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015 束の間の休息

 「はぁ、はぁ、はぁ……げほげほ」


 真夜中の森というのは、いつ見ても不気味に思えてしまう。足元すら見えない程に暗く、目の前の景色は手探りをしなければ何があるのか分からない程だ。月の明かりが微かに当たっている場所は、スポットライトのように照らされているようになっている程度。

 それ以外の場所は目を凝らすと見えるのは、目の前にある木や草の輪郭のみだ。それがその辺りにあるという事が分かるだけで、明確に何があるかまでは分からない。手探りをしようと手を伸ばしたが、何かに触れる直前にその手を止める。


 「(毒がある草木があったら大変ね)」


 散々走り回った森の中だが、もう背後に追っ手の気配はない。誰かが追って来る様子もない以上、これ以上の警戒は無意味だろう。だがしかし、周囲への警戒は引き続き必要な事をルイズレッドは理解していた。

 それは記憶にあるルイズレッド・カーティスの記憶がそうさせるのだ。産まれてから数年、兄や両親から聞かされていた話。街外れの森には魔物が出現し、無差別に人を襲っては食べてしまう……という類の話だ。


 「御伽噺に出てくる森みたいね……ゲームの世界なら、薬草になる素材は無いかしら。昔読んだ本には、妖精が出るって書いてたっけ?まぁ、関係ないわね」

 

 周囲の様子を探りつつ、微かに痛む片足を庇いながら溜息混じりにそう呟く。しかし、それらしい物は見つからない。そして歩き疲れたのか、ルイズレッドは月明かりに照らされている大樹を見つけて根元に座り込んだ。

 地面に張っている根が太く、堅い素材である事は手触りで理解出来たのだろう。ルイズレッドは微かに口角を上げながら、自分の体が容易に入る場所を見つけて背中を預ける。空を見上げれば、記憶にある星空とは比べ物にならない量の星に満ちていた。

 そんな満天の星空を見上げていたルイズレッドだったが、走り回った事で溜まりに溜まった疲労感が一気に押し寄せたのだろう。ルイズレッドは霞んでいき、やがて重くなったまぶたを閉じた。

 束の間の休息。張り詰めていた空気から解放され、緊張の糸が途切れたからだろう。すぐに寝息を立て始めたルイズレッドは、根元を枕にして寝転がっていた。


 「すぅ……すぅ……」


 そんなルイズレッドの様子が気になるのだろう。微かに光る球体が近寄り、鳥や小動物が寝息を立てるルイズレッドを取り囲む。やがて周囲を飛んでいた球体は、ルイズレッドの体の上に乗ってその姿を現した。

 それが本物の妖精である事は、ルイズレッドが気付く事は無かったのである。

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