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023 当ての無い旅の始まり

 森を抜けて少し離れた場所まで歩いた私は、全身の疲労感と精神的な疲労を癒す為に川へ足を運んでいた。魔物の巣食う森を抜けるのに散々歩いた訳だが、少女の体力では限界に達していたのだろう。おかげで全身隈なく、足の先まで疲れが溜まってしまっている。


 「はぁ……まさか、ルイズレッドの生きる世界でサバイバルする事になるなんてね」


 笑えない冗談だ、と私は小さく口角を上げて呟いた。だが本物のルイズレッドであれば、カーティス家から逃げるなんて事は出来なかっただろう。回避すべき問題を避けようとしても、逃げる術がルイズレッドには無かったはずだ。

 だからあの部屋から逃げ出す事もしなかったし、逃げ出すなんて思い付かなかった。そして衰弱し、精神的に参ってしまったのだと私は予想する。どんな人間であっても、精神的苦痛と追い込まれた状況が続けばダメージは相当な物だ。


 「(私もこの選択が良かったのか、正直に言って自信は無い)」


 けど、だからこそ……あの状況が続くよりは遥かにマシだと思っての行動だ。あの状況から抜け出さなければ、私もルイズレッドと同様に精神的ダメージを負っていただろう。しかし、そのルイズレッド本人はもう私の中に居ない。

 彼女の意志は、私がこの体の所有者となって第二の人生を歩み続ける事。私自身、どうして死んだのか、どういう生活を送っていたのか記憶が曖昧だ。その記憶を調べるにしても、恐らく調べる事は出来ないだろう。

 私には、この世界で生きるしか人生を歩む方法は無い。この〈ノブレス・オーダー〉というゲームの世界で、私は生き続けなければならないのだ。私自身の為にも、そして彼女の為にも……。


 ――ぐぅ~~。


 「はぁ……それにしても、お腹が減ったわね」


 そんな事を呟きながら、私は川に足を入れて薄暗い空を見上げるのだった。


 「さて、そろそろ動いた方が良いでしょうね」


 お置手紙を残した事で、ルイズレッドの家族が近場から探す可能性が高い。森の中を捜索するにしても、この場所は森からそう遠くない位置だ。現在進行形で探しているとなれば、見つかる可能性が高いだろう。

 何にせよ、見つかる訳にはいかない。行く先を見据えた私は、細心の注意を払いながら再び歩き出したのである。当ての無い旅の始まりなんて物語に在り来たりだけれど、まさか私自身が体験するとは思ってもみなかった。

 そんな事を考えながら溜息を吐きつつ、私は肩を竦めて景色の奥を見つめる。生前も、彼女も経験した事が無いかもしれない、自由の地を目指すように。

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