表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/34

030 ルイズ、獣人国で目覚める

 テレビ画面の明かりのみが照らす暗闇の空間で、顔の見えない誰かが夢中になって何かを操作していた。どうやらテレビゲームをしているようだが、一体何のゲームだというのだろう。そんな事を考えていると、ノイズが走って映像が切り替わった。

 次は何かの山積みになった場所で、片手に銃を持った誰かが上の空で佇んでいる。目の前に広がる景色は赤。そう真っ赤な空間だ。これは……血?そう思った瞬間、佇んでいた者の手の平が真っ赤に染まっている事に気付いた。

 これは夢ではない。これは記憶だ。自分の中にある様々な記憶が、混在して見せているのだろう。しかし、その映像は途中で途切れてノイズが走った。そして、私――ルイズレッドは目を覚ました。


 「……ん、んん……?」


 知らない天井が歪んだ視界の中に広がっている。徐々にその視界が鮮明になっていき、私の意識は覚醒していく。しかし、起き上がった瞬間に私は違和感を覚えた。天井は勿論、眠っていたベッドも、寝ていた部屋も、私の部屋ではない。

 いや、当然か。私の部屋であれば、カーティス家に捕まった事を意味する。そうなれば、また時間が戻ったという結果になってしまう。だが戻っていないという事は、私はノブリス・オーダーのルートから抜け出したという事だろうか?


 「お目覚めになられましたかニャ?お嬢様」

 「え?」


 そんな私の思考を遮るように、聞き覚えのない声が私の耳に入って来た。声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにはメイド服に身を包んだ猫人族の姿があった。語尾は……気にしないでおこう。


 「どうかなさいましたかニャ?お嬢様」

 「えっと……その、貴女はどなたでしょうか?それとここは」

 「ここはライル様の治める獣人国の城の中ですニャ。そして私は、この城に務めるメイドのロティと申しますニャ。お嬢様のお世話をするよう仰せつかったニャ♪」

 「獣人国……っ、私の服、誰が……」

 「ご安心して下さいニャ。着替えさせたのは私を含めたメイドですニャ。ライル様は見てないニャ♪」

 「いえ、そうではなくて……っ!」


 誰が着替えさせたのか、それは大した問題ではない。いや、確かに男性に肌を晒すのは貴族の恥だけれど、問題はそこでは無いのだ。そんな焦燥が伝わったのか、ロティは口角を上げて私を抱き締めて告げたのである。


 「あの件であれば、見た者は箝口令を引くように仰せつかってますニャ。全てライル様のご命令ですニャ。反故にすれば全員が死罪にすると仰っていたニャ」


 だから大丈夫。安心して下さいニャ……そんな言葉を付け足したロティから、優しい気持ちが伝わって来た。その優しさに包まれながら私は、ロティを抱き締め返したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ