がなぜかギルド長様を睨んでいました。


「マス目の方は? 何かできそうなことはある?」

「確認してみますね」


 マス目のどこかを触ってみようと思った瞬間、全てのマスに草が生えました。厳密に言うと、半透明の板に草の絵が描かれています。

 項目はそのままわかりますが、上の方の(マス)は触っても変化がありません。

 どこを触れば変化があるのかと考えていると、ファラがひらりと舞い降りて、ある箇所の草を指定しているように感じました。


「ファラが、この草を触れと言っているように感じるので、触ってみます」


 ファラが示した箇所は、下から四段目の<忠誠Ⅰ>の欄です。そこの、右から五番目にある草を触りました。

 するとファラはわたしの指先に止まっているのに、大きさを小さくしたようなファラが草を食べていきます。

 蝶は草を食べないとは思いますが、そういう演出なのでしょう。

 確定された草がなくなると、<+8>と表示されました。


「わっ」

「どうしたの、エミリア」

「<忠誠が5を越えました。特典として二つ開拓できます>と新しく表示されました」

「開拓? 牧場だから??」

「わかりません。ですが、あと二つ開けるみたいなので、追加でやってみます」


 ギルド長様の疑問に答えつつ、わたしは技能牧場のさらなる開拓を進めます。

 技能牧場を見ると、今度は開拓できる箇所が指定されています。今開いたばかりの、<忠誠Ⅰ+8>と隣接する上と左右の草しか開拓を進められないようです。

 下は<スキルⅢ>の欄です。これは<スキルⅠ>の開拓が必要だと、技能牧場の上に重なるようにして注意書きが出ました。

 恐らく、上位項目の忠誠なども下位の項目を開拓しないと開かないのでしょう。


 どれにしようか悩んでいると、指に止まっていたファラがふわりと動きます。


「ここ?」


 質問すると、ファラはまるで肯定するようにわたしの指の周りを飛び回ります。

 ファラの願い通り、<忠誠Ⅰ+8>のすぐ上の草を触りました。

 先程と同様に、小さいファラが草を食べていきます。<器用Ⅰ+8>と表示されました。


 そのまま、残りの一つを選択します。

 上に上にと選択したので、今度は<技能Ⅰ>かなと思い触れようとすると、ファラから触ってはダメだというような意思を感じました。

 となると、触れるのは<忠誠Ⅰ+8><器用Ⅰ+8>の左右どちらかになります。

 <忠誠>に手を伸ばすとファラが反対の意を示すので、<器用Ⅰ+8>の右の草を触りました。

 技能牧場の演出の後、<+9>と表示されます。

 8の隣に9。横マスが十二あるので、恐らく左から数字が上がっていくと推測できますね。


「開き終わりました」

「ステータスは?」


 技能牧場の隣にある、ステータス画面を見ます。

 最初に見た数値は、体力以外の全てが一桁でした。しかし技能牧場で上がった器用が<+17>と点滅しています。その数字に触れると、加算された数字が反映されました。


「エミー? どうしたの」

「……技能牧場を開拓する前に3だった<器用>が、20になりました」

「忠誠は? ステータス画面だと体力?」

「いえ……体力は変わらないみたいです」

「今回は偶然<忠誠>の5以上を開いたから二つ分のステータスが反映されるみたいだけど……」


 ギルド長様が、イザヤ様を見ます。視線を交わしたイザヤ様は、重々しく頷きました。

 わたしが首を傾げていると、ギルド長様が教えてくださいます。


「ステータスの数値が上がるのは経験値を貯めるとイザヤから聞いたと思うんだけど、厳密に言うと経験値を貯めてレベルを上げるんだ。どの数値が上がるかは人それぞれだけど、レベルが上がらないとステータスも増えないんだ。エミー。レベルは上がっているかい?」


 ギルド長様に聞かれ、ステータス画面を確認します。

 名前の隣に書かれているのは、LV1。

 そのことを伝えると、ギルド長様もイザヤ様も難しいお顔をされます。


「エミリア。テイマーのことを広く知ってもらうためにはまず、エミリア自身がもっと強くならないといけない」

「? はい。そのつもりでいますが」

「エミーはまだ実感がないかもしれないけど、レベルが上がってステータスの数値が増えるのは、最大でも9までだ」

「ということは、<+17>は二つレベルが上がったぐらいの数値ということでしょうか」

「運が良ければ、という話。イザヤはどうだった? どれでもいい。最初の数値から+17になったのはどれくらいレベルが上がってからだった?」

「おれのときは五回ですかね」

「だろうね。それぐらいが平均だ」


 お二方の話からすると、レベルも上がっていないのに+17も増加するのはありえないぐらいの数値ということになります。


「魔獣が討伐対象だったから、その魔獣をテイムするテイマーは不遇職という扱いだった。でも、テイムがこれだけ極端な数値を上げるということは」

「世間を揺るがす新事実、ですね」


 ギルド長のお言葉に合わせるように重ねると、イザヤ様が顎に手を当てて何かを考えている様子でした。

 そして、ぽつりと言います。


「……フスラン帝国に何回か行きましたけど、エミリアみたいな髪色の人はいなかったはず」

「まあ、そうだろうね。ボクも個人的に行ったことがあるけど、四属性のどれかの色だった」


 イザヤ様とギルド長様が、二人揃ってわたしを見ます。


「エミリアが魔力なしというのは、本当?」

「はい。わたしはウォルフォード家の誰かのような魔法は使えません」

「エミー。冷静に聞いてほしい。本当の魔力なしはイザヤのように茶色系か、王族様のように金色の髪や瞳なんだ」

「わたしは、オレンジみのある白ですが……」

「エミリアはサファッラをテイムしています。火属性持ちなのは明らかなので……」


 魔力なしの色合いではない髪と瞳。

 そして、火属性をテイムできた実績。


 わたしと、イザヤ様と、ギルド長様が同時に唾を飲みこみます。


「「「全属性持ち……」」」


 三人が同時に呟きました。

 それは偶然でしたが、三人が呟けばそこそこの声量になるもの。

 ギルド長様は慌てて部屋の外を確認し、他の誰も聞いていなかったと確認しました。

 そして、内密な話をするように声を潜めて言います。


「……エミー。全属性持ちなんて、今まで確認されたことがないんだ。君が魔塔の人間に見つかってしまうと、研究材料として監禁されてしまうかもしれない」

「え゛」

「イザヤ、わかっているな?」

「もちろんです」

「あ、あの……?」


 深刻な雰囲気になっています。

 わたしだけこの状況を理解できていません。


「エミー。テイムする前から魔獣と心を通わせていることすら、前例がないんだ。そしてそこに全属性持ちの可能性が出てきた。今後、イザヤ以外とは行動を共にしないでほしい」

「あ、はい。元々そのつもりでした。イザヤ様には早く冒険者業に戻っていただくため、独り立ちができるようになったら別行動をしようと思っていましたが」

「駄目だ。もちろん、エミー自身が自分を守れるように力をつけないといけない。でも、それだけじゃまだ危ない。イザヤの秘めた気持ちはさておき、国家権力すら手を出せないような状況になるまでは単独で行動しないでほしい」


 真剣な表情で話すギルド長様をなぜか睨みつけた後、イザヤ様も言います。


「エミリアは、独り立ちのことは考えないでほしい」

「わ、わかりました。ご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いします」


 魔力なしだと思っていたのに、全属性持ちかもしれない可能性が浮上。


 わたしはずっと双子の出涸らしの方と言われてきましたが、実はとてつもない才能を秘めていたのですね。


 イザヤ様になるべくご迷惑をおかけしないようにしよう。

 そう考えたときに、実家で別れた戦友を思い出しました。

明日、お昼更新あります。

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