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第5話
「立派でもありません。しょせん基礎研究ですからね。私の研究が直接、今すぐ誰かの役に立つわけじゃありません」
「私には難しいお話ですけど……。でもアメリカで働くって、それだけですごいじゃないですか。仕事も生活も英語なのでしょう? それとも、外国で働く学者さんには、それぞれ通訳がつくのですか?」
「もちろん通訳なんていませんよ」
失笑してしまう。
職場の方で通訳を用意してくれるはずもなく、個人で専属の通訳を雇うような金銭的な余裕もないのだから。
かといって、私は英会話が得意というわけでもなかった。研究者という時点で一応、学生時代から大量に英語論文を読んでおり、自分でも多少は書いてきたから、読み書きだけは自信あるのだが……。
英会話に関しては、毎日の生活の中で少しずつ学んでいく状態だ。いきなり音声だけでは難しいから、たどたどしい英語で職場の同僚たちと話すよりも、字幕付きテレビを視聴する方が日常会話の勉強になる、というレベルだった。