124 イザヤ様の提案
「エミリア。確認だけど、あと一回で<忠誠Ⅱ>に届く友獣はいる?」
「グランがいます」
「グランか……」
何やら悩んでいるイザヤ様は、思いついたことを教えてくださいました。
わたしはテイマーなので、友獣のスキルを借りるだけではありません。ついつい瞬殺してしまいますが、友獣と一緒に攻撃したと判定されれば、それも開拓に繋がると。
「進化させた後でも100万のステータス値だから忘れがちだけどね」
「そうでした。協力攻撃。確かにテイマーである醍醐味でもあります」
「と、思ったんだけどね。グランだと難しいかなって。一番やりやすそうなのは、火属性かな?」
「状態異常にさせるのは、火属性です。ですが討伐することを前提に考えると、地属性でしょうか。蛇型友獣、猿型友獣ですかね」
「テンとペルは拘束するときに手伝ってもらったけど、共闘はしていなかったね。その二種類の友獣の中で、どの二体が一番全開拓に近い?」
イザヤ様に問われ、それぞれの技能牧場を確認します。
地属性は主にガットの<発育>を利用していますので、なかなか開拓が進みません。
ですがその中でも、ペルは<幸運Ⅰ>まで開拓できています。
「四体の中であれば、ペルが一番可能性があります。共闘判定が四回出れば、<忠誠Ⅱ>に届きます。あとは、テンでしょうか。一度共闘判定が出れば、<発育>を使えるようになります。建造物が破壊されることは喜べませんが、植物を成長させることなら問題ないと思いますので」
「了解! そうしたらさ、今日は技能牧場の開拓でだいぶ時間が経っちゃったでしょ? 今はルコにいるから、明日になったら茸型魔獣を討伐しに行こうよ」
「なる、ほど! イザヤ様は天才ですね! わたしよりもテイマーのことを理解しています」
「エミリアとはずっと一緒にいたいからね。戦闘ではエミリアに助けられっぱなしだし、これぐらいは」
「そ、それでは、今日のところは早めに休むことにしましょう」
不意打ちのような言葉を聞き、思わず心臓が跳ねました。
わたしもイザヤ様と一緒にいたいですが、今までのように軽く返せません。挙動不審なように、言葉も詰まってしまいました。
イザヤ様は、わたしのことを意識してくださっているのでしょうか。あまりにもさらっと、わたしが喜ぶようなお言葉を言われます。
それぞれ寝る支度をし、朝に備えますが。
ベッドは二つあるとはいえ、わたしとイザヤ様は物理的な距離を開けられません。
今日は縄もないので、完全に無防備なイザヤ様がわたしの横にいるということになります。
イザヤ様の呼吸。
衣擦れの音。
一度意識してしまうと、被害が出るギリギリの距離より少し手前ほどの距離があっても、イザヤ様のことを考えないなんてできません。
明日のためにも、しっかりと寝なければ!
目を閉じ、深い呼吸を繰り返します。
ですが隣にイザヤ様がいるというだけで、眠気は覚醒してしまいました。
わたしは早々に良質な睡眠を諦め、<健康>を胸の辺りにかけます。
これで万が一、一睡もできなくても問題なく明日を過ごせるでしょう。
翌日。
ルコを出まして、わたし達は魔の森へ行きました。
そこで四体のサフンギをペルと、その後はテンと一度共闘し、早々に本日の目標を達成します。
魔の森から出て、ウォルフォード領内の森からも出たところでイザヤ様がいつものように天幕を張ってくださいました。
その中で技能牧場を開拓します。
まず、ペルを全開拓しました。これによりステータス値が<∞>となったので、安心してメシュを進化させる準備を進めましょう。
属性のマークをよく見ながら、進めていきます。
<器用Ⅱ>は右から四番目と五番目。それに八番目と九番目。
<技能Ⅱ>は右から五番目と八番目。
<幸運Ⅱ>は右から、五番目から八番目。
<敏捷性Ⅱ>、<防御力Ⅱ>はそれぞれ右から六番目と七番目。
<忠誠Ⅱ>は右から九番目。
<攻撃力Ⅰ>は右から九番目と十番目。
<防御力Ⅰ>は右から十番目。
<敏捷性Ⅰ>は右から十番目と十一番目。
<幸運Ⅰ>、<技能Ⅰ>、<器用Ⅰ>、<忠誠Ⅰ>は右から十一番目。
<スキルⅢ>は右から十一番目と十番目。
<スキルⅡ>は右から十番目と九番目。
<スキルⅠ>は右から、九番目から五番目。
以上で、メシュの技能牧場の開拓は終了です。
進化前の演出が入りました。
メシュが、進化します。
右の五番目のアロイカフスが熱くなりましたので、触って出しました。
半魚人型の友獣だったメシュは、虹色の人型を取ります。耳の部分が鰭となっており、顔や手などに鱗があるようです。
見た目は、十代後半くらいの青年のような格好をしています。
静かに拍手しているイザヤ様がお可愛らしいと思いつつ、メシュをアロイカフスに戻しました。
次は、ステータスを<∞>に戻すため、一度テンの<スキルⅡ>を開拓しておきます。
<発育>が使えるようになったので、天幕から出て使いましょう。
地面に、9回<発育>をかけます。
そうすると偶然、同じ数だけの木が生えました。わたしが円を描くようにスキルを使ったので、天幕を囲むように円状の小さな林が誕生しています。
さらに幸運なことに、<発育>がかかったのは果樹の種だったようです。今後、この場所は冒険者方の憩いの場になるかもしれません。
規定の数のスキルを使ったので、テンも全開拓しました。




