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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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114 複数の次元の裂け目


 次元の裂け目の発生は、直ちに処理をしないと大変なことになります。

 大量の魔獣、壊される街。

 対処が遅れれば遅れるほど、取り返しのつかないことになってしまいます。


 イザヤ様と頷き合い、わたし達は冒険者ギルドへ急ぎました。また、イザヤ様に背負ってもらっています。

 通達、とのことだったので、兵士の方に聞くよりも冒険者ギルドへ行った方が早いと判断しました。

 各地、という言葉が気になります。

 次元の裂け目が発生するのは、魔獣の断末魔が出てからのはず。普通ならば、そうなる前に冒険者のどなたかが討伐できると思います。


「ああっ。漆黒の旋風様!」

「状況を教えてください」


 イザヤ様に背負われて登場したわたしを見た王都のギルド長ハンネス様は、そのことを指摘せず教えてくださいます。

 次元の裂け目が発生したのは、リャドリ、ララゴ、ゴルハト、ルコの四つの街。それぞれ距離は違いますが、ルコ以外は王都から近い街です。

 特にリャドリは、普段メタン湿地の監視を行っているようで、同時期に活性化してしまったメタン湿地の方で手一杯だそう。


「イザヤ様。メタン湿地の魔獣方を討伐しながら、リャドリへ急ぎましょう」

「漆黒の旋風様、万歳!!」


 なぜか万歳をする呼びかけがされ、その場に居合わせた冒険者の方々がハンネス様のお言葉に従います。

 そんなことよりも次元の裂け目の処理でしょうと思いつつ、またイザヤ様に背負っていただきました。


 素早くメタン湿地に移動したわたし達は、そのまま冒険者の方々へ叫びます。


「今から攻撃を放ちます!! ただちにメタン湿地から離れてください!! 余裕がある方は、わたしの声が聞こえない方々を避難させてください!!」


 イザヤ様に背負われているわたしに首を傾げつつ、冒険者の方々はわたしの言葉通りに動いてくださいます。

 その後は迅速に物事が動きました。見回る必要がないほど、冒険者の方々がわたし達の背後もしくはメタン湿地から離れてくださいます。

 イザヤ様の背中から降りました。


「行きます!」


 気合を入れ、メタン湿地に向けて拳を向けます。わたしの攻撃は風圧となり、攻撃時点で発生していたすべての魔獣方を討伐しました。

 その後すぐ、イザヤ様にだけ聞こえるように顔を寄せます。


「イザヤ様。ここは以前も魔獣方が大量に発生していました。また、同じ量の魔獣方が湧くかもしれません。その対応のため、ファラをこの場に置いていきます」

「でも、それは……」

「緊急事態です。今のステータス値は<∞>ですし、王家の方にもわたしを捕らえられないでしょう」


 心配してくださったイザヤ様に礼をし、わたしは左の薬指を二度触ります。

 虹色の蝶の状態で出現したファラを見て、周囲のざわめきが聞こえました。


「ファラ。ここ、メタン湿地で発生する魔獣方を全て討伐してください」


 わたしの指示に対して肯定する意思を感じ、その後のファラは人型を取りました。

 そのことでまたざわめきが大きくなりましたが、色や見た目からファラが討伐されることはないと思います。


「ではイザヤ様。次はリャドリへお願いします」

「了解」


 イザヤ様に背負われながら、リャドリへ向かいます。

 ファラがいますから、手が空いた冒険者の方々も向かってくださることでしょう。


 リャドリへ向かう間、ずっと冒険者証がぶるぶると震えていました。どうやらまた、レベルが上がったようです。

 しかしそれには構わず、イザヤ様と一緒に移動し、リャドリに到着しました。


 かつては素朴で落ち着くような街だったのでしょう。

 次元の裂け目から発生した魔獣方によって破壊されたリャドリの街からは方方から煙が上がっています。ここで発生したのは、火属性だったのでしょうか。


 リャドリから逃げてきたのでしょう。安全だと思われる、少し街から離れた場所に、何人も怪我人がいらっしゃいました。


「イザヤ様。わたしの後ろにいてください」


 イザヤ様の背中から降りたわたしは、眼前に見えている範囲に向けて、<治癒>をかけました。

 回復された方々の歓喜のお声と、人格が変わってしまったらしい戸惑いのお声が聞こえます。

 そんな状況の中、わたしは再びイザヤ様の背中に乗せていただきました。


「イザヤ様! 次は街中へ!」

「了解」


 わたしは<∞>ですが、イザヤ様もほぼ四桁の数値。混乱している方々が寄ってくる前に移動しました。

 街中は惨憺たる状況で、各所で火の手が上がっています。水魔法を使える方はいらっしゃらないのでしょうか。

 街の規模としては少し小さめの、リャドリの街全体に水を行きわたらせるような状態は作れないでしょうか。

 相談すると、イザヤ様から名案をいただきます。


「街の中央に、確か噴水があったはずだよ。地中から汲み上げていたと思うから、そこでルーガが回転したら水を飛ばせないかな」

「なるほど! 早速実行してみましょう!」


 イザヤ様に噴水まで連れて行ってもらいました。王都と比べると小振りですが、確かに噴水があります。

 騒ぎの中、今も地中から汲み上げているのでしょう。一部欠けた噴水の縁からは水があふれています。


 わたしは左の人差し指に二度触れ、ルーガを出します。


「ルーガ! 噴水のところで回転して、周囲に水を飛ばしてください!」

<わかったー>


 ルーガは早速、噴水に入って回転しはじめました。

 小振りな噴水だったため、すぐに縁が壊れて水があふれ出します。そのあふれた水が、ルーガによって街の各所へ飛ばされていきました。

 わたしは噴水の欠片を使い、陶器の桶を作ります。そしてあふれる水の中で揺れていた草に、<発育>をかけました。

 すぐにわたしの背丈を超えるような草に成長すると、まるで意思を持つ生命体のように葉先を器用に使って、桶で汲んだ水を周囲に投げ飛ばします。


「すごい。こんな使い方もできるんだ」

「やってみたらできました」


 いくつか草の水投げ隊を作った後、イザヤ様の手を引いて街中を移動します。

 移動の最中、地面から生えていた草全てに<発育>をかけ、汲んだ桶の水を街の各所へ運べるようにしました。


 リャドリにいたのは、火属性の魔獣方。すべて水に弱く、他の冒険者方がすべて討伐したようです。わたしの尽力もあり、騒動を鎮圧できました。

 ルーガを指輪に戻し、乾く前に<修復>を使います。迅速にすることを優先したため、街を四分の一ずつ視界に収めて行いました。

 結果論ですが、これで半魚人型友獣(メシュ)の開拓を進められますね。


 リャドリでの活動を終え、すぐに次の場所へ移動します。

 次に近いララゴへ向かいました。

 ララゴではすでに討伐完了していたので、<修繕>を行います。ララゴの冒険者ギルドが倒壊せずに無事だったので、そこから街全体を見渡して一回で作業を終えました。


 次元の裂け目は、あと二つ。ゴルハトとルコです。

 距離としてはルコの方が近かったので、そちらを優先しましょう。

 イザヤ様の背中を借りて移動すると、ルコも討伐が完了していました。

 以前わたしが<修繕>をかけたからでしょうか。もしくは、何度も発生する次元の裂け目の対策で腕利きの冒険者の方が増えたのでしょうか。

 ルコは発生した魔獣方に壊されることなく、街の形を保っています。一部破損している箇所もありましたが、わたしが<修繕>をかける必要はないでしょう。


 最後の街、ゴルハトへ向かいます。

 わたしはそこで、<治癒>と<修繕>を行いました。

 こうして、各地で発生した次元の裂け目は一日にして収束したのです。

 報告のため王都の冒険者ギルドへ向かい、生存報告のためにお兄様の屋敷へ向かえたのは、夜深い時間となってしまいました。



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