123 少しでも強く
ドニー様の術を破ったので、恐らくドニー様から何かしらの攻撃が仕掛けられるでしょう。
有事に備えて、少しでも強くなっておくために技能牧場の開拓をしておこうと思います。
実験場のような場所からルコへ戻ったわたし達は、取っていた宿の部屋に行きました。
わたしが開拓を進めている間は、イザヤ様は愛剣の手入れをしたり筋肉の鍛錬をしたりするようです。
冒険者証を触ると、ステータス画面の右上の部分に白く点滅するボタンが複数ありました。一つ一つ、開拓を進めていきましょう。
一番多いのは、鳥型友獣ですね。<気配探知:対空気中>をたくさん利用したので、開拓できる回数は46回だそう。
これはもう、進化までいけると思います。
ペリカは視覚を強化しますので、できれば進化させておきたい友獣です。しかし、進化を優先すべきはイザヤ様が失ってしまっている味覚を強化する、半魚人型友獣ですね。
他にも同じ型の友獣はいますが、メシュが一番開拓を進めています。
まずはメシュから開拓をしようと技能牧場を開きましたが、名前の隣には<+7>とありました。
メシュは<修復>を使用しています。
技能牧場の画面を確認しましたが、ギリギリ進化に至りません。
進化できないのであれば、仕方なしです。
最初に見た、ペリカの開拓を進めましょう。
<攻撃力Ⅰ>は右から五番目と四番目。それに八番目から十一番目。
<忠誠Ⅱ>は右から十一番目。それに五番目から八番目。
この項目により、全開拓も可能となっていますが、このまま進化を目指します。
<器用Ⅱ>が右から十一番目と十番目。
<技能Ⅱ>が右から、十番目から四番目。
<幸運Ⅱ>が右から四番目と五番目。それに九番目から十二番目。
<敏捷性Ⅱ>が右から十二番目。それに一番目と、四番目から八番目。
<防御力Ⅱ>が右から十二番目と十一番目。それに一番目と二番目。
<攻撃力Ⅱ>が右から、二番目から十一番目。
これで、ペリカが進化するための技能牧場開拓が終わったと思います。
尾が長めのつむじ風のようになりましたが、果たして進化できるかどうか。
待っていると、進化をするときの光が現れました。
もちろん、選択肢は<YES>。わたしのステータスの99%が譲渡され、ペリカが進化します。
ペリカが入っている、左の前から二番目のアロイカフスが熱を持ちました。
そこに触れると虹色のペリカが出たと思いましたが、すぐに人へ変身します。
どうやら喉袋は長めの顎で表現されているらしく、見た目は二十代くらいの男性に見えました。服装は、全身を包んでいるかのように見えるものを着ています。
「これは……」
「あ、イザヤ様。ペリカを進化させました。まだ一体目なので、これから続きの開拓をします」
「わかった。100万あるとはいえ、なるべくステータスが上げてほしいな」
「かしこまりました」
左から二番目のアロイカフスを触り、ペリカを戻します。
次に回数が多かったのは、グランですね。<修繕>のスキルを利用させていただきました。
開拓の回数は9回です。
<スキルⅡ>から<攻撃力Ⅰ>までを、右から一番目の開拓をしました。
ステータスは<∞>ではなくなっていますが、100万はあります。<+%>でなければ端数切り捨てとなりますので、<スキルⅡ>と<スキルⅢ>が増えたということになりました。
続いて多くできるのは、メシュです。
ですがメシュは、進化するに至りません。メシュも進化できないとなると、イザヤ様が失ってしまっている味覚を強化することができなくなってしまいます。
嗅覚に続いて味覚もとなると、イザヤ様が失ってしまった感覚を一時的でも取り戻せなくなる最悪の結果に。
一度メシュの開拓は保留にし、もう一体のガットの開拓を進めます。
利用したのは<発育>です。回数は、3回。
ガットも聴覚を強化する友獣ですので、ひとまず進化を目指しましょう。
<攻撃力Ⅰ>の右から、五番目から七番目までの開拓です。
さて、メシュ以外の開拓が終わってしまいました。
「エミリア? 何か悩んでる?」
「……イザヤ様。わたしはまた、やってしまったかもしれません」
「どうしたの」
「ペリカを進化させたことにより、ステータス値が100万になっています。<∞>に戻すためには、<忠誠Ⅱ>を開拓しないといけません」
「そうだね」
残っているメシュの、技能牧場の開拓状況を伝えます。
メシュは進化の可能性を残していますが、進化するためには回数が足りない状況。あと一回使えば<忠誠Ⅱ>に届く。
そんな状態だと相談すると、イザヤ様は何度か目を瞬きました。まるで、何も問題はないというように見えます。
「一回だったら罪悪感もないと思う」
そう言うと、斜めがけの鞄から革の水筒を取り出しました。
そして何を思ったのか、宿の床に少しこぼします。
「イザヤ様!?」
「これで、<修復>が使えるでしょ?」
「っ! なるほど!!」
直す、ということにばかり注目していました。
そういえば確かに、以前地獄絵図となった冒険者ギルド内で冒険者の方々の服などを乾かしましたね。
それと同じようなことで、床の水を拭かずに<修復>をかければ良いのです。
うっかり忘れていました。
イザヤ様の助言通り、床に<修復>をかけます。そうすることでメシュの開拓回数が<+8>となり、<忠誠Ⅱ>まで届きました。
メシュの、技能牧場開拓を進めます。
<技能Ⅰ>、<幸運Ⅰ>は右から二番目。
<敏捷性Ⅰ>は右から二番目と三番目。
<防御力Ⅰ>は右から三番目。
<攻撃力Ⅰ>は右から三番目と四番目。
<忠誠Ⅱ>の右から四番目を開拓しまして、全開拓ができるようになります。
進化させるためこのまま続けようとしたところで、気づきました。
「……イザヤ様。メシュの全開拓ができるようになっている状態ですが、このままではまた100万のステータス値に戻ってしまいます」
「あ」
イザヤ様も気づかれたのでしょう。
いいえ、イザヤ様は何も悪くないのです。わたしがメシュの開拓があと一回あればと相談して、それに答えてくださっただけなのですから。
「進化は、その場で判断しないといけないよね? でも技能牧場は、すぐに開拓しなくても……?」
メシュの技能牧場を閉じ、また開いてみました。
「で、できるときで、問題ないようです!」
「そ、そっか。それならメシュは保留に……いや、でもそうするとステータス値が上がらないよね」
「そ、そうです。メシュのときのように、他の方のステータスを……」
今、メシュを進化させてしまうと、ステータス値は100万になってしまいます。
メシュの開拓を保留にしたとして、他の方の開拓を進めるとしたら。
頭が、こんがらがってきました。
どなたの開拓を進めていけば?
落ち着くために深呼吸をしました。
するとその効果が出て、答えがわかります。
「どなたかの開拓を<忠誠Ⅱ>まで進めると、また<∞>となります。それからメシュを進化させ、またどなたかを全開拓すれば良いはず」
「そ、そっか。そうすれば良いんだね。でも、二体の全開拓って難しくない?」
「それが、問題です……」
各友獣方の技能牧場を確認すると、グランがあと一回の開拓を行えば<忠誠Ⅱ>になると希望が持てました。
ですが<修復>と違い<修繕>は、建造物を直すというスキルです。今は何もできません。
建造物が壊れるということは、そこに住む方々の生活を脅かすということです。壊れてほしいなどと望めるわけもありません。
技能牧場は、テイマーを強くします。ですが、進化や開拓の順番をよく考えないといけません。
縦軸を開拓し、<忠誠Ⅱ>に届かせて全開拓――という単純な考えではいけないようです。
簡単なようで難しい。
悩んでいると、イザヤ様が名案を思いついたようです。




