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003 ヒビ割れた鏡

 「はぁ……」


 物置部屋を物色して約三十分ぐらいが経過した頃だろうか。ルイズレッドは溜息を吐きながら、硬いベッドに倒れ込んで天井を仰いでいた。物色した結果、何も使えそうな物は無かったというつまらない結果に終わったからだ。

 物置部屋とはいえ、貴族が暮らしているのだから何かあるだろうと思っていたのだが、散々な結果に終わってしまった事は溜息を漏らさずを得ないだろう。物色して分かった事は、使わなくなったであろう衣服や敷き物、色褪せてしまっている布ぐらいだった。

 これで何が出来るのだろうか、とルイズレッドは両手を広げて眉を寄せる。ヒビが入っている鏡もあり、それを見つめて再確認する事も出来た。自分がルイズレッド・カーティスという人物になっているのは、これで否応にも認めざるを得なくなった。

 しかし、やはり記憶は曖昧だ。紅色の髪と瞳、精神的に参っていた所為か目付きが悪い。確かにこれならお嬢様として過ごしていても、特に違和感は無いという印象を受けられる。だが、痩せ細ってしまっている全身を見て、これが貴族であった少女の姿とは到底思われないだろうという事も理解出来る。

 

 「(普通に可愛いのに、どうしてこんな子を迫害の的に出来るんだろう)」


 そもそも魔力を失ってしまったのは暴走が原因であり、ルイズレッドからすれば不可抗力だったはずだ。それを考えれば、状況的に許しても問題は無いはずだろう。しかし、カーティス家はそんな甘やかしはしないようだ。

 価値観の問題だろうか。代々続いて来た血を絶やし、積み重ねた歴史に傷が付く。恐らくそれがルイズレッドが迫害されてしまった大きな原因だ。カーティス家の血を絶やす事自体は、育てて、良い家や相手を選んで結婚させる対処でも良かったはず。

 にもかかわらず、ルイズレッドは迫害の対象へと一変した。ただ魔力を失った、それだけの事で。


 「うーん……何かイライラしてきた」


 長い間、何も口にしていないのも影響しているだろう。しかし、それ以上にカーティス家の振る舞いは理不尽という言葉に尽きる。そう感じたルイズレッドは、ムスッとした表情の自分と睨み合う。

 この苛立ちを捌け口はどうしたら良い。どこに愚痴を吐き捨てれば良い。そんな事を考えた結果だが、我ながら鏡に映る自分と睨み合うのは虚しいだけだ。


 「はぁ、何やってるんだろう。わたしは……」


 ――そう思った瞬間だった。


 『ごめんなさい』

 「え?」


 溜息混じりに呟いた言葉と自分の行動に呆れていた時である。ヒビの入った鏡の中で、俯いて罰の悪い表情をした少女を見て戸惑いと同時に声を漏らしたのだった。

 

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