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シンデレラ、その後  作者: 境時生
第一部
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双子

第三章

 このような経緯で、幼い頃に生き別れ、別々に育ったフィリップとマリアエレナ。

フィリップには、6歳違いの弟ジャンカルロが生まれ、将来の後継者としての道を歩み始め、国境の警備ではありながら、初陣の時が近づいていました。一方マリアエレナは、皇帝の姪に預けられていました。傭兵隊長であるエドモンが直接幼子を育てることは出来なかったのですが、エドモンが数々の戦功から皇帝と、皇帝の姪に気に入られたこともあり、養女マリアエレナは皇帝の姪の後見を受けるという幸運を得ていたのです。

 十四歳になったある日、堅信式を受けるために司教館に赴いたマリアエレナ。そこへ、国境警備に向かう途中で、父王フランソワの密使として司教館に立ち寄ったフィリップが出合ったのでした。

 一目見たときから強烈に惹かれたった二人。もちろん自分たちが双子であることは知りませんが、どちらともなく話かけ、すぐに打ち解けあったのです。双生児であるゆえか、お互いの思い、気持ちが手にとるようにわかるのです。二人は、近いうちにどこかで落ちあうことを固く約束し、司教館を後にします。


 それから二年の間、頻繁にあえなくとも、二人の恋はひそやかに進行し、十六歳のとき、それぞれの親に結婚を認めてくれるよう堂々と交際を告白したのでした。驚愕するエドモンとフランソワとエレノア。当然のごとく二人は引き離され、事実を知らされたフィリップはショックから、もう二度と恋はしない、自分は一生結婚しない、僧籍に入り、後継者の位はジャンカルロに譲ると宣言。一方マリアエレナも、フィリップの宣言を聞き、修道院に入ろうとしましたが、皇帝の命令で、皇帝派のとある一領主の次男のもとへと嫁ぐ決心をしたのでした。


 その頃、エドモンは、単なる傭兵隊長ではなく、僭主国家の一領主となっており、自分の城を持つ身になっていました。皇帝の命に背くことは、養父エドモンの立場を難しくさせ、長年恩を受けた皇帝の姪の行為を仇で返すことになってことを、マリアエレナはわかっていたからです。

 この事件で、フィリップの決心をすぐ認めたフランソワに、エレノアは内心傷つきました。本当に自分の子と信じているジャンカルロが後継者になることに安心したのではないかと。しかし状況はもっと複雑でした。法王派でありながら、法王が替わるたびに振り回されることを恐れたフランソワは、将来、フィリップを法王庁内に潜入させ、いち早く動静をさぐる役目を期待していたのでした。しかし夫婦の間の会話が殆どなくなっていたエレノアに、フランソワは、もはや自分の意図を話す必要など感じなくなっていたのでした。


 マリアエレナが嫁いで一年目の冬、マリアエレナの夫カルロスは、まだ一人身だった兄の夭折により、予想外にも領主の地位を引き継ぐことになりました。カルロスはすでに28歳で、前々からマリアエレナの親族たちが法王派であることを快く思っていない様子でした。

カルロスは優秀な武人で、すでに軍功を次々とあげ、皇帝のお気に入りとなっていました。そんなときにジャンカルロが悪性の流感にかかってしまい、ジャンカルロにもしものことがあれば、フランソワの領地を狙っているカルロスが、理不尽ながらも継承権を主張しているらしい、という噂がフランソワの耳に入ります。

 カルロスの気配を感じたフランソワとの間に緊張が走りますが、長年の治世の疲れに、フランソワまでもが体調を崩してしまい、床についてしまいました。母としての心配と、一国の領主夫人として苦悩するエレノアは、再びエドモンに助けを求めたのでした。


 カルロスと、同じ皇帝派の軍隊で一緒に指揮をとったこともあるエドモンの調停により、一瞬即発の状況は回避され、じきジャンカルロも体調を回復しました。またもやエドモンを頼るエレノアに、今回、夫フランソワは何も言いませんでした。思ったより簡単に和解が成立し、安心するエレノア。そして本当に自分が愛し、必要としている人はエドモンなのだと再認識します。そんなエレノアの心を感じ取ったエドモンは和解を見届けたあと、フランソワが邪推する前に姿を消そうと、自分の領地にすぐ帰っていってしまったのでした。ところが、その後、この和解の印として、皇帝がジャンカルロと、皇帝の姪の娘との結婚を要求してきます。さらに、それを知った法王が、法王の私生児である娘との結婚をつきつけてきました。エレノアはまた難しい立場に立たされてしまったのです。


 今度は、エレノアは、回復途上の床にあったフランソワに相談しました。エドモンから、そうするようにと諭されていたからです。当然、法王派である立場から法王の娘との結婚を承諾すると思っていたのが、フランソワは、しばらく考えさせてくれと答えました。そして、エレノアへの相談も通知もなく、皇帝に対し、快諾の返事を出してしまったのです。

 すでに法王庁で秘書官の地位にいたフィリップの立場が心配になったエレノアは、許されないとわかりつつ、自ら法王への申し開くに出向きたいという願いをフランソワに告げます。なかなか許しを得られないだろうというエレノアの予想に反し、それをあっさりと許すフランソワ。何か自分の知らないことがおきつつあるとは感じながら、母としての心配で一杯になった彼女は、いそぎローマへと旅立つことになったのでした。


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