表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魔女とのろい

作者: kyoyan

赤毛の魔女は恵まれない家に生まれた。

父親はうだつの上がらない魔法使いで、母親は魔女ですら無かった。家は常に貧しかった。

服も杖も箒も父や母のおさがりであった。

母親に似て赤毛の魔女は魔力も少なかった。

ある程度の年齢になった赤毛の魔女は、魔法学校に入学した。

内気な性格で、ボロをまとう赤毛の魔女には友達ができなかった。

同級生に名家の生まれの白髪の魔女がいた。

白髪の魔女は自分にないものすべてを持っているように見えた。

魔力、財力、権力。

ある日、流行りの服に見を包んだ白髪の魔女が赤毛の魔女の服を褒めた。

「あなたの服は愛情に満ち溢れていて羨ましいわ」

赤毛の魔女は顔を赤くしてうつ向いた。クスクスと笑い声だけが聞こえた。

赤毛の魔女は白髪の魔女に呪いをかけてやろうと思った。幸せな記憶が消える呪いを。

かけた人もかけられた人も等しく幸せな記憶を失う呪いを。

赤毛の魔女は呪いで消えた記憶を確認するために、幸せな記憶を全て紙に書き出した。

赤毛の魔女は白髪の魔女に呪いをかけた。

赤毛の魔女はノートを確認した。

記憶は一つたりとも消えていなかった。

呪いの一つもかけることの出来ない自分の不甲斐なさを嘆いた。


白髪の魔女は名家に生まれた。

両親は二人共優秀な魔法使いで、家柄もよく貧しさとは無縁であったが、同時に両親からの愛とも無縁であった。優秀な魔法使いである両親にとって子供との時間は仕事よりも優先度が低かった。

両親は白髪の魔女に優秀な教師、流行りの服、宝石、高価な杖と箒を与えた。

誕生日でもないのに送られてくるそれら全てが、白髪の魔女には両親の言い訳に見えた。

ある程度の年齢になった白髪の魔女は、魔法学校に入学した。

名家の生まれで優秀な白髪の魔女の周りには常に人がいた。誰しもが白髪の魔女を家名で呼んだ。

同級生に気になる赤毛の魔女がいた。

彼女は型遅れの服を纏って型遅れの杖を使っていた。

白髪の魔女は彼女のツギハギだらけの服に親の愛情を感じ、羨ましくなった。

ある日勇気を出して、赤毛の魔女に話しかけた。

「あなたの服は愛情に満ち溢れていて羨ましいわ」

赤毛の魔女は顔を赤くしてうつむいた。取り巻きはクスクスと笑った。

それ以降赤毛の魔女は白髪の魔女を避けるようになった。

ある晩、白髪の魔女は呪いを受けた。

幸せな記憶が消える呪いだ。

白髪の魔女は思わず笑ってしまった。

自分には幸せな記憶などないのだ。

呪いが成功することはない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ